今普通に売られていてもまったくおかしくない
1980年代バイクブームを知る人にもごく自然に「おっ、きれいなホンダCBR400Fだな。足まわりも流用で換えてるんだろうな」と思わせる一方で、当時を知らない人にも「これ、何て言う新型モデルですか?」と聞かれそうなくらい、市販車的なすっきりしたまとまりを見せてくれる車両。その正体は、ホンダCBR650F(CB650Fでもいい)だ。
何だ、サイドカバーに書いてあるじゃないかという人もいるだろう。でもそれは、製作者でありオーナーのバイクショップNEN・田中さんの遊び心。そう、ベースは現代の4気筒CBR。これにかつてのCBR400Fルックをまとわせたカスタム車両なのだ。サイドカバーに書かれたのは、そんなこの車両の素性を当時のCBR400Fと同じ位置、同じ書体で表現したものだ。
フレームまわりやエンジンまわり、前後17インチの足まわりは、まるごと今のCBR650Fノーマル。それなのに、顔つきから燃料タンク、テールカウルにシートまで、’80年代CBR400Fが違和感なくフィットされている。
「今こそ自分がほしいので、作ったという感じです。カタログを眺めていってベース車を決めて、パーツも必要なものを揃えていって。細かい部分で今はもうないものがある点や、どっちもCBRとは言ってもどうしても違う車両ですから、それを合体して生じてしまう違和感を消すのが大変でした」
そう田中さんは言うが、フレーム下にメッシュパネル(樹脂板材を買ってきて穴開け自作)を入れてタンク~フレーム間に妙な隙間ができないようにしたり、メーターケースはCBR400Fにほぼ同じと見つけたVTR(250)用を使ったり、ヘッドライトステーもライトもベストな位置に来るように工夫して……と、進んだ(これらの作業はNENのHP内“ねんぶつ”のページから動画で見ることが出来る)。CBR400Fの外観上の大きな特徴でもある角型ライト下オイルクーラーも装備する(ただしオイルはここには回していない、ダミーだ)。
「エビス(福島県)とかローカルなサーキットの走行会で、なぜかトップで走ってて、『あれ、何だろう?』って笑われる感じもコンセプトでした」と田中さんは続ける。前後17インチなのになぜかCBR400Fの16/18インチに見えてしまうこの車両、今はバザーズサブコンで細かい動力系セットアップも行われている。それにしてもこの完成度。久々のクリーンヒット、と思える1台だ。
Detailed Description詳細説明
角型ヘッドライトやその下に置かれるオイルクーラー(「この車両ではオイルは回していないので重いだけですけど(笑)」と田中さん)は、1984~CBR400Fそのもののパーツを使う。ヘッドライトステーのCBR400Fで、CBR650Fのフレームに追加工を行って装着してある。
メーターケースはVTRで、速度計部にデイトナ製オールインワンを組む。ライトステー/フレームは本来シルバーだが、この車両ではブラック仕上げとしている。
燃料タンクにはフューエルインジェクション(CBR400Fはキャブレターで、CBR650FはFI燃料供給)用の追加工を行うが、外観や燃料コックレバーも含めてCBR400Fそのまま。
サイドカバーもテールカウルもCBR400Fで、ダブルタイプのシートも400Fだ。前後ウインカーは400Fほぼ同位置に若干小ぶりのものを置いている。
エンジンやFIまわりはCBR650Fのノーマル。スペースの都合上エアクリーナーボックスが付かず、バザーズサブコンで燃調を補正した。
シリンダーヘッド上のサイドダクトもCBR400Fらしさを作り出すが、配線のカバーにも役立った。フレームはCBR650Fノーマルでシートレールは加工される。650F純正アンダーカウルには400Fの「CB R」ロゴが置かれる。サイドカバーのロゴもCBR400F風に650を表現してあるのだ。
排気系はNENオリジナルチタンS/O。なおフレームは鋼管ダイヤモンドタイプだがダブルクレードルのCBR400Fとの違和感は見当たらない。
少し後方位置としたステップは社外品を装着している。このバイクは外観は明らかにCBR400Fなのだが、内容は現代版というのも面白さを高めているのだ。
φ41mmフォークや3.50-17/5.50-17サイズの前後ホイール、テーパータイプスイングアーム等はCBR650Fのノーマルをそのまま使っている。
モチーフとなったCBR400Fは、φ35mmサイズのフロントフォーク+角型スイングアーム、前16/後18の星型コムスターホイールなのだが、この車両は同じ形状でないのにそれらしく見えてしまう点が凄い。タイヤはCBR650F標準のダンロップD222でフロントが120/70ZR17、リヤが180/55ZR17となっている。