純正スタイルをキープし、より楽しめるようにレストア
白×赤のカラーリングやブーメランコムスターホイールから、1982年のCB750FCと分かる車両。手を入れた安田商会・安田さんはこの車両の成り立ちをこう説明してくれる。
「このCB750Fは割と長いこと放置されていたんです。屋内でしたから、ぱっと見には今とあまり変わらないようにも思えたんですけど、結構あちこち傷んでいました。それでレストアしていったんです。CB-Fのお客さんは純正スタイルが好きな方が多いですから、そんな方にもマッチするでしょう。それに、どこがどうダメになっているかを把握しておけば、今後似たような車両に出会ったときに何をすればいいかも分かりやすい。そんなことも考えながら製作しました」
多くのCB-Fに手を入れ、自身も25年レベルでCB750FCに乗り続けてきた安田さんには、ある意味当たり前の内容かも知れない。それでもこの車両の製作過程からは、良好な車両維持のための“気づき”があったようだ。
「これから乗ろう、乗り続けようとするときに、一番大事なのは足元かなと思います。ホイールやブレーキまわり。ここがきれいでしっかり機能することです。CB-Fノーマルホイールのアルマイトは、汚くなると何もできない。その上に経年でポツポツしたシミが出てきて、それも取れない。メタルコンパウンドで優しく磨く程度まで。いい状態を崩さぬように、まめに手入れするくらいしかできないんです。
そんなホイールは今どきですからむしろ社外品に換えた方がいいでしょうけど、純正にこだわりたいというなら注意しましょう。ブレーキは、マスターやキャリパーがブレーキフルードにじみというか、変質して出てきているのを清掃か交換。キャリパーはこの車両のようにオーバーホールして塗り直しもできますし、ディスクをクラフトさんの純正サイズ・サンスター製にしたりという手も選択できます。
今回、こういうふうに純正に寄せてレストアしたのは、どんな劣化があって、それがどう戻せるかを知りたかったから。純正スタイルに近い状態かな。よく走るという部分を優先するなら、さっきも言ったように、社外品を活用していけばいいと思います」
ブレーキラインがステンレスメッシュ化(ブラックの被覆でノーマルライクなルックスになっている)されたり、リヤショックがYSS製に換装されたりしているのは、生産当時から40年を経る中で現れた、純正のように見えながら性能を高めるという手法の取り込み。タイヤも同様で現在のモデルにも使われるものを選ぶ。手が打てるところは打ち、打てない、打ちにくい部分も劣化を早期に発見して、その進行を抑えることは大事。そうして安心できる部分を増やしておけば、いい状態で長く乗れる。この車両は、そんなことを改めて教えてくれる1台なのだ。
Detailed Description詳細説明
メーターはCB750F国内仕様のノーマル。トップブリッジはいずれもCB-Fに造詣の深いTTRモータース/クラフト/安田商会3社で合同製作した「CB-F/R用バーハンドルキット39」によってバーハンドル化。ハンドルバーはアクティブROADφ22.2アルミ(ミディアム)を使い、左右スイッチやフロントマスターはCB750F純正をきっちりレストアしている。フロントフォークはやや突き出してセットされる。
シートは純正ベースにレザーを張り替え、内部フォームも乗りやすい形状に変更する。外装類も純正パターンで再仕立てされている。
長らく屋内保管してあった状態から、レストアに加えて必要な箇所には手が入っている。エンジンはCB750Fのノーマルのままで、状態が良好で調子も良かったため、外観のサビを落とした程度で使えた。キャブレターは洗浄してオーバーホールし、フレームはサビ落としと清掃を行い塗り直している。サビていたマフラーはレストアも可能だったが、スチールショート管に変更した。
φ39mmのCB750FC純正フロントフォークはインナーチューブのサビを落とし、曲がりも確認した上で内部をオーバーホールしている。フロントブレーキは純正片押し2ピストンのキャリパーを清掃し、ブレーキラインをステンレスメッシュ+ブラック被覆化している。
リヤショックは当時のルックスで現代の性能を得られるYSS製Zシリーズを装着する。スイングアームも純正丸パイプを再塗装して使用している。片押し2ピストンキャリパーおよびフロントに同じφ272mm径(インナーはオフセットや形状が異なる)ディスクはともに純正品を使う。
前後2.15-18/3.00-18サイズのブーメランコムスターホイールはFC純正のままで、軽く磨いて使う。ステップも純正で他部分同様に磨いている。