エンジンでとくに進むコンプリート内容のアップデート
初期型のイエローボールパターンをキャンディゴールドで仕上げ、ブラックで引き締めた足まわりと対比させたZ1。ACサンクチュアリーのコンプリートカスタム、RCM(Radical Construction Manufacture)。シリアル(通算製作番号)589という新しいナンバーが付いている。近作として変化があるのか、同店・中村さんに聞いてみよう。
「オーリンズサスやブレンボブレーキシステム、O・Zモーターバイク製鍛造ホイールといったハイブランドの高質パーツを使う点では変わりはないのですが、それぞれの内容がアップデートされています。まあこれは各メーカーの製品進化もあるので当たり前。これらを受けるフレームも、前後17インチホイール化への適合など、確立した加工で一定水準以上を続けてます。それで今は、エンジンが大きく進化しています。外からは見えない部分なんですけどね」
Zがカスタムブームに火を付けて30年以上。その中で対策品も含めてかなりのパーツが揃い、空冷4気筒への加工手法も揃い尽くしたと思える部分だが、何が変わったのだろうか。
「一番は加工です。DiNx(ディンクス)社で行うのですが、精密度が上がりました。Zでダメージの出がちなバルブガイドは、DiNxオリジナルφ[STD:7→]5.5mmステムの軽量ビッグバルブとのセットで高精度に組める。ガイドを抜いた時に邪魔なくポート加工ができるので、それも利点になってます。シートカットもより精密化できたし、他のパートも同様です。
クランクもZでは中古の純正品を使おうにも、もう2本に1本はダメという感じになってきていて芯出しでは足りない。それでフルリビルドするのですが、その際にベアリングも新品にしますし、組み上げるうちのメカニックもびっくりするくらいにスムーズになる。
そんなアップデートです。今まではこうした内燃機加工はオーバーホールメニューと捉えていたのが、チューニング的なプラスアルファの要素が乗る。この車両にもそれが反映されています。今後はスチール鍛造製コンロッドや64チタン製のコンロッドもメニューに入ってきます」
静かでスムーズで長く乗れる要素がより強まるという進化。従来製作した車両にもオーバーホール時などにこうした要素をプラスできるという点も、魅力的だ。車体に外観に、エンジンに。精緻な作りはさらに進化を重ねるということだ。
Detailed Description詳細説明
フロントフォークを大径化するとともに前後17インチホイール化に適したフォークオフセット量を設定する、スカルプチャーφ43ステムキットTYPE-1にZの純正メーター、自然なポジション設定ができるデイトナRCMコンセプトハンドルバーを組みこむ。左右マスターシリンダーはブレンボRCSだ。
いわゆる初期イエローボールと火の玉をミックス&アレンジしたようなキャンディゴールドの火の玉パターンは奥進で塗装されるもの。
シートもRCMに必要な性能を持ち、リプレイスにも有用なデイトナ・RCMコンセプトシートを装着している。ウインカーは小ぶりなものをチョイスした。
ステップはナイトロレーシング。フレームは現代17インチラジアルタイヤのグリップを生かすサンクチュアリーST-Ⅱ補強やワイドリヤタイヤに適合するチェーンラインオフセット軌道確保加工、リヤショックレイダウン加工など、必要な作業が行われている。
エンジンはヴォスナーφ73mm鍛造ピストンで1105cc化される。DiNx製φ5.5mmステム軽量ビッグバルブ&専用ガイドを組み、同じくDiNxでのシートカット加工や面研、ボーリング&精密ホーニング、クランクフルリビルド、ツインプラグ加工等が行われる。ほかに組み上げ時にはミッションのドッグクリアランスシム調整やクランクケースポンピングロス低減加工も行われるなど、長く元気よく使える仕様への工夫もなされているのだ。
キャブレターはTMR-MJNφ38mmのヨシムラ・デュアルスタックファンネル仕様。ファンネルにはボディカラーに合わせたブラック×ゴールドを使った。
フロントフォークはオーリンズRWUフォーク(φ43mm)をサンクチュアリー・E×M(エクスモード)パッケージで装着。フロントフェンダーもパッケージに含まれている。フロントブレーキはブレンボ .484キャリパー+サンスター・プレミアムレーシング“RCM”コンセプトディスクだ。
リヤブレーキはブレンボCNC P2 34キャリパー+サンスター・RCMコンセプトディスクφ250mm。排気系はナイトロレーシング・ウエルド・チタンを装着する。
スイングアームはスカルプチャーR.C.M.専用ワイドスイングアーム。ホイールはO・Zレーシングのアルミ鍛造、GASS RS-Aで3.50-17/5.50-17サイズ。