必要に応じて進められる各パートの仕様変更
イエローボールカラーが施された外装やサイドカバーのZEPHYR1100ロゴから、カワサキ・ゼファーの最終年となる2006年型と分かる1100のカスタム。それら外装や、エキセントリックチェーンアジャスターを持ったスイングアームこそノーマルながら、前後サスペンションを初めとした大物機能パーツは換装され、秘めた戦闘力と言うか機能性と言うかが漂ってくる。
この車両を手がけたサンクチュアリー・アビリティの代表、菅原さんによればそれは当たりです、と。続けてこう説明してくれた。
「コンセプトとしてはその通りに、見た目はできるだけ控えめにする。ですけどオーナーさんはサーキットもガンガン走るという方なんです。そういう背景から、必要に応じて各部の仕様変更が進んでいる。そんな車両なんです」
見た目は控えめとは言うものの、車両の細部を見ていくと、他の車両と違うなと感じる点も多いことにも気がつく。例えばフロントフォークのアウターチューブ。重く締めるカラーのブラック系でなくあえてアルマイトの色をシルバーとする。リヤショックのリザーバータンクも同様で、こちらは本体がシルバーなのでリザーバーをブラックとする。これらによって車両の下回りを視覚的に軽くし、かつ前後で色味が揃うようにしている。
そうやって探していくとノーマルのスイングアームにはレーシングスタンドボスが追加されていたり、フレームからはピボットカバーが外されていたり。トルクロッドレスタイプとしたリヤキャリパーサポートもワンオフになっているが、ユーザーオーダーによるワンオフ加工はアビリティ/菅原さんの得意とするところだ。
フレームも1062ccのエンジンも撮影時点ではノーマルということだったが、エンジンはこの時点でチューニングの構想もあったから、今後の仕様変更も面白そうだ。変わるべきところは変える。ただ、一見そうだと分からないようにする。カスタムがブームの頃、つまりゼファー1100が発表された頃(1992年)には、そんな“能ある鷹は爪を隠す”的な流派もあった。それが最終型ゼファーに投影されている点にも、面白みが感じられる。
Detailed Description詳細説明
ヨシムラ・プログレスメーターを中央に追加したコクピット。左右マスターはブレンボ・ラジアルポンプでハンドルバーはプロトEFFEX。ステムはモリワキエンジニアリング製でフォークオフセットは40→35mmとなって、フロントの17インチ化に対応している。
ニーグリップパッドを追加した燃料タンクは2006年型ゼファー1100のノーマル。イエローボールのカラーリングも同様だ。また、シート/サイドカバー/テールカウル等の外装、タンデムベルトを配したシートとも、いずれも2006年型ゼファー1100ノーマルをそのまま使用している。
ステップキットはモリワキエンジニアリング製。ノーマルで装備されるアルミ鋳物のピボットカバーは外されている。
エンジンは撮影時点でノーマルだが、今後のチューニング予定がある。電装系はウオタニSP2を使用。オイルクーラーはラウンドタイプを装着した。
キャブレターはFCRφ39mmでキャップをブラック処理している。ファンネルはデュアルスタックで、内側にTGNインテークプロテクターもフィットしている。
フロントフォークはオーリンズ製だが、アウターチューブ/ボトムピースのアルマイト色を変更した。フロントキャリパーはブレンボのH-D用を流用。
ホイールはピトーR&DのMAGTAN JB3で、3.50-17/5.50-17サイズを履く。ブレンボ2ピストンキャリパーは、同店製作でワンオフサポートでマウント。オーリンズ製リヤショックもフロントに準じ、リザーバーのアルマイト色を変更。スイングアームはゼファー1100ノーマルにスタンド用ボスを追加している。
排気系のうちエキゾーストからテールパイプまではアサヒナレーシング製チタンを使用。これに原田消音器製のチタンサイレンサーを組み合わせる。