ショップの本領たるV4ターボ・カスタム
ひと目で「ヤマハVMAX(2008年から’17年まで展開した1700cc版)をターボ化したんだな」と分かるこの車両。手がけたのはターボにもVMAXシリーズにも詳しいショップ、エスパーの小宮さんだ。それにしても大変な作業があったのでは?
「見えているインタークーラーもターボユニットもR35型GT-R(ニッサン)のものなんですね。それをほぼそのまま取り付けています。現状でエンジン本体は耐久性も考えてノーマルですからブースト0.5kg/cm2で250psあたり。NA(自然吸気)で大幅にトルクが乗った感じという特性で仕上がってます。取り付けとしては難しくなく、当店でもお勧めのメニューなんですよ」。小宮さんはこともなげに言う。
「車体まわりもほぼノーマルで、クラッチは強化していますけど過給でよくやるインジェクター追加などはしていません。タービンへの潤滑用オイルラインのリターンパイプは目立たないよう追加しています。サイレンサーがバンスアンドハインズなのは、元々スリップオンで付けていたものを生かしたいというお客さんのオーダーなんです」
そう言われて車両の左サイドを見てみると、右側同様といった感じで補機類が並んでいる。
「左右対称に見えるのもコンセプトなんです(笑)。ですから正面から見ると大迫力なんですが、対称でシンプルな感じにも見えていると思います。GT-R用タービンは6気筒の片側用で3気筒分のタコ足が一体化していますが、それを2気筒分使うという部分でも工夫しました。私としてはそんな部分や、配管をいかにきれいにするかが、苦労と言えば苦労かもしれません。
オーナーさんもVMAXに思い入れがあって、この仕様や特性もとても満足してもらってます。将来的にはピストンやコンロッドも変えてブーストを上げる計画もあります」
これもさらっと言ってのける小宮さん。凄さあり、実用面にも楽しさあり、さらに発展性ありというターボマックス、気になれば同店へ相談を。いい解答があるはずだ。
Detailed Description詳細説明
メーター部にはスクリーンを装着するとともにブースト計を追加。メーター右上のシフトライトはVMAXでは純正装備されるものだ。
着座位置からタンクカバー部を見たところ。このようにインタークーラー(過給気を冷やして充填効率を高める)が左右対称に並ぶのが分かる。
リヤブレーキペダルはペダル部面積を拡大して確実な操作を得る。ステップはノーマル位置ですぐ横を過給新気が通されているのだ。
65度挟角の1679ccV4エンジン左側。本体とFIは現状ノーマルで、R35型GT-Rのインタークーラー/IHI製タービンが左右対称配置される。シリンダーヘッド部で横向きに付けられたファンネルはダミーで、実際の過給新気はダミータンク部を通ってVバンク間のFIに入るレイアウト。
左側の過給部。下側の排気管からターボに入った排気によってタービンが回り、同軸のタービンでユニット前側(写真左側)から入った新気が過給されて車体前側のインタークーラー→エンジンVバンク間のスロットルボディ、エンジンへと流れていく。
現状でブースト圧0.5㎏/cm2で250ps(ノーマルは150ps/輸出仕様200ps)を発揮するV4エンジン。ピストンやコンロッド変更/インジェクター追加でブーストを上げれば650psまで行けるキャパシティを備えているとも小宮さん。クラッチも当然、強化されている。
ターボユニットの中央、ネットの張られる部分から新気が吸入されて過給、前側へ流れる。タービンにはオイルリターン経路を追加した。
3.50-18/6.00-18サイズのホイールやφ52mmのフロントフォークや6ピストンキャリパーなど足まわり、そしてフレーム等もノーマルのままだ。
ターボユニットにはバンス&ハインズのCSONEサイレンサーが接続されて左右出しとなるが、このサイレンサーはターボ化以前から装着されていたもの。エネルギーが過給に使われるため排気音は抑えられ、過給音自体も楽しめる。迫力を持たせながらもシンプルという好構成も持ち味だ。