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ACサンクチュアリー Z750(カワサキ Z750)

カスタムからの再構築で細部まで配慮し最適化を行う

ACサンクチュアリー Z750
(カワサキ Z750)

取材協力:ACサンクチュアリー(SANCTUARY本店) TEL04-7199-9712 〒277-0902千葉県柏市大井554-1
URL:https://www.ac-sanctuary.co.jp
2025年 12月 24日

進むZのネガつぶしと変わりゆく進化の定義

当時そのままをレストアして乗るのもいい、だがせっかくなら今不安なく走る要素を加えたい、そう、作れるのなら世にあるいいパーツを組み合わせてみたい。今Zに向き合って、そう思う向きも多いはずだ。ただ、それを実現するにはZ生産からの時間経過、50年の経年を補う必要がある。車体もエンジンもレストアするとともに最新17インチタイヤをはじめ現代のパーツが使えるような加工を行い、現代的な性能を持たせ、安心して長く乗れる内容も加える。ACサンクチュアリーのコンプリートカスタム、RCM(Radical Construction Manufacture)はそこをテーマに2000年に成立。以来700台を超える製作台数の中で、Zは9割を占めるという。このZ750はその近作、つまりほぼ最新のRCMとしての多くの要素を備えている。

「このZ750、RCM-639(註:RCMのシリアルナンバー=通算製作番号で639台目を示す)は17インチでカスタム化されていた車両を元にRCMへと再構築したものです。こうした例も今では多いです。フレームは元の補強を外した上で測定と修正を行い、チェーンラインも正確に出るようにして再補強。車体姿勢に関わるフロントフォーク長も新たにノーブレストE×Mパッケージを使うことで適正なものへと見直しています。

エンジンは58mmショートストロークのZ2系(Z1系は66mm)の仕様と既にツインプラグ仕様に加工されていたヘッドを生かしながらシリンダースリーブを打ち替えてφ75mmの鍛造ピストンを組んで1024ccに。クランクの芯出しや先ほどのヘッドもオーバーサイズバルブガイドへの入れ替え(註:ガイド穴の偏摩耗やガイド自体の斜め入りや芯ずれを補正)やバルブシートカット、これは限りなく各気筒のバルブセット長を揃えるようにするなど、当社内燃機部門のDiNx(ディンクス)で行いました。

ミッションも当社New6速クロスに、カウンターシャフトが長くフラットスプロケットが使えて、シャフト支持部を増やした(シャフトの安定性とともにクランクケース剛性も上がる)EVOシステム。根本的なところだとオイルクーラーに効率的にオイルを回すことができて熱対策にも有利なトロコイド式オイルポンプ化もしています。

これらはRCMのZでは基準のように使われるようになりました。Zに新たな定量化と高質化という効果を持ち込んでいます」

ACサンクチュアリー・中村さんはこう説明する。登場から50年。そう聞いてもZが単に古いものとしてでなく身近に考えられるのは、生産終了後も多くの人が手を入れ、進化させ、その都度の現代化を図って最新の状態を楽しもうとしてきたからだろう。ACサンクチュアリーはそうした作業を行ってきたショップのひとつ。多くのZをRCMとしてコンプリートカスタム化する中で、車両の多くのネガを見つけ、直し、性能を底上げする。そしてその手法や数値をまとめ上げて定量化し、良質な一定水準以上のベース製作と17インチ化、エンジンのスープアップを果たしてきた。年が経つに連れて深刻化する劣化等のネガつぶしも進化し、ただのネガ排除から、次の仕様につなげられるようなものも構築した。既にカスタム化されたものからの変更もある。一方で、日々新しくなる素材や手法、高まる作業や加工の精度といった要素によって、仕様は都度新しくなる。エンジンで言えば静粛性が高まり寿命も延ばせる。またライフ重視でいながら十分なトルクを持たせるなどのバリエーションも作れる。かつては単なる修理と復活までだったものに、より自由な選択を可能とする。そんな、進化の定義そのものが変わるということも、このZ750のように新しいRCMに投影されていくというわけだ。

【 ザ・グッドルッキンバイク記事一覧はこちら!! 】

 

Detailed Description詳細説明

スカルプチャーφ43フォーク用SPステムKITとエクスモードパッケージで再構築されるフロント。フォークオフセットは純正60mmから17インチに適した35mmに変わる。ハンドルはデイトナRCMコンセプトLOWバー、左右マスターはブレンボRCSだ。

シートはデイトナRCMコンセプト。こうしたパーツが量産供給されることも定量化のひとつで、破損の際にもすぐ対応できることになる。もちろんここからのアレンジもあるだろう。

外装はZ2火の玉カラーで再仕立てされる。ベースのZ750は'73〜'75年のZ2(750-RS)の改良型となる'76〜'78年モデル(Z750FOURとも)だ。

クラッチは油圧駆動化され、クラッチレリーズとバックステップはナイトロレーシング。フレームは元の補強等を外して測定→修正→再加工、ドライブチェーン軌道も確保。EK530RCMドライブチェーンは薄型プレートを使ったチェーンで干渉も防ぐ。

エンジンはφ75mm鍛造ピストンを使いZ2系の58mmストローク(Z1系は66mm)を生かしたショートストロークの1024cc仕様に。クランクケースはヒビ修正、ピンの圧入クセから出た異音対策などクランクまわりは2度の再構成を行い、旧車で突然出がちなネガの排除も進められた。そのクランクシャフトはDiNxでフルリビルドしサンクチュアリーメカニックブランド・New6速ミッション+EVOシステム、トロコイド式オイルポンプも組む。入庫時にツインプラグ仕様化されていたヘッドは生かしながら精密加工しPAMSビッグバルブにインナーシム、WEBのST-2クラスカムをセットするなどしている。

吸排気はTMR-MJNφ38mmのヨシムラ・デュアルスタックファンネル仕様+ナイトロレーシング4in1チタン手曲げマフラー。ホース類まで各部は一新された。

フロントフォークはオーリンズRWU(φ43mm、Z系純正はφ36mm)で、フロントブレーキはブレンボ484cafe Racerキャリパー+サンスター・プレミアムレーシングディスクRCMコンセプト。

リヤブレーキはブレンボGP2-CRキャリパー+サンスターディスク。サイレンサーはナイトロレーシング・ストレイトチタンV-1のヒートポリッシュだ。

リヤサスはスカルプチャー・R.C.M専用ワイドスイングアーム+オーリンズKA132ショック。前後ホイールはO・Zレーシングのアルミ鍛造、GASS RS-Aで3.50-17/5.50-17サイズを履いている。

WRITER

Heritage&legends編集部

バイクライフを豊かにし、愛車との時間を楽しむため、バイクカスタム&メンテナンスのアイディアや情報を掲載する月刊誌・Heritage&legendsの編集部。編集部員はバイクのカスタムやメンテナンスに長年携わり知識豊富なメンバーが揃う。

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