伝統の旧車、ひいてはスズキブランドを長く愛してもらうために
イギリスのスズキ現地法人、GB(グレートブリテン)スズキが、自社旧車供給プログラム強化の一環として「チーム・クラシックスズキ」を設立したのが’15年末のこと。その中で当地で人気が高まってきた、1970年代の欧州耐久選手権戦的なクラシック耐久レースシリーズに向けて、スズキGSX1100Sカタナをベースにした18インチレーサーを作り上げた。
このカタナレーサー、そのお披露目とも言える’16年のイギリス・バーミンガムショーでは、フレームやエンジンなどほぼ全バラ状態から観客の目前で完成車へと組み上げてしまうというパフォーマンスも披露。レース用の特殊なもの以外の各部パーツがビンテージ・プログラムで扱われていると分かるとともに、出来上がったカタナレーサーがこれから各地を走る、その活動にも興味を持ってほしいという狙いもあってのことだった。
どうせなら日本のTOTのようなレースにも……とも思えるが、進化を重ねてより速くというよりは、変わらぬ姿を見せ続けることで、旧車への興味、ブランドへの好感獲得など自らの役目=旧車への興味、ブランを果たそうとするポジションにあることが、このカタナレーサーの主目的だ。
Hセクション3本スポークの前後18インチダイマグホイールを履いて当時らしさも見せる一方で、当地製スイングアームなどの社外パーツや1170cc仕様のエンジンなど、その作りは当地風。ニューKATANAも話題に加わった今、あえて空冷カタナを手に入れ、カスタムを楽しみたいという向きには新しい刺激になるに違いない。
Detailed Description詳細説明
まさしくカタナと言えるフロントカウル。当時の鈴鹿8耐やAMAスーパーバイク用カタナと同様にアンダーフィンは外されている。
カタナのノーマルを使ったメーターケース内には、SPAデザイン製の多機能デジタル&アナログ回転計のメーターを埋設。ハンドルはセパレートタイプを装着。
シートのタンデム部以降はテールカウルとともに一体成形されたもの。赤塗装でテールランプを表現する。サイドゼッケンはカーボンプレートにナンバー7の外郭をなぞるようにLEDを埋設して、ショーの展示時や耐久レースの夜間走行時にはナンバーを点灯させる、凝ったカスタムもなされている。
燃料タンクのキャップはクイックフィラーで給油する耐久仕様。前端のラバーバンドでワンタッチ脱着もできる。
夜間走行でのヘッドライト使用時にはバッテリーボックスとなるアルミケースをエンジン左に追加。上のボックスにバッテリーと+-端子がワンタッチではまり、ヘッドライトユニットも同様にフロントゼッケン部に装着されて点灯する(装着したままの場合もある)。昼間のレースでの軽量化と夜間照明を両立するものだ。
エンジンはボア拡大で[純正排気量:1074→]1170cc化、ハイカムやステンレスバルブも組まれる。コンロッドやリビルドクランク、コンロッド大端部のベアリングやクランクベアリングなどは当のスズキ・ビンテージパーツプログラム(GSX1100Sもラインナップされている)から供給される。
前後ホイールはダイマグHセクション・3本スポークの18インチで、ブレーキキャリパーはオールドルックとして見せるため、あえてブレンボ2ピストンを使っているのだ。
リヤサスはイギリスのK-TECHで、スイングアームも同じくスイート・ファブリケーション製。車体のベースはGSX1100SD='84年型カタナで、フレームはほぼノーマルでありながらヘッドパイプ部は下の補強部を再構成などの追加工を行い、スイングアームピボットは下げられている。