現代的ディメンションに耐久性を加えるフレーム補強
「当店に在庫していたカスタム済み車両をリフレッシュ、それと同時にフレームを“やっておきたいから”と創業者の田島さんが補強した上で全体として組み直したものです。これが田島さんの最後の加工フレームになったと思います」
こう、タジマエンジニアリング・村嶋さんが概要を説明するCB1100R。田島さんはCB-F/Rの17インチ化に際してネック部やエンジン前後/後ろ下などへの補強手法、またディメンションも約100mmのトレールを確保というようなメニューを確立していた。この車両ではフレーム補強でそれを踏襲している。
もし今までのタジマ製車両との違いを探せと言うなら、田島さんがこうした17インチホイール化の際にCB1300SF(SC54)やCBR1000RRなどのホンダ純正パーツを使うことが多かったのが、市販パーツで構築している点を挙げることになりそうだ。
「この車両ではステムやフロントフォークはCB1100Rのままですが、そんな相違点はあるもしれません。純正品の流用はコストを抑えたり、フォークオフセットなどのディメンションもそのまま取り込める利点もありましたし。もちろん計測検討もした上で使いましたが」
こう比較したのは、田島さんの逝去にともなって村嶋さんがタジマエンジニアリングを引き継いだことがある。もう25年近く同店で田島さんとともに作業を行って村嶋さんは、どんな方針でいるのか。それは同店でこれまでやってきたCB-F作業メニューをどのくらいカバーするのかでも分かってくる。
「全部やりますよ。ポート加工(注:旧車でも現行車でも行って効果がある)も、バルブガイド打ち替えも、クランクの軽量加工も、フレーム加工も。今までの車両にも私が作業してきたものも多くあるんですよ。この車両ではノーマルですが、今後手を入れるとなれば同じ作業を施せます」
そう言えば田島さんは当初、ポート加工をはじめとしたオリジナルの作業メニューを店名を冠して“タジマスペシャル”と呼んでいた。それがいつしか“タジマ&ムラシマスペシャル”へと変わっていた。今振り返って思うと、田島さんは自身の作業を、村嶋さんに免許皆伝していたということだった。だから、すべて受け継いでいるという村嶋さんの言葉はクリアで、自信というか、重みも現れている。
「そう取っていただけるとありがたいですね。田島さんも常々“ウチで組んだエンジンは壊れないよ。無理して速くするようにもできるけど、今のCBは壊れないように作るのが大事”と言ってました。それに合わせたパーツ選びや加工をやってきていますし、それを続けられればいいと思います」
屋号も、作業内容も変わらない。創業者の逝去という突然の出来ごとがあっても、スムーズな移行ができた。この車両は今までのノウハウをきちんと取り込んでいる上に、今後の変更も同様にできることが明確。これからも変わらないメニューの見本とも言っていいわけだ。そしてこの先もまた、新たなCBが快調を目指せる。タジマエンジニアリングの存在に、CBファンは安心できるはずだ。
Detailed Description詳細説明
メーターや外装、フォークオフセット45mmのステムはノーマルで、ハンドル純正もセパレートだ。スロットルはハイスロ化している。グリップはスーパーバイクグリップに換装する。フロントマスターシリンダーはブレンボ・ラジアルブレーキマスター。燃料タンクは純正アルミだ。
エンジンは1062ccのノーマルで、速度計検知をフロントホイールからフロントスプロケット部に変更。キャブレターはTMR-MJN。フレームはネック部から左右各ダウンチューブにかけて、エンジン前、エンジン後ろの左右をつなぐパイプ、ピボット上部左右の計6カ所を補強する。17インチハイグリップタイヤに適合し今後の足まわり/エンジン仕様変更にも対応できる作りで、田島さんが手を入れた最後の補強となった。
フロントフォークはφ39mmのCB1100RノーマルでフロントブレーキはブレンボAxialキャストキャリパー P4 30/34+フローティングディスク。
リヤブレーキはブレンボ・キャスト P2 32キャリパーをウイリー製サポートでマウントし、サンスター・カスタムディスクを組み合わせる。マフラーは元々の入庫時に装着されていたノジマ・ファサームチタンでカーボンシェル・サイレンサー仕様だ。
スイングアームは元々ウイリー製が付いていたが、今回、同社のより新しいモデルに変更している。リザーバー付きのリヤショックはCB1100R純正をオーバーホール、ドライブチェーンはエヌマ・Threedで前後ホイールはマービックの3.50-17/5.50-17サイズを履く。