
モータースポーツの現場で生み出された逸品に注目! m-tech製クロモリシャフトが実現する走りとは?!・m-tech(エムテック)
レースの現場で磨かれた 高質なクロモリシャフト
「はっきりと言ってしまえば純正シャフトを市販のクロモリ製に置き換えるだけで素材の硬度・剛性が変わり、ライダーはその差を感じられます。ただし、大事なのはその先。いかに精密な寸法で作り、平滑性を保つ処理ができるかで、ライダーへのインフォメーションは変わっていくんですよ」と、エムテック代表の松本圭司さん。
▲今夏の鈴鹿8耐、S-PULSE DREAM RACINGのピットで指揮を執るm-techの松本圭司さん(左)。
松本さんは自身もライダーとして参加することからレースに関わり始め、19歳の時からはメカニックの道へ。親交のある生形秀之(おがたひでゆき)選手の主宰する、エスパルスドリームレーシングでは’17-’19年の鈴鹿8耐でも腕を奮った。そして今夏の8耐ではその生形選手の引退レースを飾ろうと、テクニカルディレクターも買って出た人。クロモリシャフトに興味を持ち実戦に投入したのは’00年、当時所属したエイミングスポーツ(故・前田 淳氏主宰)での8耐参戦時だったと振り返る。
▲今夏の鈴鹿8耐、S-PULSE DREAM RACINGの生形秀之選手+GSX-R1000R。この8耐は生形選手のレース人生に区切りをつける引退レースだった。
「当時はクロモリシャフトなんて売られていませんでしたから、データを採りながらワンオフ製作しました。’12〜’15年に、当時の全日本に生形選手と参戦して実戦投入していた時もそうです。今、エムテックで一般に販売するクロモリシャフトは、そうした長い間に収集したデータと培ったノウハウをフィードバックして製作しています。もちろん国産品です」(同)
松本さんによるお客さん向けの、クロモリシャフトの効果説明の言葉を借りれば、まずクロモリ製への素材置換で締結剛性が高くなり、フロントシャフトなら舵角の切れに変化が出るからライダーも変化を受け取りやすく、ピボットシャフトは高速道路でのレーンチェンジなどでクイックさが増して効果が感じられる。そしてリヤシャフトでは、ここはスイングアームの剛性にもよるがねじれ防止の効果も加わる。これらの効果を通して、クロモリシャフトによりバイクの運動性能が底上げされたことが体感できるのだという。
▲今夏の鈴鹿8耐・決勝レースは転倒による修復のため、長時間のピットストップを余儀なくされ周回は157周。残念ながら完走は認められなかったが、これもレースと松本さん。写真はゴール時。生形秀之、ジョナス・フォルガー両選手。
「ウチが市販品に使うシャフトの素材はSCM435で、レース用にはさらに高強度で靱性のあるものを使います。設計・製造も、純正シャフトをコピーするのではなく、精密な削り出しと円筒研磨はもちろん肉厚配分など各部の数値を適正化。真円性と異径部分の同軸性も大事なファクターと考えます。
さらに表面にはめっきより硬度が高く平滑性が出せ、耐焼き付き性、耐蝕性に優れ、摺動性も向上するSQP処理を施しています。それだけの作業が必要なほど、クロモリシャフトは緻密に作り込むべきパーツなんです」(同)
製品ラインナップはホームページで確認されたいが、スズキ車以外も年代を問わず、ワンオフ製作にも対応してくれる。走りをブラッシュアップする『本物』は、エムテックで手に入る。
突き詰めた剛性と精度をストリートにもフィードバック!
SQP処理前のシャフト。市販シャフト用素材のSCM435鋼は強度、靭性、耐摩耗性に優れ、耐熱性も高い、いわゆるクロモリ鋼。
シャフトは外面の円筒研磨はもちろん内部肉抜き時のシャフト異径部分への同軸性、各部肉厚も独自データで管理・製作される。
各部寸法を適正化することでフォークやフレーム、スイングアームとの嵌合精度を高め、シャフトの置換効果を高められる。
最新のラインナップ。写真左の2本はフロントシャフトでMTS-007(写真手前・’11〜GSX-R600/750、’16〜GSX-S1000、’17〜GSX-S750、’19〜KATANA適合)とMTS-002(奥・’90〜’94GSX-R750 L/M/WN/WP/WR、’90〜’94GSX-R1100 L/M/N/WP)。右の3本は初期油冷GSX-R用で手前からフロントシャフトMTS-010(’87GSX-R750H、’87-’88GSX-R1100 H/J)、中はピボットシャフトMTS-209(’86-’88GSX-R1100 G/H/J)、奥がシャフト(’86-’88GSX-R1100 G/H/J)。価格はいずれも5万8300円/1本だ。
0.001秒を争うトップレースではちょっとしたキズや曲がりが命取りと分かる見本を見せてもらった
m-techがクロモリシャフトに許容する製品公差は0.01〜0.02㎜。写真の3本は過去のレースで転倒した車両から抜き出したレース用シャフトで、当然のように新品に取り換えられた。モータースポーツの世界ではシャフトはそれほどナーバスなものなのだ。
【協力】m-tech(エムテック) TEL075-932-6677 〒612-8486京都市伏見区羽束師古川町174-3 https://www.mc-m-tech.com/
※本企画はHeritage&Legends 2025年10月号に掲載された記事を再編集したものです。
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