細かい数値の積み上げを新しいノウハウに加える
「この車両の特徴は、バーハンドルでカウルをフレームマウント化したことです」。ACサンクチュアリーの中村さんがこう切り出すZ1-R。同店コンプリートカスタムのRCM(Radical Construction Manufacture)として製作されたものだ。
「セパレートハンドルでは作例があるんですけど、バーハンドルでは初めて。それが大変だったんです。セパレートは絞り角や垂れ角もあって、ハンドルを切った軌道もカウルを絶妙に避けるんですが、フラットで真っ直ぐなバーハンドルではその軌道が大きく、バーエンドが思ったより前に出てくるんです。
だからってハンドル切れ角の面で妥協したくないし、カウル側で逃げるのも、ルックスに影響するので抑えたい。結果、ハンドルポストをわずかにオフセットしたり、ポスト取り付け座面をフライス加工してわずかに下げたりと工夫を重ねて、あっちで何ミリ、こっちで何ミリとクリアランスを稼ぎ出して解決しました」
いわば塵も積もれば……を地で行く作業でクリアしたわけだ。
「そうですね。ひとつ出来て、これが次のノウハウになります。こうした細かい数字の積み上げや擦り合わせは他部分にもあって、例えば車体なら今回のようなミリ単位。エンジンなら1/100mm単位。機械はそんな数字の集合体ですから、より精度の高い加工や作業が出来るようになることで、組んだときのしっかり感や耐久性、使いやすさも高められるんです。先ほどの見た目もですね」
エンジンはその精度を持った内燃機加工部門のDiNx(ディンクス)社で加工。仕様としては1105cc化やハイカム、バルブガイド入れ替え等のRCM“パワーパッケージ”ファーストメニュー。これに6速クロスミッション等も組み合わせた上でサンクチュアリーで組み、ライフや使いやすさも加えたアップデート仕様とした。
車体側は17インチ仕様の定番がRCMでは早い段階で作られていて、今回のような追加メニューにも対応している。このフレームマウントカウル化で「ステアリングの重さがなく、ハンドリングはZレーサーのように軽いですよ」とも中村さん。Zの進化の余地を、また見た思いがする。
Detailed Description詳細説明
ビキニカウルは純正のステアリングマウントから、フレームヘッドパイプ部にマウントを追加してフレームマウント仕様に変更。カウルが元の位置より前に出過ぎず、ハンドルやタンク、手などの干渉もないように位置を設定した上でステーをワンオフした。
ステアリングステムはスカルプチャーφ43ステムキットtype1でハンドルポストを加工、ハンドルはPOSHスーパーローバーで、ポストの位置とともに微調整される。クラッチは油圧駆動化され、左右マスターシリンダーはともにブレンボRCSを使う。ミラーはマジカルレーシング・NK-1ミラーのタイプ3ヘッドだ。またカーボンでパネルをワンオフした上で多機能表示のスタックST700SR、ST3000ユニバーサル(ここでは燃料計)、ヨシムラ・プログレスメーター等で構成するメーターもフレーム側マウントとなり、重さを軽減してハンドリングは軽快となる。
純正のスリムスクエアラインをなぞった燃料タンクはアルミ製。純正のベースカラーやストライプパターンをアレンジした塗装はエンジェルが担当した。
シートはナイトロレーシング・RCMコンセプトシートを装着。ポジションも決まり質感も高まる。サイドカバーロゴなどもペイントで表現される。
エンジンはφ73mmのNOBLESTヴォスナー鍛造ピストン+PAMS ESTライナーとで純正1015から1105cc化。クランク芯出し修正やオーバーサイズバルブガイド入れ替え、HFバルブにハイカム、SMB(サンクチュアリー・メカニックブランド)ハイプレッシャーオイルポンプKIT、6速クロスミッションやフラットスプロケットが使えるEVOシステムも組まれる。ボーリングほか内燃機加工はDiNxに依頼している。
キャブレターはヨシムラTMR-MJNφ38mmのデュアルスタックファンネル仕様で、ショートファンネルにゴールド、ロングファンネルにブラックをチョイス。
フロントフォークはノーブレスト・オーリンズE×M(エクスモード)パッケージによってオーリンズRWUをセット。キャリパーサポートもEMモード同梱品。フロントブレーキはブレンボGP4 RXキャリパー+RCMコンセプトφ320 ホール&スリットディスクの組み合わせを使う。
スイングアームはスカルプチャー ワイドスイングアームのブロックスタビライザー追加仕様。リヤショックはオーリンズブラックラインだ。ホイールはO・Zレーシング製アルミ鍛造のGASS RS-Aで3.50-17/5.50-17サイズを履く。ドライブチェーンはEK530RCMだ。
リヤブレーキはブレンボCNC P2 34ニッケルコートキャリパー+サンスターφ250ディスクの組み合わせ。排気系はナイトロレーシングのチタン・ウエルドクラフトエキゾーストに同じくグレネードチタンV-Ⅲサイレンサーのポリッシュタイプをつなげている。