どんなスタイルでも長く乗りたいのは同じという視点も
ストリートを軸に置きながらもサーキットも走れるようなポテンシャルを作り込む“しゃぼん玉ストリートスペシャル”を展開するしゃぼん玉。ゼファー1100はその中軸のひとつで、かつてはさまざまなデモ車を創出してきた。そのデモ車群、ユーザーの多彩な車両群や扱いパーツの中で構築されたノウハウは今、“これから30年乗るゼファー”への手法として応用されている。そこでこの車両だが、見たことがあるという人も多いかと思う。元々は2015年の東京モーターサイクルショー出展に向けてしゃぼん玉本店でデモ車として作ったフルカスタムだった。
しゃぼん玉が“ゼファーの今の可能性を追うべく、ここまでに都度都度積み上げたノウハウを整理して投入した”とその製作当時に称したもので、車体側は前後17インチ化とそれに合わせたディメンションの設定。エンジンは1258ccへの排気量拡大やカム変更に2速ほか弱点とされたミッションのギヤ抜け対策を行う。電圧/電流強化にトリニティガレージナカガワHIR点火ユニットを使うなど、やっておきたいメニューを整理して一から組んだという車両だった。フレームもドライカーボンを表面に巻き付けるカーボンドライプロテック処理を行い、各パーツには色づけするという提案もされていた。
その車両を後に現オーナーの塩谷さんが購入して、サーキット走行も行うなどの自身の使い方を反映した手法=セパレートハンドル化や時代に応じたアップデート=スイングアームのプレスフォーミング化やマフラー変更、メーター変更等も加えた。当時既にしゃぼん玉の考えるゼファー1100像として積み上げられたカスタム/弱点対策ノウハウが盛り込まれたコンプリート。それを生かしつつサーキット等も走ってきた。製作後10年を経ながら色褪せることのない内容に、進化も加わっているという状態だ。カラーリングをはじめとして劣化らしい劣化は見られない。つまり、経年に耐えた見本とも考えていい。
こうした、いい状態を維持するにはゼファー1100の場合はどうしたらいいのだろう。
「ひとつは、きちんとエンジンオイル交換などを行っているものについて、“調子がいいならとりあえずは開けないでいい”です。距離との相談にもなりますけど、ゼファーにはZRXやGPZ-Rのような系列エンジンのパーツを使って対策する、載せ替えるということをする文化がありません。ひとつのエンジンで行く。だから極力そのままというか、異音が出たりしていないいい状態なら開けないでいいと判断して保たせる。
逆にバルブまわりを初めとして異音がする、クランクケースからオイルにじみがあってパッキン交換してもにじむなら開けて手を入れます。大ごとになるひとつ手前で見極めしたい。1年に1回くらいお店に入庫させて見てもらうのがいいと思います。
必要な純正パーツも減りましたけど、まれに再生産があったりもしたり、今ならまだ何とかレベルで手が打てます。オーバーホールを基本に、弱点対策も。初期型で言われた1/2速ギヤの抜けはファイナルでも出ますから、ここは気をつけて。ダメになってからだと大変なので、出る前にリスク予防でやるのがいいと思います」とは、しゃぼん玉 一宮店(TEL0586-75-5955 〒491-0834 愛知県一宮市島崎1丁目6-11)の店長、熊木さんの見方だ。頑丈だからいい調子なら生かす。逆に心配なら今手を入れてこれから長く乗ることに集中する。ほかにも提案はあって、ステップにはペダルからシフトを動かすリンクの位置や角度でシフトのストロークが出しにくくなるものがある点に注意して、しっかりとシフトできる製品を選び、入りやすいセットをしてやるなどだ。
「フルカスタムでもノーマルルック維持でも機能を高めることはポイントですから、そこは要望として(ショップに)出してもらうといいと思います。ゼファーももう20〜30年経つモデルです。そこを考えながら今後30年乗れるようにしておきたい。実際にノーマルもカスタムも、“オーバーホールはいつするといいですか”“長く乗りたいけど”等の問い合わせを受けることが増えました。今お話したようなことを元に、車両を見て作業することも多いです。
社外パーツはまだありますし、ワンオフも複雑なものも出来る時代です。その上で、同じパーツを組むにしてもきちんとした作動まで狙って、組み上げる。そんな、しゃぼん玉の仕事という“らしさ”もプラスしておきたいです」
もう30年、これから30年。いい状態で譲りたいという話も出るゼファーに、極力対応したい。ふと考えると、これは取締役の滝川さんがことあるごとに提示してきた内容。それが本店・一宮店と窓口の違いこそあれ、受け継がれている。この車両はその考えの実践例と言っていいのだ。
Detailed Description詳細説明
ウイング形状トップブリッジを持ったステムはオフセット35mm(純正は40mm)のしゃぼん玉ショートオフセットステムTYPE-1でハンドルは製作時のLOWバーからセパレートに変更。メーターは当時のホワイトパネルからスタックST-3802スピードメーター/同タコメーターST200に変更。しゃぼん玉ではこのような純正ケースへのスタックメーターインストールも行う。左右マスターはゲイルスピード・エラボレートをセットする。
燃料タンクは丸く成形され、フレークをまぶしたパープルをベースにフルペイント。今もこのように色褪せもなくよい状態を保つ。
シートはトゥーズカスタムで内部/外皮とも加工したコンプリート(今なら同社製スプリームシートと呼ぶもの)に換えた。
ステップはマッコイ。フレームはピボットカバーも含めてドライカーボン(カーボンプリプレグ)を対象表面に圧着成形するカーボンドライプロテック加工を施し、全体的な強度を高めつつ内部劣化も抑えた。
エンジンはモリワキφ80mmピストンで1258cc化(サイドカバーにも1258の文字が追加される)しヨシムラST-2カム&バルブスプリング組み込みにポート加工、ヘッド面研+モリワキガスケット、内部フルバランス等を行ったフルメニュー仕様。クラッチはカバーをスケルトン化しラウンドオイルクーラー上にはプラグクーラーダクトもセットする。プラズマブースターやプラズマVプラスでの電流/電圧強化、TGナカガワH.I.R.で点火を強化し、トータルパフォーマンスも高めている。その仕様が維持されている。
キャブレターはTMRφ38mm、組み合わされるマフラーはしゃぼん玉ストリートスペシャルエキゾースト・ウエルドチタンのレーシング加工品だ。
製作時にブルーのボトムケースだったオーリンズフォークはブラックボトムとなり、スクーデリアオクムラでME(マジカルエフェクト)チューニングされる。フロントブレーキはブレンボ・アキシャルCNC 4ピストンキャリパーにサンスター・プレミアムレーシングディスクの組み合わせ。
リヤブレーキはブレンボGP2-SS CNC 2Pリアキャリパーにサンスター・プレミアムレーシングディスクだ。
リヤのオーリンズ・レジェンド・ツインショックにもオクムラMEチューニングが施される。スイングアームは製作当初のものからアクティブ・プレスフォーミングスイングアームに変わった。ホイールはゲイルスピードTYPE-Cで3.50-17/6.00-17サイズを履かせ、タイヤはブリヂストンRS11の120/70ZR17・190/55ZR17サイズを組み合わせる。








