前オーナーの所有パーツで作られたレース仕様に手を加える
いわゆる旧車では希少化や車両の高騰化が取り沙汰される昨今。草レースやサーキットの走行会に旧車を使うということが躊躇されてもくる。だが、この車両は“CB-Fで走りたい”という望みを具体化するべく、新たにベースを入手してカスタムを施したという1台だ。
「これは以前ウチからテイスト・オブ・ツクバ(TOT)に出ていた方が、自身で持っていたパーツで組んでいった車両だったんです。それを途中で今のオーナー、CB750Kのフルカスタムも持っているんですけど、この方が買い取ってサーキットを走る練習用にと、リヤサスやスイングアームを追加変更したところ。
エンジンはレギュレーションがあるから750がベースとは分かってるけど、823cc仕様かな? 次回開けてオーバーホールとカム交換する時に分かりますね(笑)。マフラーは現オーナーさんが、センター出しがいいっていうことで作ったんですよ。変わったものが好きと言っていいのかな? でも、好きだからこうする。サーキット用のベースにCBを選んだのも、好きだから。それでいいんですよ。
カスタムすること自体、元々自己満足だし、ほかと違うことをすること。だからこれでいいんですよ。自分で選んだバイクだし」
市本さんには、’90年代のカスタムブーム時代から長年CB-Fを扱ってきた経験も、それこそレースからストリートまで幅広くある。CB-Fの限界も多く見てきているし、その先に新しさを取り込めるということも知っている。廃番パーツの代替品や、今ならではの手法を織り込んだパーツの供給や作業手法という新しさが実際に生まれてきた。だから市本さん=CB’sに、他にないCB-Fを求めるお客さんがやってくるのは当然と言える。
答えは単純にして明快。CB-Fが好き。だからこそベースにするし、自分仕様を強めていく。手法もパーツもあるのだから、今に合った安心と楽しさで作ればいい。それがたまたま純正の形なのか、カスタム方向に振るかという程度だ。
この車両を見てもったいないなと思うよりは、乗って楽しそう、そう思ってほしい。それがCB’s/市本さんの考えだ。旧車に無理をさせているのではない。きちんと仕立てたCB-Fならば、オーナーの要望に応えてくれる。それを具体化した一例と言っていいのだ。
Detailed Description詳細説明
フロントカウルはCB400SF Version Rの純正ビキニカウルを流用してヘッドライトステーにマウントしている。ハンドルはセパレートタイプに変更。
メーターはオリジナルカーボンパネルにULTRAステップモーター・エンジン回転計とウィズミー・デジタルマルチゲージをセット。フロントマスターシリンダーはゲイルスピードVRM。速度計やミラー、ヘッドライトも加えればストリート仕様としても楽しめそうだ。
オイルクーラーが追加されたエンジンはCB750Fで「おそらく823cc仕様」(市本さん)とのことだが、次回オーバーホール時にカム換装等と合わせて改めて確認される。フレームのピボット部上、シートレール立ち上がり部に補強が加えられているのも見える。
キャブレターはFCRφ37mm。エンジンのリフレッシュも予定内にあるから、トータルとしての仕様が今後詰められていくのは明確だ。
フロントフォークとトリプルツリー/3.50-17サイズホイール/ニッシン4ピストン・フロントキャリパーなどはCBR600RRの純正流用で構成する。フロントブレーキディスクはモトマスター製で、ブレーキラインはスウェッジラインによってステンレスメッシュ化している。
スイングアームはウイリー製5角目の字断面の7N01材製。リヤホイールはハイポイント6.00-17、ドライブチェーンはDIDの520サイズ。
リヤブレーキはゲイルスピード・マスターシリンダー+ブレンボP2 34キャリパー+サンスター・プレミアムレーシングディスクの組み合わせ。リヤショックはアラゴスタ・ピギーバックタイプをレイダウンマウント。ステップはCB1300SF用の社外品(メーカー不明)だ。
マフラーはオーナーの好みでセンターアップタイプを製作し、サイレンサーをシートカウル内に置いてここから排気する。