組み上げ後に不可欠な作業も考慮しつつ進化を重ねる
「完全メンテしたノーマル車というのは、かなりよく走るものだし、性能だってユーザーが考えているよりも、高い場合が多いんですよ」という代表・中村さんの言葉からも分かるように、ピストンブローククラブが重視するのはいわゆる通常メンテナンス。基本を見直すことで得られるメリットは、予想以上のものがあるということだ。
店名も「ピストンが壊れるまで走ろう!」的な意味で、これは裏返せば「1台の車両を長く乗ってほしい」。そのためのメンテナンス重視という姿勢だが、これはカスタムの場合にも当てはまる。
その流れで行くとこの750カタナは、同店では例外的とも言えるヘビーカスタムが施されている。これは長年付き合いのあるオーナーからのたってのリクエストで、組み上がった時点から、さらに細かい煮詰めの作業が必要になることも承知だったからだ。その甲斐あって、製作された’00年頃に先駆けと言えたリヤの200幅タイヤや倒立フォーク装着、それにともなうフレーム補強やチェーライン確保を主とした加工など、大幅にカスタム化というか、オーナーリクエストへの適合が形となった。
その後もリクエストを反映しエンジンは180psを超えながら、ミッションなど内部パーツへの負担を軽減するようなアウトボードベアリングサポートなども製作した。その上で、日常的なレベルでもノーマル同様に扱いやすく、同店のカスタムテーマである「コントロールしきれるパワー、乗りやすさ」を実現していた。
バイクへの愛着と、それを理解しフォローするショップの協力関係の上で初めて実現できた究極の1台。写真はその作られた当初、最初のステージと言える状態のもの。その後、技術やパーツの進化を採り入れつつステージを重ね、カーボンホイール化なども行われ、20年を超えた今も現役を維持している。さらに2023年シーズンインを前にしてエンジンの1300cc化や13:1の高圧縮化も行い、ステージはもっと先へと進んでいる。進化そのものの凄さ、オーナーのここに至るまでのロードマップもそうだが、それを可能にしてきたショップの腕、そしてそれを発揮させるコンディション作りにも注目したい1台だ。
Detailed Description詳細説明
製作当時から20年超の間、外観イメージはそのままながら多くの内容が変わり続けている。ここでは写真=製作当時の状態を中心に説明する。メーターやスクリーンはカタナで燃料タンクは純正を加工してエアプレーンキャップ化、内部も加工。タンク上の液晶式インジケーターはカワサキGPz流用でヨシムラ・デジタルマルチメーターを追加。油温はオイルパンとオイルポンプ出口の両方で確認できる。
カタナノーマル形状を残しつつ左にプロジェクターライト、右にステアリングダンパーを内蔵するカウルはピストンブローククラブオリジナルで、'99年の製作当時に問い合わせが殺到したものだ。トリプルツリーとφ41mm倒立フォーク(ノーマルはφ37mm正立)は'90GSX-R1100流用。フロントマスターシリンダーはブレンボ・ラジアルの鍛造ボディ。後に左側にサムブレーキマスターも追加している。
エンジンはGSX1100S(φ72×66mmの1074cc。GSX750Sはφ67×53mmの749cc)のノーマルに換装され、後に自製アウトボードベアリングサポートなども加えられた。なお右サイドを走る3本のラインは2本がオイルクーラー用、1本がブローバイ用。この後カムシャフト/ロッカーアームシャフト用のオイルラインも追加された。キャブレターはTMR-MJNで、最新仕様ではφ41mmボアを選択している。
22カ所に補強を加え、200サイズタイヤに合わせたチェーンライン逃げ加工とそのパートのフレーム補強も行い、車体全体は175psの出力でも耐える設定で作られたとのことだったがその後の180ps仕様にも余裕で耐え、次なる動力系スープアップにも適合しそうだ。
ホイールはGSX-R750SPで、サイズは1.85-19/2.50-17→3.50-17/6.00-17に。後にZZR1100用で同サイズのダイマグ3本マグスポーク&カーボンリムホイールにアップデートされた。スイングアームは'88-'89ZX-10純正で、当時目標としていた200サイズ・ワイドタイヤの装着をクリア。リヤサスはオーリンズショックにハイパープロ製スプリングを赤塗装してセットしている。フロントフォークはオーリンズのレース用倒立フォークを内部カートリッジとも延長加工して装着。じつはこの長さ(全体ディメンション)決定から作業が始まっていた。