ハンドリングのシャープさという魅力をうまく引き出す
ZZR1100をより日常的にと作られたGPZ1100。これを元にして’97年に登場したZRX1100。’01年からのZRX1200。そして’09年から’16年まで展開したDAEGと、大きく3つに分かれるZRX。
「今は1100とDAEGに人気が集中している状態と言えます」と、しゃぼん玉マネージャーの滝川さん。その中でもベースの性格の違いによって、また経年や、これまでのお客さんの例から、やってほしい内容も少し変わってくるとのこと。この車両は、しゃぼん玉と25年の付き合いのあるオーナーが、改めて落ち着いたバイクを楽しみたいとZRX1100を選んで、そこに手を入れたものだ。
「落ち着いたベース車とは言え、オーナーの杉田さんはサーキットも走られるので、その方向で仕立てています。現状でエンジンはノーマルですが、ライディングポジションを決めて足まわりをしっかり動かせるものに。
ハンドルはロータイプ、左右のマスターもブレンボ削りにした上で、当店で多いレバーへのホール加工(ルックス向上に加え、風圧の影響を抑えるなどの効果がある)を加えています。ホイールも鍛造のゲイルスピードで、お勧めのタイプGP1Sを選びました。冷却性向上を狙ってラジエーターは一新も兼ねて大型化し、当店オリジナルの冷却ファンでも強化しています。
ZRX1100で今やっておきたいメニューが施されているんです。1100はスイングアームピボットが後継モデルの1200やDAEGより高いこと、またホイールベースも短いことで、ハンドリングが軽く軽快感が高いところに大きな魅力があります。逆に高速安定性はそう高くないですけど、それが必要となるケースは少ないですから、軽快感に惹かれて入手する。その上で、この車両のような手を入れることが多いです」
ハンドリングのシャープさという魅力に人気があり、それを走りにも作りにも生かすようにするというのが主という1100。この車両では、走らせ方や目的が明確な点も参考にしておきたい。
「1100の場合は走り方向が合わせやすいんです。サーキットでも、ワインディングでも。その方向を決めたら、ポジションをきちんと作る。ハンドルの高さや幅、形。それからシートとステップ。シートは高さや座面。ステップもバーの位置。低いハンドルならそれに合わせて上体が前傾して、後ろ目のバー位置という具合です。ポジションが合わないと疲れるだけでなく、面白くないです。
私たちは“ZRXはポジション”と考えているので、ZRX(1100/1200/DAEGとも)をいじるなら“走る場所と走り方を教えてください”と言っています。腕の長さでもベストは変わるので、細かく聞いていくんです」
エンジンもφ76mmボア×58mショートストロークの純正スペックのバランスが回り方もいいと判断。もちろん、1052から1080cc(φ77mm)、1109cc(φ78mm)への拡大とそれに合わせたヘッドチューン、キャブレター選択もと、もし先やスープアップを考えるならというメニューも考えられている。
同じZRXというネーミングでも、排気量で性格は異なる。そこを把握した上で、オーナーと走り方に合わせたポジションをまず作る。そんなフィッティングも重視したいい見本と言える1台。この先も長く乗られるだろうことは、想像に難くない。
Detailed Description詳細説明
スクリーンはMRAのスポイラー・スモーク。左右マスターシリンダーはブレンボ・レーシングラジアルを使い、レバーはしゃぼん玉オリジナルのホール加工品に換えられる。小ぶりなミラーはGSG製だ。
ステムはフォークオフセット30mmのZRX1100ノーマルで、アッパーブラケットをNプロジェクト製アルミ削り出し品に変更。ハンドルはハーディー・ロードバー(ロー)で低めにし、メーターまわりにはヨシムラ・デジタルマルチメーターを加えている。
ZRX1100の純正燃料タンクが廃番となっているためZRX1200用(フューエルキャップの取付穴が5穴。1100は7穴)に換装し、外装オールペイントした。
ステップはARATAワークスで、こことハンドルに合わせるようにシートも加工されている。こうしたポジション設定は、各オーナーの腕の長さの違いレベルから行われているのだ。
φ76×58mm(1052cc)のエンジンはノーマルで、アクティブ・ビッグラジエーター/しゃぼん玉オリジナル・大型ファンをセット。フレームにはアクティブサブフレームを追加し、アンダーカウルも装備。
キャブレターはFCRφ39mmをスパイラルファンネル仕様で組む。排気系はストライカーのチタン機械曲げ4-1をセットする。
フロントフォークはオーリンズRWUを組んだ上でセットアップしている。フロントブレーキはブレンボCNCアキシャル・チタンピストンキャリパーに純正ディスク。フロントフェンダーもカーボンに換装している。
前後ホイールはアルミ鍛造のゲイルスピードGP1Sで、3.50-17/6.00-17サイズとリヤを1インチ拡大している。タイヤはピレリ。ディアブロスーパーコルサSPでフロントが120/70ZR17サイズ、リヤが180/55ZR17サイズ。