これぞカスタムという成り立ちを自作で完成させる
2019年5月末に発売されたスズキの新型KATANA。それに刺激されたかのように作られた空冷カタナカスタムか? と思えそうなこの車両、何かが違う。ロング&ローにワイドタイヤ……。それも確かに他とは異なるスタイルだが、決定的に違うのは、ベース車両だ。
シリンダーヘッドにあるYPVSの刻印、エンジン下を這うマッシブなボリューム感あるエクスパンションチャンバー。そう、ヤマハ’80年代の2ストロークツインスポーツ、RZ250Rがベースなのだ。オーナーにして製作者のchibaacさんは数年前からこのカタナルックRZ-Rの構想を練り、自ら作業を進めてきた。chibaacさんはかつて、同じヤマハのRZ250でもロング&ローを地で行き後軸100ps超えというドラッグレーサーを製作、次いで同じRZを元にしつつ、YZF-R6ボディを載せたロング&ローカスタムも作った。それに続くのが、このRZ-Rなのだ。
よく見ていくとこの車両、ダブルクレードルフレームもエンジンもRZ-R以外の何物でもないのだが、ごく自然に付いている感のある倒立フォークやロングスイングアーム+ワイドタイヤ、さらにフロントカウルに燃料タンクまわり。すっとシェイプされたテールまわりも自然に収まり、じつはこっちがニューカタナだったのでは? という印象さえ持たせてしまう。
chibaacさんは「実際にはいろんなところが切った貼ったで、タンクだってカバーじゃなくてカタナそのものの下半分を切り飛ばした上で、インナータンクに被せてます。最近はボルトオンパーツもいろいろと増えてカスタムも楽にはなってきているけれど、それだけじゃ物足りない。そう思って、’90年代のカスタム全盛期のようなカスタムらしいカスタムを作って、見てもらえたらいいなと思ったんです」と製作動機を語る。
その甲斐あって、初のお披露目となった2019年SUGO全日本2ストミーティングのパドックでは最大の注目の的。今までの作例からもきちんと走ることは考慮されていて、以後は公道走行が出来るようにモディファイを加えたいとのことだった。
すでにヘッドライトやナンバーステー、ウインカー類は備えられているから、あとはミラーの追加程度でそれは叶いそう。それにしてもこの出来映えと言うかコンビネーション、2スト車の集いだけでなく、どこへ行っても目を引くこと間違いなし。機会があればぜひ実物を見ていただき、熱い心を感じてほしい。
Detailed Description詳細説明
フロントカウルとサイドカバー、燃料タンクは空冷カタナのパーツを流用した。ヘッドライトセンターにはニューKATANAに準じたアイラインが入る。
フロントフォークまわりに合わせて、ステムまわりもアプリリアから流用したという。液晶パネル+アナログ回転計ワンボディのメーターはSP武川製を装着。
オリジナルでSUZUKIと入る部分にはそれに似せた形でYAMAHAの文字を配する。タンクキャップはTWM製で周部はくり抜かれている。
テールカウルとシートレールはYZF-R6だが、それにしてもよく前半部のカタナフォルムとマッチングさせたと感心させられるパートだ。
こちらはタンク部分を下から見上げたカット。カタナタンクの下側をカットしてインナータンクに被せたという説明がこれでよく分かるだろう。
エンジンはRZ250Rの並列2気筒をピストンリードバルブからセミクランクケースリードバルブ式に加工済み。シリンダーも補助排気ポートを追加工、これに応じてピストンはNSR250RのMC21用加工流用している。点火系はOSR・CDI電撃スペシャルで、キャブレターにはケーヒン製PJ38ショートをチョイスした。
右2本出しの排気チャンバーはjha製の寸法を元にして、chibaacさん自身が輪切りピースから起こして自作したというレプリカ。
フロントまわりはアプリリアRS125の純正パーツをステム/フォーク/ホイールとも流用した。これらのフィッティング含め、ほとんどが自作というのも凄い。
角型ロングのスイングアームはTZR250(3MA)加工でリヤサスはアプリリアRS1000だ、ホイールはH-Dファットボブ用の8.00-18サイズを装着している。