さて、毎週水曜日の更新でお楽しみいただいてきた、GoGo!! 2ストローク TZR250編。ここまで一昨年の2018年シーズンを振り返ってきましたが、ここでいったん小休止。2020年年初のしばらくは主役・ヤマハTZR250のご先祖となるRZシリーズの変遷と、連載の主戦場、テイスト・オブ・ツクバのZERO-4クラスでの最大のライバル、ホンダNSR250Rのそれぞれの歴史を紐解いていこう。今回はヤマハ2ストローク中興の祖、RZシリーズについて。本企画を読む上での参考にしていただきたい。
1980年代を目前にロードレースの世界がワールドワイドになり、そこで日本メーカーが活躍したことで、軽量・高出力でスポーツ性の強いの2ストローク車に注目が集まった。一方の市販市場では、その2ストロークは環境対応で縮小傾向にあり、ヤマハもそれに倣う方向へとシフトしていた。そして2ストロークモデルの開発販売が最後なら最良のものを…と投入されたヤマハRZ250/350が起爆剤となり、レーサーレプリカ熱とともに2ストスポーツを復権・発展させたのだ。当時のGPマシンと同排気量で1984年に発売されたRZV500Rはその究極点。その後、RZはレプリカ路線のRZ-R/RRを経て後期RZ-R/R1-Zでオーソドックススポーツへと転じていく。
“2ストロークの灯を消すな!”と作られた究極&ヤマハ初の水冷ロード車
環境対応で国産各社が2→4ストロークエンジン化を進めた中、“ならば2ストの集大成を”とヤマハが1980年6月に市販したRZ250。水冷化等で出力は破格の35ps、車体もスポーツ性重視で鋼管ダブルクレードルフレームやφ32㎜フロントフォーク&カンチレバー式モノクロス・リヤサス、キャストの前後1.85-18ホイール等を採用。1982年7月の国内カウル認可により、YSP仕様ではビキニ&アンダーカウルを装着した。RZ350は’81年2月に登場。250を元にボアを10㎜拡大しVM26SSキャブ内部パーツ変更、フロントブレーキのダブルディスク化しホーンもダブル化など行った。
■SPECIFICATIONS:●水冷2ストピストンリードバルブ並列2気筒247〈347〉㏄(54.0〈64.0〉×54.0㎜) 圧縮比6.2:1 最高出力35〈45〉ps/8500rpm 最大トルク3.0〈3.8〉㎏f・m/8000rpm 変速機6段●全長×全幅×全高2080×740×1085㎜ 軸距1355〈1365〉㎜ 乾燥139〈143〉㎏ タンク16.5ℓ シート高790㎜ キャスター26度50分 トレール101㎜ タイヤ:3.00-18・3.50-18 ●価格35万4000〈40万8000〉円(’80年型RZ250。〈 〉は’81年型350のデータ)
1980 RZ250(4L3)
1981 RZ350(4UO)
1981 RZ250 YSP LIMITED
市販レーサーTZレプリカ路線で発展したビキニorフルカウル装着版
RZ250/350は1983年にビキニカウルを持ったRZ250R(29L)/350R(29K)に進化。エンジンは出力を43/55psに上げつつ、扱いやすい特性を狙い、排気デバイスYPVSや電子式CDIを新採用した。前後サスはリヤがリンク式モノクロスになり、フロントフォークもφ35㎜に大径化した上で位置依存式のバリアブルダンパーに。’84年にはハーフカウル仕様(アンダーカウルはOP)/45psRZ250RR(51L)とフルカウルでの350RR(52Y)を追加。350R/RRは250R/RRにフレーム補強を加えていた。WGPの350クラス廃止に合わせて、RZ350系はここで終了する。
■SPECIFICATIONS:●水冷2ストピストンリードバルブ並列2気筒247〈347〉㏄(54.0〈64.0〉×54.0㎜)圧縮比6.4〈6.1〉:1 最高出力43〈55〉ps/9500〈9000〉rpm 最大トルク3.4〈4.4〉㎏f・m/8000〈9000〉rpm 変速機6段●全長×全幅×全高2095×710×1170㎜ 軸距1385㎜乾重145㎏ 燃料タンク20ℓ シート高790㎜ キャスター26度30分 トレール99㎜ タイヤ:90/90-18・110/80-18 ●価格39万9000〈45万8000〉円(’83年型RZ250R。〈 〉は’83年型350Rのデータ)
1983 RZ250R(29L)
1983 RZ350R(29K)
1984 RZ250R(1AR)
1984 RZ250RR(51L)
1984 RZ350RR(52Y)
トラスフレームに初代TZR同系エンジンを積んだ新世代スポーツ
’90年6月に登場したR1-Z(3XC1)は鋼管トラスフレームや2.75-17/3.50-17ホイールにTZR250(1KT)のエンジンを組み合わせた新しい2ストネイキッド。TZRからは点火時期やミッション/2次減速レシオ、キャブ口径もφ28→26㎜にし排気系は左右→右2本出しに。’91年9月(3XC2)にはフレームピボット部やRアーム補強を行いRサスはドカルボン→ビルシュタイン型としφ38㎜フォークは減衰力を弱めた。シートも変更。その後’92年12月(3XC3)に電装系変更で40馬力自主規制に適合、タイヤをラジアル化。1999年まで販売された。
■SPECIFICATIONS:●水冷2ストクランクケースリードバルブ並列2気筒249㏄(56.4×50.0㎜) 圧縮比6.4:1最高出力45〈40ps/9500〈8500〉rpm 最大トルク3.7〈3.4〉㎏ f ・m/8500〈7500〉rpm 変速機6段●全長×全幅×全高2005×700×1040㎜ 軸距1380㎜ 乾燥重量133㎏ 燃料タンク16ℓ シート高775㎜ キャスター24度30分 トレール92㎜ タイヤ:110/70-17・140/70-17〈同サイズでラジアル〉 ●価格49万9000円(’90年型R1-Z。〈 〉は’93~年型のデータ)
1990 R1-Z(3XC1)
50度V4+アルミダブルクレードルフレームのYZR500レプリカ
1978~1980年のケニー・ロバーツ、’84年のエディ・ローソンらがWGP500王座獲得した際のヤマハファクトリーレーサー、YZR500。そのレプリカとして排気量も500㏄で登場したのがRZV500R(輸出名RD500LC)だった。50度挟角で2軸クランクのV4エンジンにはYZR同様に排気デバイスYPVS、これに連動し吐出量を変えるオイルポンプも装備。フレームはアルミダブルクレードル(輸出仕様はスチールフレームだった)で、リヤサスはショックを車体下に前後方向に寝かせたリンク式。ブレーキディスクはベンチレーテッドタイプとするなど、高級車の雰囲気も持たせた。
■SPECIFICATIONS:●水冷2ストピストンリードバルブ50度V型4気筒499㏄(56.4×50.0㎜) 圧縮比6.6:1最高出力64ps/8500rpm 最大トルク5.7㎏f・m/7500rpm 変速機6段●全長×全幅×全高2085×685×1145㎜ 軸距1375㎜ 乾燥重量173㎏ 燃料タンク22ℓ シート高780㎜ キャスター26度 トレール95㎜ タイヤ:120/80-16・130/80-18●価格82万5000円 ※’84年型RZV500Rのデータ
RZV500R(51L)
RD500LC(輸出車)