
【CUSTOM MACHINE IMPRESSION】スズキフラッグシップのDNA! 45年の月日が流れてもブレない共通点は残される
RUNの作るカスタムはどれもオーダーメイドだ
僕が知っている限り、TG-RUNが『バージョンアップコンプリート』と呼ぶカスタムバイクの作り方は、少し変わっている。通常なら、オーナーによる「こうしたい、このパーツを付けたい」という相談からスタートするのだけれど、そこからすでに違うのだ。
「僕はまず、オーナーさんが普段どういう使い方をして、どういう走り方をしているのかを聞くようにしています。本音を言えば、一緒に走ってみたい。そうした中からどういうバイクがこの人に合っているのかを見極めたいんです」というのは同店の杉本卓弥代表。
現代のノーマルバイクはすこぶる完成度が高い、ともいう杉本さん。だからこそ、オーナーにとってのオンリーワンこそがカスタムでありチューニング。よくバイクの性能を五角形のレーダーチャートグラフで評価することがあるけれど、どこかの特徴を突出させずに、全体の面積を広げたいのだ。
今回、試乗させてもらったハヤブサは、ショップのデモ車であり、杉本さんの愛車。杉本さんの使い方はといえば、高速道路を使ったロングランと長期間のツーリング。夏には毎年のように北海道をツーリングする。そして峠もサーキットも、一般道の渋滞も走る。
「このハヤブサは僕の個人車であるのと同時に、お客さんに『こういうパーツの組み合わせでセットするとこういうバイクになる』ということを味わってもらう車両。ひと言で言えばスズキがハヤブサで目指したアルティメットスポーツを、さらに突き詰めた形です」
走り出すと、まず一般道をロースピードで乗るのに快適なセッティングを感じることができる。渋滞路、空いたバイパスなどを走ったけれど、1〜3速の3000回転なんてスピード域でトルクが取り出しやすく、スロットル開度に忠実に反応してくれる。その時のサスペンションがストロークするスピードも穏やかで、20㎏以上も軽量化された車体が軽やかに動く。
そのままワインディングに入ると、さっきまでの軽やかに動いた車体が、とたんに踏ん張りを見せはじめる。ワインディングを走ると、どうしてもスロットルオン&オフが激しくなって、荷重の前後移動も大きくなるのに、さっきまでのソフトなサスストロークが、明らかに減衰力を発揮し始める。使っているサスの、位置によっての動きが違うのだ。
冬のワインディング、コーナー脱出でスロットルの開け始めを早くしたり遅らせたりしてタイヤグリップやリヤサスの伸びを感じていると、リヤタイヤがスルッとスライドする局面もあったけれど、そこはハヤブサの持つトラクションコントロールがきれいにカバーしてくれている。なんて安心な!
渋滞路で快適にソフトに動いた車体がワインディングでは見違えるようにキビキビと走る。パワーの取り出しも、ワインディングではツキがシャープになったような錯覚さえ受けるのだ。
渋滞路を快適に走れるならサスはフワフワ、ワインディングでキビキビ走る車体ならば一般道でゴツゴツ……なんて動きがまるでない。これが五角形グラフの面積を均等に広げるチューニングなのか。
「長距離ツーリングもサーキットを走るのもラクで楽しいんです。特にオーリンズに替えた前後サスはポテンシャルの伸びしろがあって、なんにでも高次元に使えるGTというハヤブサの特性を際立たせる。それをスーパースポーツ的に振ってみても、車両全体のバランスが崩れないのがスゴい」
どんなライダーが、どんなステージを、どんなスピードで走っても受け止めてくれる。それがハヤブサでありスズキの頂点モデルというわけだ。ただしそれも的確な知識とパーツ選び、セッティング能力があってのこと。具体的に書けばサス以外にも操作系にブレーキまわり、タイヤ選択などなど、すべてのバランスを取り実現される。TG-RUNのハヤブサに乗り、改めてそれを感じさせられる。では40歳年上のカタナはどうか?
スペックこそ隔世の感も2車に共通する乗り味は?
