徐々に進められていく進化も楽しんでいく
カスタムは、依頼者のオーダーを受けて手がける人の引き出し=考えの柔軟さや手法の多彩さ=によって、仕上がりが変わってくる。引き出しが多く、かつそれをどう有効に使ってくれるのか。このモトジャンキー製カタナを見ると、そんな考えに駆られてくる。
「“サーキット走行を前提にして、かつワインディングでもスーパースポーツ車とともに走れる”がコンセプトです。それで補強の材質や溶接にこだわって、縦と横の剛性バランスを考えながらフレームに手を入れて、峠道でも固すぎずにしなやかに走れるパーフェクトな仕上がりを目指しました。
結果的に19カ所を補強したんですが、狙いはうまく行ったようです。スーパースポーツと走るとどうしても立ち上がりで離されると言ってたオーナーさんが、この仕様は軽くなって、離されなくなったって言ってくれますし」と、モトジャンキー代表・中尾さん。
エンジンはワイセコピストンでの1134cc化以外はパーツ自体はカタナノーマル。ただポート加工や面研、各部重量合わせやバルブ高さ合わせ、燃焼室容積合わせといった作業をきっちり行うことで、先の立ち上がりフィールも改善させた。この合わせ込みはゆくゆくは長寿化にもつながることになる。
そのほかのパートでは足まわりがCB1300SF用改フロントフォークにオクムラMEチューン、リヤはオーリンズショック+OVERスイングアームでホイールはマルケジーニ・マグ18インチという仕様。モトジャンキーでは使用パーツや車体姿勢等をきっちりデータで残し、ディメンションからセットアップしていくので、以後改良できる点があればそれに沿った仕様変更にも対応してくれる。
この車両はまさにその使用変更を踏襲したもので、オーナーもそうして徐々に進むアップデートが楽しみになっているとのこと。
「ハーネスをすっきりさせてシンプルに仕立てるスカチューン的要素を組み込むのに手間がかかりました」と中尾さんは言うが、それも引き出しのひとつ。今後の進化も楽しみになるのだ。
Detailed Description詳細説明
タンク上エンブレムでも分かるようにベースは'90年型SM=アニバーサリー。前後18インチホイール仕様ということで、ステムはGSX-R1100を流用する。ハンドルはギルズツーリング製セパレート、フロントマスターシリンダーはブレンボレーシングφ19×18、クラッチ側はZETAレバーを使う。
ステップキットはクォーターワンオフ。スカチューン的要素を加えるためにバッテリーケースや電装マウントプレートもワンオフ製作している。
シートはスプリーム製でテールカウルはカーボン製を使う。モトジャンキーでは乗車姿勢まで考慮したセットアップも行ってくれるのだ。
1134cc化し、ポート加工/面研に各部重量や燃焼室容積、バルブ高さ合わせなどのチューニングが行われたエンジン。フレームは今回の進化でエンジン後ろ1カ所→19カ所オリジナル補強となったが、そのバランスの良さがスムーズなパワーも生かすことになったという。
キャブレターはFCRφ39mm、排気系はワイバン製エキパイ+クォーターのオリジナル・テールパイプ+ナイトロレーシング製サイレンサーという組み合わせ。
フロントフォークはCB1300SF改φ43mm+オクムラMEチューン、フロントブレーキはブレンボキャスト4ピストンキャリパー+モトジャンキー製ワンオフサポート。ディスクはサンスター・プレミアムディスクをディスクオフセットスペーサーを介してマウントしている。
スイングアームも以前のノーマルからOVER製に変更。リヤブレーキはブレンボ・カニキャリパー+STDディスク。2.75-18/4.50-18サイズのマルケジーニ・マグホイールとコンチネンタルタイヤは早い段階から履き、そこから割り出した車体姿勢に沿って手が入ってきたのだ。