カスタムの細部も把握し良好な内容を継続する
’84年初出のGPZ900Rは、登場以後の10年を旗艦でいることもテーマだった。車名こそGPZ1000RXやZX-10と変わりながら、排気量の拡大や時代ごとに進化する技術を組み合わせることで、結果的にそれは達成された。その到達点は、’90年に現れるZZR1100だ。
ZZRに至るまでにエンジンは1052cc化や2バルブ1ロッカーから1バルブ1ロッカー化、ダウンドラフト吸気化しラムエア加圧も追加するなどを行う。車体もGPZ900RのスチールダイヤモンドからGPZ1000RXでスチールペリメター(エンジンを囲い込む型式。ダブルクレードルの一種と取っていい)となり、ZX-10でアルミペリメターに進化し、ZZRはそれを洗練強化した。ZZRは当初のC型から’93年に細部改良を施したD型となり、’01年のD9まで続いた。高い高速安定性とともに軽快な運動性も持ち、旗艦というバイクの姿やあり方を明確にした1台でもあった。
この車両は、そんなZZR1100の後期D1に、ブライトロジックが手を入れたものだ。見て分かるように良好な状態だが、この車両、同店の開店(’94年)から少し経った’00年頃に作られたもの。当時雑誌でも紹介されたので、覚えている人もいるはずだ。それがほぼそのまま、25年以上、実動でいるのだ。
よく各部を見るとステムなど、専用パーツが少なかった当時に工夫して作られた、今見れば武骨とも言えるパーツも多く装着される。でもそれらはきっちりと機能を果たし、カスタムらしい特別感も保ちながら、換えることなく今に至る。タイヤこそ最新のものを履くが、車両の、各部作動の的確さ、そして全体的な軽さは、今作ったような感覚さえある。
「作る時に行う作業やテーマは当時も今も変わっていません。ライダーが意思通りに扱えること。車両の方は正しい動きをさせるために必要な作業、給油に給脂、的確な位置決めに締め付けなどを行う。この車両はオーナーさんは変わったんだけど、パーツ含めて定期整備もきちんとしてあって、こうして今もほぼそのまま乗ってくれてる。嬉しいですよね」とブライトロジック・竹中さん。初めに確かな作りを得ること。そして換えたパーツにも目を配ること。もちろんアップデートの手が入っていい。この車両は的確なリフレッシュで維持された好例でもあるのだ。
Detailed Description詳細説明
カウル類はZZR1100D1純正でカーボンメーターカバーはマジカルレーシング。ステアリングステムは短いフロントフォーク長を補うウイング形状のワンオフで、セパレートハンドルのクランプ上面と高さを合わせている。左右マスターはブレンボレーシングラジアル、メーターはヨシムラ・デジタルマルチメーターとボルト/テンプメーターを追加する。
クラッチレリーズマウント部とスプロケットカバーを分割式としたスプロケットカバーやシンプルなステップも当時のワンオフパーツだ。
カウルサイドのステッカーなども製作当時のままで、アルミペリメターフレームもノーマルだがステムベアリングの交換なども定期的に行われている。エンジンは当時あえてノーマルを選択し、その後定期整備を受けている。
キャブレターはダウンドラフト仕様のFCRφ41mm、これに組み合わせる排気系はブライトロジックオリジナル・フルチタン4-1で、オイルパンも避けつつアンダーカウルも装着できるものだ。
フロントフォークは当時のオーナーが付けたかったというオーリンズFGR(レーシング)。フロントブレーキはブレンボ・アキシャル CNC 4Pキャリパーにサンスターディスクで、キャリパーは少し前にオーバーホールされている。
リヤブレーキはブレンボ2Pキャリパー+サンスターディスク、スイングアームはZZR純正に下側補強を加え、オーリンズショックを組み合わせる。
前後ホイールはマグのマルケジーニM5で3.50-17/6.00-17サイズ。タイヤはブリヂストン S22の120/70ZR17・190/55ZR17サイズを履く。