定番メニューを生かす仕様選択や提案にも注目
「カタナ現役当時(’82〜年)のレーサーをモチーフにした18インチ車両です」と、製作者の刀鍛冶・石井さん。フロントブレーキキャリパーをフロントフォーク前側に置くリーディングマウントにしたり、スイングアームを当時最高の4ストレーサーのひとつと言えたモリワキ・モンスター風にアレンジする。メガホンマフラーの採用やシートレール立ち上げ部の補強もそんなひとつだ。
ところでシート下に目をやると、なんとオイルクーラーがある。
「オーナーさんがツインクーラーにして、ここに付けたいと依頼されたんです。前側のオイルクーラーで冷えたオイルをさらにここに回した上でエンジンに戻すんですが、ツイン化の効果ありです。オイルポンプも問題なく十分にオイルを回しています。この後ろ側オイルクーラーのステーや取り出しなんかはすべてワンオフしていますよ」とのこと。
リヤ側オイルクーラー直前に収まる小型リチウムイオンバッテリーのホルダーも石井さんがプレートを削り出してワンオフ、各部への干渉を避けながらスマートに収まるステップも削り出しのワンオフ。先のスイングアーム補強もワンオフだ。フレームはキャブレターの後ろ付近で左右をつなぐバー溶接ほかの定番メニューで、都合9カ所が補強される。見ていくほどにかなり凝った仕様というのもポイントで、飽きが来ず長く楽しめるようにも作り込まれている。
そうなると気になるのはエンジンがどう考えられているかだ。
「この車両ではカムはヨシムラST-1ですけど、既にフルオーバーホールはしてあって、状態もいいので当面大丈夫だし、もったいないから排気量はノーマル(1074cc)でいこうとオーナーさんとお話して、そうしています。排気量についてはこれから先、もっと距離が出てから上げる(ボーリングする)ことを考えてもいいわけですから。外観についてはセラコートで仕上げて、レーサー感を出しつつ耐候性も上げています。
カタナは車体系パーツはいろいろあるし、この車両のワンオフ箇所みたいに何とか作れます。でも、エンジン内部パーツはそうはいかない。しかもパーツ代もかさむようになった。なのでいずれ手を入れると思う人には、時が来たらでなく、毎月ひとつとかでいいから、今のうちから少しずつパーツを買って揃えた方がいざという時に困ることが少ないはずですとお話しています」とも石井さん。ずっとカタナに触れ、現状を見極めているからこそのアドバイス。この車両にも、そんな石井さんのアドバイスが各所に反映されている。しかも、今後の余力も含めて作り込まれているわけだ。
Detailed Description詳細説明
シートはカタナ純正形状をアレンジして内部変更と表皮張り替えを行った。シングルシート的な印象も持たせつつ、足着き性なども高めている。
ベースプレートを極小としたシンプルでホールド性の高いステップは刀鍛冶によるワンオフパーツ。オイルキャッチタンクも刀鍛冶製だ。
コンパクトなAZリチウムイオンバッテリーを収めるアルミ製バッテリーホルダーは刀鍛冶のワンオフ。この辺のスマートさも見倣いたい。
エンジンはフルオーバーホールしヨシムラST-1カムを加えた仕様で、既にオーバーホールも経ていることもあり、今後のボーリングなどの余裕も見越しての純正1074cc仕様としている。外観はセラコート仕上げ。なおフレームは刀鍛冶定番の9カ所(ピボット上左右、リヤショック上左右、ネックまわり等含む)を補強する。キャブレターの後ろ左右もバーを溶接して補強している(写真ではファンネル下あたりに見える。純正キャブの場合は加工不可で、計7カ所の補強となる)。
キャブレターはヨシムラTMR-MJNφ40mmで、直後にバッテリー(別写真参照。サイドカバー後端裏だ)をレイアウトしている。
シートレールに挟まれる形で後ろ側オイルクーラーが置かれる。クーラー用ブラケットや取り出し/ラインは刀鍛冶ワンオフで、整備性も考慮している。
フロントフォークは純正φ37mmで、オオノスピードのスプリングなどで内部変更している。上下フォークブラケットもオオノスピードだ。ブレーキはマスターがAP製でキャリパーがAP・CP2696をリーディングマウント、ディスクがサンスター・ネオクラシックディスクだ。
リヤブレーキはAP・CP2696キャリパーをスイングアーム下側マウント化し、φ250mm/リジッドマウントのPMC・S1-Typeディスクローターを組み合わせる。
ホイールはアルミ鍛造のPMCソード・エボリューションで2.75-18/4.00-18インチ。スイングアームは純正アルミの下側に刀鍛冶でスタビを追加した。ドライブチェーンはEK・ThreeDでリヤスプロケットはX.A.M。前後アクスルはJB-POWERクロモリを使っている。