内燃機加工の精度向上で車両の質もより高まる
登場50周年を超えてなおその価値が高まる空冷Z。その堂々たるイメージに、現代のカスタムらしいスマートさや高質さといった要素を加えた車両だ。ACサンクチュアリーのコンプリートカスタム、RCM(Radical Construction Manufacture)のひとつで、586というシリアルナンバー(通算製作番号)が付く。
前後の鍛造ホイールに現代レースレベルのブレーキシステム、オーリンズ前後サスペンションの足まわりに17インチ適合ディメンションと強さを与えたフレーム&ステムにスイングアームなどの車体まわりは、確たるベーススペックの構築にパーツの進化分を加えて高質化が次々進む。だがむしろ今注目してほしいのはエンジンだと同店・中村さんは言う。
「いわゆる内燃機加工のレベルが上がっています。それにともなって組みのレベルも上がって、出力も出せるし、同時にライフも伸ばせる。シリアルナンバー500番台中盤の車両からはその傾向が顕著になっています。もちろん以前のものもその折々、製作時点のベストで作業していますが、そこに技術の進化が上乗せされた。その上乗せ分は、今まで作った車両の次のオーバーホールなどの時に反映することもできます」
具体的にはサンクチュアリーの内燃機加工部門DiNx(ディンクス)の存在と、そこに備えられたロッテラーH85A電子制御ホーニング機の存在が大きいという。
「1/1000mm台精度でのホーニングが効果大でした。その後のプラトーホーニング(スリーブ壁に高低差のある溝を付けてオイル保持性を高めるホーニング。プラトーは高原の意味)もですね。
ヘッド側もバルブの芯出しにバルブシート加工、ステムとバルブガイドのクリアランス精度が上がった。クランクも分解してベアリング交換、DiNx鍛造コンロッド(’24年秋により軽量なバージョンに進化した)を組んで位相を出す。これらで差が出ています。内燃機はクランク、シリンダー、ヘッドの3点が重要で、どれもが高精度に加工できて、高精度に組める。前述のようにパーツそのものもそうですがそれ以上に設備と技術者が重要で、その加工品が精密な組みを裏付けする。このZは、その見本のひとつだと思います」とも中村さん。スムーズに高パワーをデリバリーでき、それが長く保つ。現代Zらしい魅力が、さらに磨かれてその世界が広がるということだ。
Detailed Description詳細説明
スカルプチャー・ステムキットSP(オフセットは純正60mmに対して35mm)にデイトナRCMコンセプトハンドルをセット。純正メーターに加えるのはヨシムラPRO-GRESS2テンプメーター。左右マスターシリンダーはブレンボRCSでコントロール性とタッチを高めている。
燃料タンクはエアプレーンキャップ仕様で、タイガーパターンの外装はANGELがペイント。赤をベース色に選んでいるがすっきりした印象も持たせている。シートはデイトナRCMコンセプトシートと、外装類はRCM・Zの定評あるアイテムでまとめた。
ステップはナイトロレーシング・バックステップKITで油圧駆動化されたクラッチはナイトロレーシング・クラッチレリーズプレートKIT Type2のブラックを選択。フレームもオリジナルフレームST-Ⅱメニューで12カ所を補強しドライブチェーンラインオフセット軌道加工も施工済みだ。
エンジンはピスタルレーシング製φ71mm鍛造ピストンによって1045cc化。シリンダーはDiNxライナーにボーリング&ホーニングしクランクはDiNxで芯出し修正。ヘッド側もDiNxオーバーサイズバルブガイドをPAMS HFバルブと組み合わせ、DiNxでシートカット加工等行う。ナイトロレーシングOILクーラーKIT 11インチ13段ラウンドタイプによって安定した冷却性も持たせ、ナイトロレーシング・リダクションKIT(スライダー)で保護性も持たせてある。
キャブレターはTMR-MJNφ38mmのヨシムラ・デュアルスタックファンネル仕様で、ナイトロレーシングの4in1機械曲げスチール メガホンEXマフラーを組み合わせる。
フロントフォークはオーリンズRWUをノーブレストE×Mパッケージで組む。キャリパーサポートやフロントフェンダーもパッケージ内製品。フロントブレーキはブレンボ484 cafe racerキャリパー+サンスターRCMコンセプトφ320ホール&スリットディスクだ。
リヤブレーキはブレンボGP2-SSキャリパー+サンスターφ250ディスク。スイングアームはスカルプチャー17インチ用スイングアームでレーシングスタンドフックも組み合わせる。
リヤショックはオーリンズKA963・ブラックラインでドライブチェーンはEK530RCM。前後ホイールはO・Zレーシングのアルミ鍛造、GASS RS-Aで3.50-17/5.50-17サイズを履く。