ユーザーそれぞれに合わせた内容のコンプリート
油冷モデルは今、どう楽しむといいのだろうか。そう考えたときに参考になるのが、油冷に強いショップの仕立てるコンプリートカスタムや、その各部に施された手法と言っていいだろう。そこでこの車両だが、テクニカルガレージ゙RUNによる“ヴァージョンアップコンプリート”のひとつ。同店はスズキの正規販売店として多くの油冷モデルを新車で販売し整備し、中古車両も扱い、ツクバサーキットでのTOF/TOTにも参戦。2001年のTOFスペシャルラウンドに投入され’08年TOTまで走ったTG-RUN GS1200SSレーサーは、’06年11月27日に59秒837のコースレコード(当時/江口 謙選手)を記録した。これは油冷エンジン&2本サスの車両で初の筑波59秒台で、そうしたハイレベルチューニングのノウハウも持っている。
そんなチューニング、そしてもう生産終了から20年が経つ油冷モデルの経年劣化への対策。また変わりゆく交通事情等に合わせての必要要素=確実な制動性能やコントロール性、安全性の取り込みが、TG-RUNの油冷カスタム、そしてヴァージョンアップコンプリートに反映されるというわけだ。
機能も含めた各部の上質化を図るこのコンプリートは現行車両でも作られる一方で、油冷各車のような古いモデルをベースにするケースもある。この車両はその後者の例で、’88年型GSX-R1100J(純正は前後18インチ)を元に前後17インチ化を軸にした足まわり/操作系の現代化を行っている。ホイールやチタンエキゾースト、アルミの燃料タンクにTG-RUNオリジナルシングルシート等での軽量化。前後サスのオーリンズ化や左右マスター/ブレーキキャリパーのブレンボ化などで操作性と制動性などを向上/上質化し、キャブレターのFCR化も加える。これから油冷車をさらに楽しむための換装が行われているというわけだ。もちろんそれだけでなく、同店・杉本さんが細かいフォロー等で判断してくれるオーナーの使い方に合わせたセットアップも特徴になる。
その上でこの車両(外装は’88GSX-R1100J純正ブラックで再塗装される)では、フレームに今後の劣化を抑えるブラックアルマイトも加えたフルブラック仕様として見た目の統一感も加えた。17インチで現代を走る仕様としているが、純正同径の18インチ仕様でも基本は同じ。今から油冷を楽しむためのヒントとして、留め置いてほしい1台だ。
Detailed Description詳細説明

左右マスターシリンダーはブレンボ・レーシングに換装。まずここでTG-RUNで推奨するブレンボマスターのコントロール性とタッチを体感してもらい、もっと良くと考えたときにキャリパーやディスクも換えるという方策を採っている。

フロントブレーキおよびクラッチのマスターシリンダーはブレンボ・レーシングで、レバーはケイファクトリーのフォールディングタイプに換装した。

燃料タンクは錆びずに軽いTG-RUN×ビーター アルミフューエルタンクでGSX-R1100J純正ブラックで塗装している。

シングルシートはTG-RUN シートカウルボルトオンKIT のダクト穴なしを使い、これもGSX-R1100J純正色のブラックで仕上げたものだ。

ステップはTG-RUNバリアブルステップで、フレーム同様にブラックアルマイト仕上げしている。

エンジンは1052ccの'88GSX-R1100JノーマルでカムのみヨシムラST-1に変更している。油冷エンジンは今ストリートで使うなら耐久性も考えてやり過ぎない適度な仕様を狙うべきで、良いオイルを使うこと(定期的な交換も)やタペット調整も重要とのことだ。

キャブレターはFCRφ37mm、フレームは表面を保護するためブラックアルマイト処理される。

フロントフォークはオーリンズφ43mm、フロントブレーキはブレンボ・アキシャルCNC 4Pキャリパー+TG-RUN&サンスター・プレミアムレーシングディスクの組み合わせ。

スイングアームもR1100J純正をブラックアルマイト処理。リンクはTG-RUN車高調整式を組み込んだ。
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リヤブレーキはブレンボGP2-SS CNC 2Pリアキャリパーにサンスター・プレミアムレーシングディスク。排気系はケイファクトリーの4-2-1チタン。リヤショックもオーリンズで、ホイールはマルケジーニ・アルミ鍛造のM7RS Genesiで前後17インチ化(2.75-18/4.50-18→3.50-17/5.50-17)し、最新のスポーツタイヤ(ここではブリヂストンS23)を履いて路面からの情報を豊富にしている。