前回で報告の通り、5度目の参戦となった2017年11月のテイスト・オブ・ツクバで、僕はまずまず上出来と思える成果を挙げることができた。とはいえ、レース後にラップタイマーを確認した僕は、微妙な落胆を感じていたのである。その理由は至って単純。決勝中のタイムが奮わなかったから。予選ではコンスタントに1分8秒台をマークしていたのに、決勝中はほとんど9秒台……。何とも腑に落ちなかったのだが、TOTの約1週間後、クオリティーワークスの山下さんと共に、車載動画を見ながらの反省会を行った僕は、自らの至らなさを痛感することになったのだった。
実際の反省会は約1時間に及び、山下さんは膨大な量のアドバイスをくれたのだけれど、そのすべてを収録するスペースはないので、以下に要点を記そう。
まずは今回の最大の敗因、と僕が思っているスタートミスについて。スタートがもっと上手く決まっていれば、僕の順位はもう少し上だったような気がするのだが……。
「確かに、スタートでは少しフロントが浮いていますけど、ミスと言うほどではないですよ。問題はその後。1コーナー手前で、目前のライダーが早めのブレーキングをしているんですが、中村さんもそれに合わせて、ずいぶん手前で加速を止めている。右も左も空いているのに……。1ヘアピンとダンロップ、アジアコーナーも同じ。インに飛び込めるスペースが十分あるのに、やっぱり前走車に合わせて、ずいぶん手前でブレーキングしている。逆に言うなら1コーナーからアジアコーナーまでをもっと頑張っていれば、3〜4つは上に行けたでしょう」
続いては、決勝中のタイムに関する話。前を走るNSR勢に追いつくべく、僕的には果敢な走りをしたつもりだったのだけれど……。
「果敢と言えばそうかもしれませんが、決勝中は本来の走りがまったく出来ていないですね(笑)。これなら9秒台も当然。予選の動画と比べるとよく分かりますが、決勝中は走行ラインもブレーキングポイントもギヤチェンジのタイミングも、すべてがズレています。これも、前走のライダーを悪い意味で意識した結果。予選で8秒、練習で7秒台が出たことを思えば、本来の走りが出来ていたら、前の数台は確実に抜けたはずです」
山下さんの指摘&アドバイスを聞いている最中、僕の頭に浮かんだのは“経験不足”という言葉だった。2年半もサーキット通いを続けて、何を今さら……という気もするけれど、同レベルのライダーとのバトルという視点で見れば、僕にはまだまだ経験が足りない。改めて振り返ってみると、過去のTOTはほとんどが単独走行だったし。そんなわけで、2018年は他のレースにも積極的に参戦して、経験値を高めたいところである。
「それは僕も大賛成ですが、今後のテーマとして中村さんに意識してほしいのは“練習は本番のように、本番は練習のように”です。それを意識すれば、中村さんの走りは今後も進化すると思いますよ」
近年のTOT・ZERO4クラスでは、ホンダNSRが絶大な人気を誇っているけれど、2017年11月のKAGURA-DUKIステージを制したのは、今泉選手が駆るスズキRGV250Γ(ベストラップは1分2秒867)。このクラスでのΓの優勝は2008年以来のことだった。ちなみに、今泉選手のRGV250Γも含めて、最近のZERO4ではシングルディスクが流行中。山下さんの勧めで、僕のTZRがシングルディスクを導入したのは2016年末のことだから、流行を先取りしていたと言えなくもない。あとはライダーだな……。
クオリティーワークスの商談ルームには、40インチのモニターが設置されている。そしてこのモニターで車載動画を見ると、自分のライディングのダメさ加減が実によく分かるのだった。予選はそれなりにいい感じだったけれど。
僕のTZRは井上ボーリングのICBM、アルミめっきスリーブに換装している。ピストンは1KTの純正品だ。2017年4月に使い始めてから、30時間以上のサーキット走行をこなしているというのに、現状は右上の2枚の写真の通り。シリンダー内壁にもピストン側面にも、キズというべき要素はまったく見当たらず、製作時&新品時とほとんど変わらない姿を維持しているのだ。
TOT後に井上ボーリングを訪れて、同店の井上社長(奥)と小林さん(左)、そして山下さんとともに、各部の状況を点検しているところ。その際に持ち上がった話題が、パワーアップ=ポートの拡大を前提としたICBMの新規製作プロジェクトだ。
話題となったのは、2XT(上写真)のようにふたつの補助排気ポートを設置するか、NSR(下写真)のように排気ポートを巨大化して真ん中に柱を立てるのか。それぞれの美点と欠点を話し合った結果、とりあえず両者の折衷案を模索することになったのだ。その導入成果を確認したICBMで新たなステージに突入ということになる。こちらも逐次、経過を報告していこう。