巧妙なパーツ選択に加えてそつのない作り込みも光る
903ccのカワサキZ1に対して746ccのZ2があったように、角型デザインに変わったZ1000Mk.Ⅱには、Z750FXがあった。そのFXをセパレートハンドル仕様ですっきりで仕立てたのが、このモトジャンキーによる1台。
手がけた同店・中尾さんは言う。
「XJRやBMW・S1000RRでサーキットを走るお客さんが、昔からの友達から譲り受けた車両で、街乗りで使いたいということで手を入れたものです。エンジンはカムシャフトを換えてほかはノーマルでメンテナンス重視、あとは車体をきっちり作り込んで、サーキットも走ろうと思えば問題なく走れるという仕様です。今は皆さん、排気量の大きいのに乗ってますからパワーとしては物足りなく感じるかもしれませんが、まとまりとしてはかなりいいと思います」
その車体はフレームを8カ所補強しPMC製ステムキットでPMC・KYBφ38mmフロントフォークをクランプして、18インチのPMCソードホイールを履く。リヤに目を移せば、知る人ぞ知るレアパーツとなったフルパイプ構成のショットガンタイプ・スイングアーム。
「イエローコーンのTOTレーサー(2008年頃)に付いてたのを見て、すっきりしてていいなと思ったんですけどもう扱ってなくて。それでクラスフォーさんにお願いしたんです」。
目の付け所もなかなかという感じで、細身スポークのホイールともマッチングが良い。メガホンエキゾーストもブルーサンダース製と、こう来るとパーツ選択までツボに入った感じさえしてきてしまう。
当のセパレートハンドルはオーナーの好みによるものだが、ここもバトルファクトリー製アルミバーにするだけでなくインナーに鉛を入れて振動防止にも気を遣い、ツーリングしても疲れ知らずの仕様としている。こうして全体を見てみると、かつて全日本GP250クラスチャンピオンのメカニックも務めた中尾さんらしい、細やかな配慮が行き届いた1台と言えそうだ。
「手前味噌ですが、普通に走って止まって曲がる、良い感じに仕上がっていると思います」とも中尾さん。普通に見てもすっきり、好き者が見れば垂涎。こんなナナハン、一度は持ってみたいものだ。
Detailed Description詳細説明
ステアリングステムはPMC製で、セパレートハンドルはバトルファクトリー製アルミ。その内部に振動防止用の鉛錘をセットする。FX自体、メーターが上気味に付くため、セパハンではそれが強調される。ブレンボ製マスターに合わせてクラッチ側はコーケン・メカニカルクラッチホルダーを装備する。
上面タックロールタイプのシートはノーマル。その他外装の仕立てはカラーリングも含めて、こちらもZ750FXのノーマルだ。
シート下もこの通りにすっきり。バッテリーは内部抵抗の少ないスパイラル極板のAZスパイロン、ケースはモトジャンキーによるオリジナル。
ステップはウッドストック製で逆シフト仕様とされるが、これはオーナーがサーキット車両に慣れているために作動を共通化したものという。
エンジンはZ750FXからカムを変更した程度で、あとはメンテナンス重視の仕様。フレームはあとからサーキットを走りたくなった場合にもすぐ対応出来るようにとあらかじめ8カ所を補強し、メタルコーティングランナーでRXコート仕上げされている。
キャブレターはCRスペシャル。排気系にはZ系に強いブルーサンダース製を選択するあたりからも、コアな感じがする1台と思える。
フロントフォークはPMC・KYBで純正のφ35mmからφ38mmにサイズアップ。フロントブレーキはブレンボ4ピストンキャリパー+サンスター・ネオクラシックディスクの組み合わせだ。
ホイールはPMCソード・ヘリテイジで純正サイズ19/18から前後18インチに。リヤブレーキはブレンボ2Pキャリパー+スピードショップイトウ製サポート&φ240mmディスクキット。ブレーキディスクを小径化することでリヤの効き過ぎを抑える選択で、当時と今での状況変化に対応する部分でもある。
リヤショックはオーリンズ・フルアジャスタブル。オールスチールパイプ構成の“ショットガンスイングアーム”はクラスフォーエンジニアリングに依頼したものだ。