本来のスタイルを維持しつつ機能を高めて長く乗る好例
「この車両は、長く当店とお付き合いしてくださっているお客さんのもので、私がしゃぼん玉・一宮店で店長をしている時から見ています。少しずつアップデートを重ねているのですが、ニンジャらしい雰囲気はずっとキープするように手を入れています」。
しゃぼん玉でマネージャーを務める滝川さんがそう教えてくれる車両。その言葉通りに、ノーマルの雰囲気は芯に持ちながら、各部にはカスタムらしい作り込みやパーツ選択がきっちりと行われている。ある意味で正統Ninjaカスタムと捉えていい1台だ。
ところでこうした車両作りを行う際には、よほど明確な完成形が描けている場合を除いて、オーナーとショップとでの意思疎通が欠かせない。しゃぼん玉には店内に膨大な量のパーツ群があるし、大きなピットエリアではカスタムや整備の作業が行えるという有利性は何度か説明してきたが、どのパーツを選んでいくか、愛車に装着して形にしていくかはあまり触れていなかった。だが、新たにパーツエリアに設けられたコーナーで、それが明確化したようだ。そのコーナーには“Shabon Dama S.S.”と書かれたサインボードがあり、その前にはカウンターとスツールが設けられる。
「しゃぼん玉SS。SSはストリートスペシャルの略です。当店、しゃぼん玉で手がけるカスタムをこう呼ぶようにしたんです。コンプリートカスタムを考えてもいいんですけど、そこに限らず、ホイールの交換など大物もそうですし、ボルトひとつ、パーツひとつから、お客さんとしっかり話をし、説明して購入、装着していただく。
このエリアはそのための“ひとつ上の接客ルーム”で、ここに私を含めてしゃぼん玉の話せる(ここではパーツや車両、カスタムについて知識があるという意味)スタッフが立ち、対応していきます。令和の今にふたつ前の時代、昭和のノリですけど、ただ店頭で売り買いするだけでない、納得と信頼でお客さんのバイクを良くしていければという試みですね」と滝川さん。ストリートと銘打つ中には、多彩な使われ方をされることが多いゆえの柔軟性も考える。と同時に、同店のお客さんに多い、カスタムでのサーキットユースも考えたスペックを持たせながら、普段のストリート使いに支障のないことを忘れないという考えも加える。
「峠+サーキットをよく走れることを最低条件に、ルックスも格好良くするという3つの要素を備えるのが私の考えるストリートでのカスタムの姿です」と滝川さんが言うように、今までに紹介したしゃぼん玉製カスタムは各車その流れを汲んでいたが、それをコンセプトとしてより明確化したのが“しゃぼん玉SS”だ。どう選び、どう形作るかの手法は既にあったが、これでより明確化するということ。このNinjaも、冷却系はしゃぼん玉で試した中で一番冷える前後重ねタイプにしたりと、いい手法を選んでいると滝川さんが付け加えるように、コーナー設立以前に既にその適用例となっていた。だからこそ、長く乗りながらも各部のまとまりが良好なのだ。
Detailed Description詳細説明
スクリーンはMRA製をセット、メーターはノーマル配置でアクティブ・デジタルモニターを追加、フロントブレーキ/クラッチのマスターシリンダーはゲイルスピード。ステムはスカルプチャーTYPE-1(オフセット40→37mm)でハンドルはセパレートアップとしている。
エンジンはノーマルで、オイルバイパスラインを追加しカバー類を結晶塗装している。ラジエーター/オイルクーラーは「試してきた中で一番冷える配列」(滝川さん)の前後重ね配列で、ダウンチューブとステップキットとともにナイトロレーシング製を使う。
キャブレターはFCRφ37mm+スポンジフィルターで、排気系にはGPZ900R用ウエルドしゃぼん玉ストリートスペシャルエキゾーストモデルをチョイスした。
フロントフォークはオーリンズ正立タイプのRWU、フロントブレーキはブレンボ4ピストンキャリパー+サンスターディスクを使う。
リヤブレーキキャリパーはブレンボ2ピストン。リヤサスはオーリンズの17インチ用ショック+Gストライカースイングアームの組み合わせだ。
前後ホイールはO・Zレーシングのアルミ鍛造、GASS RS-Aで3.50-17/5.50-17サイズを選択している。サイドカバー下に見えるプレートはドライカーボン製のTAGOSヒールプレートで、ドレスアップ効果も見せつつ、サイドカバー本体への傷付きも防いでくれる。