外装変更も含めたフルカスタムの王道を行く1台
1989年のゼファー(400)に始まる国内ネイキッドブーム、1990年の国内750cc超車両販売自主規制の解除という流れを受けて大きなブームとなった1990年代のビッグネイキッド。ホンダはCB1000SF(1992年)、ヤマハはXJR1200(1994年)、カワサキはゼファー1100(1993年)と丸目+空冷直4エンジン+鉄フレームに2本ショックのオーソドックス・ネイキッドを送り出す。スズキも1996年、待望のネイキッドを発売する。GSF1200だ。他モデル同様に丸目ながらもエンジンは油冷、リヤはモノショック。ショートホイールベースで他が狙ったゆったり感ではなく、エッジの効いた走りを魅力とした。そのハーフカウルバージョンとして1997年にGSF1200Sが用意され、高速走行もカバーする。
この車両はそのGSF1200S(1997年式)をベースにした半谷さんの車両。すんなり装着されていてこれが標準だったかもと思わせるようなフロントのカタナカウル、そしてリヤのGSX-R1000カウル。元々の形状から大きく離れない一方で、今スズキが油冷でネイキッドを作ったらこうなるのでは? と思わせてくれるようなルックスも獲得。純正燃料タンクとともにフルペイントが施されるとともに、各部にはカーボンパーツも多用する。
ハンドルはバータイプのままポストを変更し、少しだけ位置を上げ、ステップも変更して操作しやすいポジションを作る。足まわりは純正フロントフォークにインナーカートリッジキットを組み、スイングアームは同じGSF1200ながら20mmロング設定のABS仕様用をセットするなど、聞いていくと細かい作り込みがそこここに見られる。
半谷さんによれば「サーキットとツーリングの両方をこなせる仕様なんです」とのことで、前述のポジションも両方の走りが楽しめるように。足まわりもショートホイールベースのGSF1200/Sのクイック目の特性をうまく落ち着かせる方向での構成(ABS仕様が狙ったのもそこだった)と知って、なるほどという感じになってくる。
エンジンも本体へのヨシムラST-1カムやF.C.C.クラッチの組み込みにオイルクーラーの大型化や電装のウオタニ化と、こちらも手堅い手法でアップデートとポテンシャルの引き出しが行われている。いわばカスタムの王道路線をきれいにパッケージした内容だというのが、外観からもよく分かってくるのだ。
Detailed Description詳細説明
ハンドルはアントライオン製ハンドルポストで、位置を少し上げてマウントしライディングポジションを最適化。メーターも多機能デジタル表示+アナログエンジン回転計をワンボディに収めたエースウェル ACE-6652に換装。フロントマスターはブレンボRCS、クラッチレバーはZETAだ。
元々ハーフカウル+変則角目のGSF1200Sだが、フロントカウルをGSX1100S用に変更。ミラーステーのベース部に小型LEDウインカーを付ける。
リヤウインカーも小型LEDで、このようにナンバーホルダー横にマウント。サーキット走行時に外す手間も要らないくらいに小さい。
シートレールを加工してGSX-R1000のシートカウルを装着。塗装はバイクショップ ニカワが行った。フレームもリペイントされている。
エンジンは油冷1156ccのGSF1200SにヨシムラST-1カムやF.C.C.クラッチ、クイックシフター等を組み込んでいる。シリンダーサイドのスライダーはオリジナル品でパルサーカバー/ジェネレーターカバーはカーボン。オイルクーラーはGSX-R1100用に換装し容量を拡大する。
キャブレターはFCRφ39mmをラムエアフィルター仕様で装着。電装はウオタニSP2だ。ヘッドカバーほかエンジン各カバーには縮み塗装が施される。
フロントフォークはGSF1200Sの純正φ43mmで、内部にウイズミーのGSF1200フロントフォークインナーダンパーキット(伸び減衰と初期荷重の調整が可能になる)を組み、アウターチューブをバフ仕上げ。フロントブレーキはGSF純正のニッシン4ピストンキャリパーにサンスター・クラシックディスクを合わせた。
リヤサスはGSF1200/Sより20mm長いGSF1200 ABS純正スイングアームとオーリンズショックを組み合わせる。リヤインナーフェンダーもカーボン製を装着していて、ホイールはアルミ鍛造のゲイルスピードTYPE-Rとして純正に同じ3.50-17/5.50-17サイズを履く。
リヤブレーキはキャリパーをRF900R純正に変更しトルクロッドを排している。ディスクはGSF1200S。排気系はヨシムラ・チタンサイクロンを使う。ドライブチェーンはRKの520XXW、リヤスプロケットもRKのH.C.S.プレミアム01PSで抵抗を減らすなどの現代化も図っている。