よく出来ているからこその維持で10年超
現代的な作りを持ったスズキのフラッグシップモデル、ハヤブサ。この車両は2008年型をベースに、同店のバージョンアップ・コンプリート(性能にもルックスにも上質さを備えたコンプリートカスタム車)として製作されたものだ。
スズキ/モトマップの正規販売店としてハヤブサを販売し、その整備やカスタム、コンプリート車製作も行ってきた同店の代表・杉本さんにハヤブサの素性を聞いてみると…。
「相当な速度域でも怖くないほどの安定性で、ツーリングに使っても快適な上、サーキット走行だって楽しめる。ハヤブサは、凄い性能なのに、ゆっくりも走れるし、それが全然苦にならない。凄いのに、あくまでも普通。普通というのは本当は一番難しいのだけど、そこをきちんと成立させたという凄さのあるバイク。当店では、2年ごとに変わってきたGSX-R1000と同じか、それ以上に販売しました。全年式の車両を販売して、エンジンが壊れるようなヘビートラブルもほぼなし。’07年までと’08年のモデルチェンジ以降でも、基本は同じ、正常進化というシリーズ。良く出来たまさに“旗艦”そのものです」と語ってくれる。
その凄さ、出来に何かをプラスするとしたらどうだろう。手を入れるポイントについては? という問いにはこう教えてくれる。
「元々が良く出来たいいバイクですから、普通に乗るのならまず消耗品の定期交換と整備。エンジンオイル、フィルター、プラグにタイヤ。タイヤはその都度新しい製品から選ぶ。ブレーキもパッド交換だけでなく、ホースやバンジョーが古くなってないか、キャリパーはちゃんと動くか。ドライブチェーンやスプロケットも見直していく。
当たり前のようですが、それだけ高い性能を持っているので、それを維持するためにはきちんと見ること。古い印象がないですけど初期型で20年、第2世代で10年超えてますから、そこは気を遣う。
あと軽量化はとても効くので、ここはお勧めしたい。鍛造のホイールやチタンマフラーなどです。フロントマスターをラジアル化すればコントロール性が上がりますし、リヤサスを換えるのも有効。リヤサスは軽量化した車体に合わせてセットアップするとなお良い」
この車両は、そんな杉本さんの言葉を形にした好例と言えそうだ。購入当時から軽量化やコントロール性といった部分を軸に手を入れ、その上で定期整備を行う。オーナーはとにかくよく乗る人で、高速走行やサーキット走行も高頻度。各部パーツも希望するものでより良い新型がある、消耗したというものはその都度交換している。車体側も、パーツそのものも常に100%の機能を発揮できるように、双方のリフレッシュを重ねてきた。
それで、12年経った今も写真のように作り立てのような状態を維持しているのだ。杉本さんのアドバイスをオーナー自らが妥協なしにパーツ選択から吟味、実践してきた実例というべき車両。今から手を入れるという向きにも、十分参考になる1台のはずだ。
Detailed Description詳細説明
ベースはいわゆる後期型初年度の2008年型。カウル類は高速走行で飛び石等を受けての傷付きが重なれば交換、つまり機能をリフレッシュしている。カーボントリム付きスクリーン、カーボンモノコックボディのミラーはともにマジカルレーシングだ。
削り出しトップブリッジや左右レバーはケイファクトリー製、ブレンボGPマスターシリンダーも装備して操作に集中できるコクピットまわり。
フューエルタンクはビーター製アルミ品に置換。これもカウル同様に途中で再塗装=リフレッシュされている。インナーカウルもカーボン製に交換済みだ。
純正のようなオレンジ×ブラックカラーは'08年型パターンでフルペイントしたもの。シングルシートカウルのハヤブサイラストも、購入初期に描かれたものだ。
フロントフォークはオーリンズFG R&Tで、ブレーキはブレンボGP4RRレーシングキャリパーにサンスター・レーシングパーツ、オメガディスクのワンオフ品を組み合わせる。なお、この車両は2020年夏に同店に入庫し、前後のオーリンズ製サスペンション(→ラボ・カロッツェリア)とブレンボ製ブレーキ(→ブレンボ・ジャパン)、マルケジーニ製ホイール(→ホイールテクノロジー)を、それぞれの扱い元(それぞれのカッコ内に表記)でオーバーホールを施した。それぞれの扱い元の質と扱い数を信用してフラットな目で見てもらい、パーツとしての新品性能を維持するという。
ライディングステップはケイファクトリー製。エンジンはヨシムラカムシャフト組み込みやピストン変更、ほかポート加工/ヘッド面研や内部パーツのWPC処理など、多岐に渡るチューニングが施されている。排気系はケイファクトリー・フルチタンをセットしてある。
リヤショックユニットはオーリンズTTXで、ホイールは現状でマルケジーニのマグネシウム鍛造品、M7Rの3.50-17/6.00-17サイズを履いている。製作初期状態からはマルケジーニ・アルミ→マグ→写真の新型マグ(M7R)と、その都度の最良のアイテムを選択しているそうだ。