ここに登場する1100カタナは筆者である僕の愛車だ。完全整備車として購入して、もう25年になる。乗り始めて20年目くらいのヤレ始めたタイミングで、オオノスピードで改めて整備とチューニングをしてもらった個体だ。
それまではほぼノーマル仕様だったカタナは、オオノスピードでバーハンドル化。ブレーキは現代の性能を持つローターとキャリパーに、サスペンションもオオノスピードが扱うアラゴスタを使う。
入庫時に同店の大野代表に僕が伝えたのは「この先も長く乗れるカタナにしてほしい」ってことだけで、あとはほぼお任せ。僕はこのカタナを、今はツーリングをメインに使っている。ワインディングは流す程度だし、カタナでサーキットなんか走りません(笑)。
僕はカタナの低回転域のフィーリングが大好きで、特に2〜3000回転でスロットルを開けて、ズオオオオオ、と加速する瞬間が特にお気に入り。それでいて、高速道路を走る時も、19インチというデカいフロントタイヤと、ハヤブサより40㎜も長いホイールベースのおかげか、ピタリと安定して走ることができる。同じスピードでのハヤブサの快適性とは雲泥の差があるけれど、120km/hで風と戦うのも嫌いじゃない。
1981年生まれのカタナが目指した世界は、当時の世界最速バイク。ヨーロッパをターゲットに生まれたモデルだから、高速道路の安定性こそが、当時のライバルたちと競っていた性能なのだ。現代のようにワインディングのハンドリングや快適性は二の次で、200km/hオーバーのアウトバーン走行を、いかに安全に快適に走れるか、を目指していたのだ。
けれど、カタナが生まれた頃よりも、現代はずっとタイヤもサスペンションも性能がよくなって、カタナの持つ絶対的な高速安定性をベースに、市街地でもワインディングでも快適に走れるバイクになった、と僕はそう考えている。
そして今回の試乗。200馬力の水冷4気筒、前後17インチで電子制御バリバリのハヤブサから、フロント19インチ、ノーマルエンジン&ノーマルキャブのカタナへの乗り換えは少し面食らうけれど、慣れるのに時間はかからない。
両者を比べるなんてナンセンスかもしれないけれど、同じ場所、同じタイミングで走り気づいたこともある。それはハヤブサもカタナも、フロントよりリヤタイヤを意識して曲がるバイクだってこと。
たとえばGSX-Rシリーズならば重要なのはフロントで、コーナー進入でしっかりブレーキをかけてフロントを沈ませて、バンクさせて内舵角をつけながら曲がっていくところを、カタナはブレーキングの頑張りはそこそこで、リヤタイヤがブレイクしないようにスロットルを開けて、逆操舵も意識しながら曲がる。1980年代のフロント19インチ/2本サスのバイクって多かれ少なかれ、こんなキャラクターのバイクは多かった。
けれど、ハヤブサをワインディングで走らせるときには、GSX-R的スーパースポーツの作法を採りブレーキングを頑張るよりも、脱出で加速していく乗り方をすると、安心でスムーズにコーナーを駆け抜けられる。
もちろん、ブレーキング→バンク→脱出のシャープさやスピードは隔世の感はあるけれど、カタナのハンドリングはハヤブサにも少しだけ受け継がれている……というのは、それほど無茶なコジツケでもないような気がするのだ。
つまり、ライダーを置き去りにしない高性能、これこそがハヤブサとカタナの大きな共通点なのだと思う。すなわちそれがスズキのレジェンドDNAでもあるのだ。
今回の取材にはテクニカルガレージRUNの杉本さん(左)にも自走で同行してもらった。同店のコンプリートスタムによるカタナ=HAGANEの製作でも知られる、カタナのスペシャリストでもあるのだ。
TG-RUN HAYABUSA
スズキが提唱する“アルティメット”を贅を尽くしながら最大限に引き出した
第3世代ハヤブサを基に、ノーマルエンジンにオーヴァーレーシングとの共同開発によるフルエキゾーストを組み、前後足まわりを大幅グレードアップ。ライディングポジションから見直してサスも入念にセットアップした。ライダーを選ばない乗り味も印象的な1台だ。
エアダクト付きカーボン製フレームカバーはマジカルレーシング製。真夏に熱を持つフレームの熱対策で、カウル内に熱がこもらないよう、エアダクトも備えている。マフラーはTG-RUNの提供するスペックでオーヴァーレーシングプロジェクツが製作した2本出しチタンフルEXだ。同コラボによるレース用の1本出しもある。
フロントはセットアップ幅の広さを考えたらこれ一択、と杉本さんが言うオーリンズ製フロントフォークとブレンボ製キャリパー+サンスター製ローターの組み合わせ。リヤもブレンボキャリパー&サンスターローター。前後ホイールはマルケジーニ製マグネシウム鍛造品だ。ハンドルまわりにはTG-RUN×OVERスポーツライディングハンドルキットを装着する。
TG-RUN×OVERライディングステップは純正を上回る操作性と剛性を持つ4ポジション可変式。フレームカバーと同じく、スクリーントリムもマジカルレーシングだ。そしてTG-RUNのハヤブサ用パーツの中でもヒット商品が最下段のスポーツ&コンフォートシートだ。クッションに張りがあり長時間の疲れも少ない。ブラックとツートンから選べる。
OHNO SPEED GSX1100S
オーナーの50歳オーバー記念に製作したノーマルベースの長く乗れるカタナ
1982年にデビューしたGSX1100Sカタナは大きなモデルチェンジなく、国内仕様は2000年まで生産された。この車両は1990年型の通称アニバーサリーを2000年に購入したもの。納車20年目となる2020年にオオノスピードでリフレッシュを施した、カスタムバイクというより完全整備車というべき車両だ。
エンジン、キャブレターともノーマル(1074㏄)のままブラック塗装仕上げした。クラッチはアドバンテージが販売するF.C.C.製を使用。マフラーは、2000年ごろのヨシムラ製機械曲げチタン+ステンレスサイレンサーだ。一度へこませてしまったが、同社のサイレンサーリメイクサービスで蘇らせることができた。
カタナに乗るならブレーキだけは絶対に現代のものにグレードアップすること、がオオノスピードの絶対信条。ブレンボ製キャリパー+サンスター・ローターは安心の組み合わせとして定番だろう。リヤサスはアラゴスタ製だ。同品は体重や使用用途に合わせ組み上げられるもの。体重80㎏、ツーリングメインでオーダーしたものだ。
カタナはカウル、スクリーンなどの絶版パーツもオオノスピードでリプロ品を購入可能。ハンドルは削り出し専用トップブリッジでバーハンドル化した。現在は樹脂パーツまでをほぼリプロ品で代替できるがタンクは存在せず、今や貴重品となっている。シートも張り替え済み。シート下には小物入れトレイを組んである。
【協力】
テクニカルガレージRUN TEL043-309-5189 〒260-0001千葉県千葉市中央区都町2丁目2-7 https://tg-run.com/
オオノスピード TEL043-227-9568 〒260-0006千葉県千葉市中央区道場北1-8-2 https://ohno-speed.com/
※本企画はHeritage&Legends 2026年3月号に掲載された記事を再編集したものです。
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