各部を知れば、それぞれのパーツの持つ意味や役割も理解できる。使用した画像はヤマハの水冷ピストンリードバルブ単気筒エンジン(DT200R/37F)の透視図だ。クランクケースリードバルブはこの図でピストンの穴(吸気窓)を通ってクランクケースに入っていく混合気がそこを通らず直接ケース内に行くと考えればいい。流れが分れば、工程や仕組みも分ってくる。
2ストロークエンジンの主なパートを見る
●キャブレター
吸入負圧は4ストほど強くないため負圧式はまず使われず、強制開閉式となる。
●レゾネーター
リードバルブ式の場合、リードバルブが開いている時はエンジンに吸気が行われるが、その間もキャブのスロットルは開き、混合気自体はエンジンに向けて送り込まれる。その予備圧をここに溜め、次にリードバルブが開いた際により多くの混合気を送ることができる。
●リードバルブ
薄い金属や樹脂製の板状弁。2ストでは吸入時に開き、エンジン内から圧力がかかった際はそれを吸入側に出さない(吹き返しを防ぐ)ように閉じる働きがある。
●シリンダーヘッド
2ストロークの場合は内部に燃焼室があり、点火プラグが収まる場所。燃焼室の上にも4ストロークのようなカムやバルブ、スプリングといった動弁系はない。
●燃焼室
シリンダー内で圧縮された混合気に点火し燃焼される部分。2ストでは基本的にドーム形状で、周囲になだらかな部分を持たせることもある。
●シリンダー
クランクケースで1次圧縮された混合気が流れ込み、ここで2次圧縮される。それにとどまらず、シリンダー内壁に開けられたポートの位置(高さ)や大きさでエンジン性能が変わるため、重要箇所でもある。ポートは大き過ぎると吹き抜けやリング引っかかりなどのネガも起きやすくなり、内壁の潤滑も妨げる。
●吸気ポート
混合気をエンジン(ここではクランクケース)内に導入するシリンダーの吸気側穴。ピストン上昇時にケース内は負圧になり、その負圧でピストンの吸気窓を通ってケース内に混合気が流入する。ヤマハはピストン下降時に吸入ポートを掃気に活用する7ポート式も高性能車に使った。
●排気ポート
シリンダー内の燃焼ガスを排出する排気側穴。燃焼後にピストンが下がると急膨張したガスがここから排出される。排気タイミングは固定となるため、これを変えることでピーキーさを避けるべく排気バルブが付く。
●掃気ポート
1次圧縮が済んだ混合気をシリンダー内に導入しつつ、燃焼ガスを追い出す(掃気)するための穴。シリンダー横方向に設けることが多い。
●排気デバイス
排気ポートの高さや排気口の容量を変えることで排気のタイミング等を変え、エンジン特性に柔軟性を持たせる機構(2ストだと他のパートでこれを行うことが難しい)。イラストのYPVSでは切り欠きのある鼓状バルブをエンジン回転数などに応じて回転させることで排気ポートの開口部高さを擬似的に変え、排気タイミングを可変化する。ギロチン形状のRCバルブや板がせり出すAETC(YPVSにもこの形あり)も同じ思想に基づくものだ。
●排気チャンバー
2ストロークでは燃焼済みガスを、太いテーパー形状をふたつ組み合わせた排気系に向けて出す。最初の開いていく部分ではガスの引き出し、後半の閉じていく部分では反射波で排気タイミングを調整するように捉えておけばいい。この変更で2ストの性格は変わる。基本的に1気筒1本。
●オイルポンプ(分離給油用)
2ストロークではピストン/シリンダー/クランクへの潤滑は4ストと異なる。公道用市販車の場合はオイルタンクからこのオイルポンプに送られたオイルをキャブレター直後に吐出し、それで行う(ミッションは圧縮の都合上別室で、そこにミッションオイルが入る)。レーサー等ではあらかじめ燃料にオイルを混ぜる。
●コンロッド
ピストンとクランクをつなぎ、パワーを伝達する棒(ロッド)。
●クランク
燃焼で発生した力をピストン/コンロッド経由で受けて出力する回転体。2ストでは吸入混合気を1次圧縮する役割もあるので形状には注意。
●ピストン
混合気を2次圧縮し、燃焼で発生した力を受け、かつ吸気窓も持つ。