スーパースポーツからの乗り換えにも満足行く作り
「この車両は元々スーパースポーツに乗ってらしたオーナーさんが、昔から欲しかったというGPzを入手。ノーマルレストア+リヤサス変更程度で乗りつつ、前後17インチホイール化など徐々に作り上げたものです。ただし、フレームは別の個体になっています」と、製作者のサンクチュアリー・コウガの立入さんがいうカワサキGPz1100。GPz自体はモノサスやハーフカウルを備える一方で空冷Z系最終型として120psを発揮するに至った、シリーズ最強仕様でもあった。
「そのエンジンは比較的良好でしたからミッションを5→6速化して、燃料供給をインジェクション(d.f.i)からキャブレターに換えた程度で使ってます。むしろ車体まわりの方が手がかかりました。
というのも、GPzは短い生産期間の中に前期後期があって、まずヘッドパイプの長さが違う。前期用は短いんですがゼファー1100やニンジャと同じ長さ。元々オーナーさんが乗ってたのは後期型で長いタイプでしたから、前期用フレームを入手して手を入れたんです。
リヤはカワサキ製モノサスのユニトラックですがモノサス登場初期で発展途上らしい作りと作動性でしたから、ヤマハ(YZF-R6)のリンクに換装するべく作り直し。フレーム側のショック前にゴツいボックスがあるのでこれを外し、同時にGPzの弱点となるピボットも作り直してます。ここは普通のバイクだと左右対称で片側ボルト止めになるところが、左は穴、右はクランプ止めになっていて、径もφ15mmとZのφ16mmより細い。ここを直すと同時に、位置も下げて前に出してます。
ただ、このフレームが発泡ウレタンが中に注入してあって、まったく溶接が効かない(泣)。それをこそぎ取るブラシツールを作って取りましたけど。ほかにも古いのでステップのマウントブラケットが曲がって錆びたりしてたので、それも元より強い形にと作り直したりしました。
結果としてオーナーさんはノーマルに近い状態からの変化に驚くと同時に、スーパースポーツのようにも走れる点に満足もされました」
ほかにもシートカウルはノーマルとコンバートできるなど、細部まで手の込んだ作り。普段はあまりそういうことを言わない立入さんも“自信作”と言いたくなるわけだ。
Detailed Description詳細説明
フロントカウルやタンク、サイドカバーは純正パーツのままで、ウィンカーはオイルクーラー直後に移設。小型だが被視認性は高いものを選択している。
ハンドルはセパレートからバータイプとして、メーターは同じカワサキのZX-10R用をセットした。左右のマスターシリンダーはブレンボ・ラジアルポンプだ。
スムージングされたように見えるテールランプは埋め込み加工等でなく、スリムな欧州規格品(車検対応品)を取り付けている。
シートカウルは社外FRP製の持ち込み品。破損やゆがみがあったがサンクチュアリーKOUGAでシートベースから修正し、他部分の外装と合うように作り直した。シートキャッチで外すことができ、ノーマルのシート/シートカウルと付け替え可能とした点も秀逸だ。
エンジンはGPz1100のほぼノーマルのままで、ミッションを5→6速に変更し、サンクチュアリーコウガオリジナルのエヴォシステム(出力軸とシフトシャフトの支持を1点から2点として安定させ、フロントスプロケットもオフセットタイプでなく通常型が使える)を装備している。
燃料供給もGPz1100ノーマルのd.f.i(デジタルフューエルインジェクション)からTMR-MJNに変更されている。
フレームはピボット上部をカットしYZF-R6のリンクとナイトロンサスを収める。ピボットも通常型にすると同時に位置も前/下に移動しているのだ。
フロントフォークはナイトロン製のNTR43。フロントブレーキはブレンボ4ピストンキャリパー+サンスターディスクの組み合わせ。
ロングタイプで角型のアルミスイングアームはYZF-R6の流用品で、リンクと合わせてこの車両に使われる。
3.50-17/6.00-17サイズ/3本スポークタイプとなった前後ホイールもYZF-R6からの流用パーツ。リヤブレーキまわりもYZF-R6のノーマルをセットした。
排気系はナイトロレーシング・メガホン。フレームは内部にウレタン注入がしてあったものをすべて剥ぎ取ってから使った苦労の作だ。