公道カスタムへのフィードバックも考えて製作
スズキGSX1100Sカタナをどこまで速くできるか。この命題に挑んできたのが“なにわの刀鍛治”ことカスタムファクトリー刀鍛治の石井光久さんだ。石井さんはヨシムラGS1000Rに惚れ込んで以来、好きなカタナのチューニングを長年手がけてきた。いつかカタナで速いレーサーをという思いで、TOTではハーキュリーズクラスに、油冷エンジンを搭載した#34カタナを行方知基選手のライドで’14年から走らせている。ここで紹介するのは、2020年秋(「カタナマミレ」出展時。部分写真は2018年のもの)の姿だ。
まずフレームは、ダウンチューブとバックボーンの一部を1100カタナベースとし、現代GSX-S1000の17インチディメンションを落とし込んでスチールで製作。これは石井さんの一番得意な部分でもあった。エンジンは2バルブGS→4バルブカタナ→油冷というスズキ・フラッグシップの系譜をなぞるように、油冷GSX-RをベースとしてJEピストンで1277cc化。ほかハイチューンのいち到達点と言えるドラッグチューンのノウハウも織り込んで、極限と言える170ps超を発揮。車体側も現代ミドルクラスやリッタースーパースポーツ並みの190kgジャクで仕上げている。
そうしてカワサキ車全盛の中で車両は徐々に熟成され、’18年SATSUKI STAGEでは5位入賞。’19年にはSATSUKI STAGE/KAGURADUKI STAGEとも3位入賞(’20年は参戦せず)と、上位に安定して入賞するようになった。
石井さんはこのオリジナル・カタナに注ぎ込んだノウハウ=エンジンオーバーホールや加工、セッティング。フレームの修正や補強、もちろん修理に整備にカスタムといった部分を、ストリートにもフィードバックしてくれる。同店は’20年5月から、移転して広くなったファクトリーで活動中だから、オリジナルパーツも含めてカタナで頼みたいことがあれば、ぜひ相談してほしい。
Detailed Description詳細説明
フレームはバックボーン部やダウンチューブまわりがカタナで、全体の構成を現代化した。背面部は左右をつなぐプレートが複数入り、シートレール立ち上げ部や背面外/ループ内側にも補強や橋渡しプレートが入るとともに、補機類のマウントとしても活用されている。
油冷ベースのDOHC4気筒エンジンはベビーフェイス扱いのJE鍛造ピストンで1277cc化。コンロッドもキャリロH断面、ミッションも刀鍛冶扱いの6速が入る。点火はウオタニSP-2で吸気はFCRφ41mm、排気系は撮影時点ではJ-CUSTOM製4-1で、新作の構想もある。
エンジンはφ83mmのビッグボア化後ヘッドひずみに悩まされたものの、クランクケース~シリンダーヘッドをつなぐスタッドボルトのうち、両端でオイル通路を兼ねる部分の部分を廃し、オイルラインを外出しとする。170ps超を得ながら油温110℃で安定することが出来たという。
ステアリングステムはGSX-R1000対応品でフロントフォークはGSX-R用オーリンズFGR倒立。ノーマル同形状のカーボンナセル内に収められたメーターはイギリス・スキッシュ製(刀鍛治で取り扱い中。各車種用オーダー可能)だ。セパレートハンドルはベビーフェイス製をマウントする。
前後ホイールはアドバンテージ・イグザクトの3.50-17/6.00-17インチで、フロントブレーキまわりはブレンボCNCラジアルキャリパー+サンスターディスク。前後フェンダーはフロント/シートカウル/アンダーカウルともどもマジカルレーシング製カーボンを装着、軽量化にも貢献するものだ。
スイングアームはGSX-R1000K5用で、これににオーリンズTTXショック(前後ともS&Eプレシジョンがチューニングを担当)をセットする。