今行える油冷車への推奨仕様でパッケージングする
スズキ750〜1200cc系油冷の最終モデルとなったバンディット1200/S。ここに紹介する1200Sはファイナルモデルでなく、レギュラーモデルがベースだ。元々はショップ作り置きの販売車として仕立てられたものだが、通常の販売車でなく、テクニカルガレージRUNでバージョンアップ・コンプリートとして作られたと言えば分かりやすいだろう。言い換えれば、TG-RUNが考える油冷車への推奨仕様とも言える。TG-RUN・杉本さんにその主なところを聞いた。
「油冷モデルを今、普通にストリートで乗る方法を考えてほしいんですね。もう20〜40年近く前のモデルというわけですから、今の道路環境に合わせることを主眼に。そこにコンプリートで使うパーツ群も入ってくると考えると分かりやすいかもしれません。
フロントフォークとリヤサスは最低でもオーバーホールとメンテナンスします。新品への交換も視野に入れます。ホイールも当時の鋳造品よりは、今の鍛造品を使う方がいいです。ブレーキまわりも同じですね。マスターシリンダーにキャリパー、パッドにディスクと、今のシステムを使います。電気系もハーネスは引き直す、点火はASウオタニなどで代替できますから、それで一新しておきましょう。キャブレターもFCRやTMRの新品にするか、オーバーホールを。
このように、フレームとエンジン以外の重要保安部品類は1度きちんと換えてバランスを取れば、長く保つものです。それを適当にでなく、きっちりやる。完全ノーマルを意識するのでなければ、正直、車体は何とかなります。フレームもダメージを確認してきれいにする。
エンジンについては、不調を感じるなら手を入れておくべきです。社外品でももうないパーツがありますから、今です。これも1度きちんと見直しして、正しく手を入れておけば、大きなアクシデントなどに遭わない限りは、正しい定期整備でかなり保つ。
ただ“油冷は頑丈という話を聞いたからそのまま乗ってるけど、やっぱり頑丈だ”、という考えはしない方がいい。機械ですから消耗はします。でもその理屈が分かり、定期整備も合わせてきちんと生かせるのなら、油冷は言う通り頑丈です。頑丈さを期待するなら“今手を入れなさい”です」
今バイクとして正しい状態、そして現代の交通事情に合った状態にすれば、現代車に近い形で使うこともできる。このバンディット1200Sはそうした内容=杉本さんの提唱を反映した見本だ。オーナーに合わせてオールラウンドに使えているとのことで、組み直しからも5万km以上を走っているという。その間エンジンオイルをはじめ、管理もきちんと行うことで、良好な状態がこのように保たれている。そのエンジンはじめ各部の履歴は再組み立て以降正しく把握されるから、次の整備タイミングなども分かりやすい。コンプリート化することには、こういうメリットも生まれている。これは今油冷モデルに乗りたい、動かしたいと思うなら参考になる1台でもあるのだ。
Detailed Description詳細説明
外装はスクリーンをMRA製にする以外はバンディット1200Sのノーマルで、メーターにはヨシムラ・デジタルメーターを追加しトップブリッジとバーマウントはケイファクトリー製削り出し品に換装する。左右のマスターシリンダーはブレンボ・ラジアルとして操作性とタッチを向上している。
シートはTG-RUNスポーツ&コンフォートシートへ加工(持ち込み加工で他モデルも対応)し、居住性や操作感を大きく高めた。
2バルブ1ロッカーの油冷直4エンジンは1156ccの排気量をはじめノーマル。点火系はウオタニSP2に換装し、冷却系はエッチングファクトリー・オイルクーラーコアガードを追加。スチールダブルクレードルのフレームはノーマルで、細部までチェックされている。
FCRφ39mmキャブレターはここではエアファンネル仕様で装着される。ここも含め、車両製作以後の定期的な整備で好調を保つ。
フロントフォークはオーリンズφ43mmでフロントフェンダーはマジカルレーシング製カーボンフェンダーに変更。フロントブレーキはブレンボ・レーシングキャリパー+サンスター・レーシングディスクの組み合わせで、現代に必要な制動力や操作性を加えた。
リヤブレーキは純正キャリパー+純正ディスク。マフラーはケイファクトリーのフルチタン4-2-1として軽量化と出力向上を果たす。
オーリンズリヤショックを純正アルミスイングアームに組み合わせる。ホイールはアルミ鍛造のマルケジーニM10RSで純正に同じ3.50-17/5.50-17サイズを履いている。ドライブチェーンもノーマルの530サイズからRKの525サイズに変更し、軽く、動きの良くなった車体をさらに低抵抗化。4ポジションのステップとスタンドフックはケイファクトリー製だ。