レストアとカスタムを平行で進めるという手法を適用
飯田レーシングファクトリー代表の飯田さんはバイク業界内でのショップとしての、自らのGS1200SSで油冷車の、それぞれのノウハウを積み上げてきた。一般整備からカスタム、オリジナルパーツにと進んできた手腕は、入庫してくる車両にもしっかり生かされ、その適用幅も広い。この前期型GSX-R1100もその振り幅の参考になる1台だ。
ベースは’88年型Jで、その純正色のブラックを元にしながらエッジとアクセントが効いたラインの入った個性的な外観にも目が行くが、内容はストレートで充実したものだ。
「オーナーさんとは長い付き合いがあって、オーナーさんはGS1200SSに乗ってらしたのを売却して、この車両を手に入れたんです。それが25年不動というものだったので、各部を確認、レストアをしながらカスタムするという手法で仕立てています。外装のブラックはオーナーさんが自家塗装して、ピンストライプはビートンさん(https://www.nijiiroya.com/)が入れています」
今でこそ加速する油冷モデルの純正パーツ廃番。不動からの再生には電装、中でもハーネスがないことが一番困った。
「25年不動でしたので、すべて分解して手を入れないとダメでした。ハーネスもそうで、ちょうど純正のメーカーストック分が終了すると以前のような再生産はしなくなるという時期に入ってたんです。ただこの車両ではちょうど純正最後のひとつと思われるものを手に入れることができました。
それ以外だとフレーム。腐食してアルミ地に白い粉が噴いている。磨いてもクリア仕上げするにも腐食が取り切れないで浮き上がって見えてくるので、いったんきれいにした上でブラックで仕上げることにしました」
外装やホイール、スイングアーム等もブラックでまとめ、統一感も出す。こうしてレストアをしながらカスタムも施していく。
「ノーマルの18インチの良さを生かしながらアップデートする感じです。ホイールはアルミ鍛造のゲイルスピードType-Nのグロスブラック、スイングアームとフロントフォークのボトムケースはパウダーコートブラック仕上げ。フォーク自体は純正φ41mmでインナーチューブをチタンコートして内部は調整しています」
ブレンボマスター&キャリパーにサンスターディスク(この車両はプレミアムレーシングディスク)は飯田レーシングファクトリーの定石通り、信頼性のある組み合わせとして適用。1052ccのエンジンはカムこそどんな風に特性が変わるか知りたいというオーナーの興味本位によって変更しているが、ノーマルベースで再生。ただキャブレターは前述したような経年の影響が深刻さを招くことも想像され、TMR-MJNへの換装を選択した。GSF1200用流用と言うが、このあたりの判断も実績によるもので、参考になる。
全体として純正18インチGSX-Rの良さをホイール換装などの軽量化や制動力/コントロール性向上で高めたものである一方、このようなレストア&カスタムという車両、ベース車が経年でマイナスになった部分をまずゼロに戻し、上乗せを行うと取っていい。今後増えそうなケースを先取りしたとも言えるのだ。
Detailed Description詳細説明

外装は純正ベースでミラーは純正、スクリーンはMRAスモークスクリーン。全体はオーナーが自家塗装し、ピンストライプや文字は虹色屋のビートンさんが入れている。

ハンドルは純正セパレート、一見純正に見えるメーターは中央のエンジン回転計がスタックST200にあえて交換され、ヨシムラPRO-GRESS2マルチテンプメーターを追加などさりげないアップデートも行ってある。

フロントマスターシリンダーは同店お勧めのブレンボでRCSを選択し、クラッチ側もブレンボRCSとして合わせる。スロットルホルダーはヨシムラYRスロットルホルダーセットだ。

燃料タンク/シート等も'88GSX-R1100純正。フレームは今後の劣化を予防する意味でブラックペイント処理される。

エンジンはφ76×58mm/1052ccの純正スペックだが各部チェック、25年の不動から再生した。変化への興味からヨシムラST-1カムが組まれ、ハーネスは純正新品に交換し、点火系にはウオタニSP-2をセットした。

キャブレターはGSF1200用のヨシムラTMR-MJNφ40mmサイドリンクを転用しファンネル+ネット仕様で装着する。

ステップはアグラス製を使う。手前に見えるオイルキャッチタンクは飯田レーシングファクトリーオリジナルだ。配管や配線類もブラックとして統一感を強めている。

フロントフォークは純正φ41mmを再生するとともにインナーチューブにチタンコートを施してセッティング。アウターチューブはブラックでパウダーコート仕上げした。フロントブレーキはブレンボ・アキシャル4Pキャリパー+TG-RUNキャリパーサポート+サンスター・プレミアムレーシングディスクφ310だ。

排気系はヨシムラ機械曲げステンレスEX+ワンオフテールパイプ+マーベリック・カーボンサイレンサー。リヤブレーキはブレンボP2 32 2PリアキャリパーをKEINZサポートでセットしサンスターφ220ディスクに合わせる。

リヤサスはオーリンズSU635にパウダーコートでブラック仕上げした純正スイングアームを組み合わせる。ドライブチェーンはRK 520XXW。ホイールはゲイルスピードTYPE-Nの3.00-18/4.50-18サイズだ。