自分のバイクはどのくらい仕上がっているのか……。それを知るためには、自分より優れた技量のライダーに乗ってもらうのが一番である。そんなワケで今回は、かつては全日本ロードレースやスーパーモタード選手権などで数々の実績を残して来た、ナイトロンの中木さんによる僕のヤマハTZR250のインプレを紹介しよう。果たして僕のTZRの方向性は〇か×か?
前回紹介の通り、2018年8月5日のSUGO2ストミーティングに参加した僕は、ナイトロンジャパンの中木さんに、3年半に渡っていじり続けて来た、TZRの味見&セッティングをしてもらった。以前からご紹介の通り、僕のTZRはクオリティーワークスで面倒を見てもらっているのでマシンの出来に自信はあるけれど、僕が勝手にいじっている部分も多々あるので、不安がないわけではない。そんなTZRの中木さんの第一印象は、予想以上の好感触だった。
「ムチャクチャ面白いし、十分速いじゃないですか!! 普段の中村さんからは悩みや苦労話が多いので、もっと迷走しているかと思っていましたけど(笑)、エンジンも車体もよく出来ている。ただ、クラッチの重さは気になったし(その後にワイヤを交換して解決してマス)、現状ではファイナルがSUGOのコースに合っていない。肝心の前後サスに関しては方向性は今のままでいいと思いますが、1次旋回が少々物足りないことを考えると、車体姿勢をもう少し前下がりにして、それに合わせてダンパーを調整したいですね」
驚いたのはここからである。1本目の時点ですでに、中木さんはコース上で他車をバンバン抜いていたのだが、2本目の前に、フィイナルを14/46→14/44に変更し、フロントフォークの突き出しを5㎜増やし、さらに走行途中で何度かピットインしてダンパーをいじったら、なんと1分46秒415をマーク! しかも走行後の中木さんは「クリアラップが取れれば、45秒は切れますよ」と言うのだ。
SUGOの事情に詳しくない方に説明しておくと、’80年代中盤生まれの2スト250㏄で1分45秒は、速いと言って差し支えないタイム。市販レーサーだと’90〜’00年代前半の選手権では、数多くの市販レーサー、ヤマハTZ250やホンダRS250Rが1分30秒台で走っていたのだが、近年の2ストミーティングの’80年代以前クラスなら、45秒はトップ3圏内。と言っても、前述のタイムは中木さんの腕を抜きにして語れるものではない。
僕のベストは1分49秒413だったのだけれど、もっとSUGOを走り込めば、5秒前後は詰められそうな気もする。いずれにしても僕のTZRは思っていた以上に、高い戦闘力を備えていたのだが……。しかしそうなると、どうして主戦場のツクバでは、さほど良いタイムが出せないのだろう? 僕自身はコースレイアウトの問題じゃないかと思っている。ほとんどのコーナーを開け開けで走れるSUGOに対して、筑波は急減速&急加速の連続だからなあ。
もっとも急減速については、今季に導入したテクニクスのTASCとPEOのアクスルシャフトのおかげで、以前ほど苦手ではなくなった。今後は急加速できる特性を獲得するべく、キャブセッティングとファイナルを見直す予定だ。
SUGOでの模擬レース後に記念撮影。タイムは中木さんより3秒遅かったものの、2位でフィニッシュできたから、僕も中木さん(右)も満面の笑み。中木さんは'76年生まれの42歳。'00年代には鈴鹿8耐やマカオGPにも参戦した人だ。上のメインカットはもちろん、中木さんの走り!!
僕のTZRのフォークは3MA用で、インナーカートリッジはテクニクスのTASC。この機構を導入してから、コーナー進入時の安定感が劇的に向上した。'16年から愛用しているリヤショックは、ナイトロンR3シリーズ。バネレートは純正の9.4kg-mmよりかなり硬めとなる、13.4kg-mmを選択している。
SUGOを走った後に、クオリティーワークスで久しぶりにエンジン腰上を分解してみた。結果は例によって、シリンダーの内壁とピストンスカートともに、キズや妙なアタリは一切なし。すでに現在の仕様になってから、50時間くらいの全開走行をしているのに……。井上ボーリングのアルミめっきスリーブ、ICBMの性能、恐るべしである!!
ただしピストントップのカーボンは写真の通り多めだ。キャブのメインジェットは番手を見直すべきだろう。
シックネスゲージで、ピストンリングギャップを確認。ある程度の磨耗を想像していたのだが、トップもセカンドも基準値内(0.3〜0.45mm)だった。
せっかくだから...と、ついでにクランク+コンロッドのフレとガタを点検。こちらもすべて基準値内だった。
そのまま組み込むのは面白味に欠けるので、ピストンとピストンピン、新品に交換したリングには、クオリティーワークスが推奨しているWPC+モリブデンショットを施すことにしたのだ。