
よく走る、楽しく走るを作業やパーツに反映してCB-Fに長く乗ってもらう・安田商会
“長く乗る”を広い視点で捉えた18インチ仕様車
純正からカスタム、パーツそれぞれにまで。そしてサーキットから街乗りまでと幅広い視点をもってCB-Fに向かい合う安田商会。今回紹介してくれた2台の車両からは、今CB-Fの大きなテーマ“長く乗る”への対応が分かってきそうだ。 まずは、一台目の車両だ。カラーからも分かるように、CB750FCがベースとなっている。
「元々は18インチのダイマグホイールを履いてかつてのカスタム的だったんですけどアクシデントに遭って、オーナーさんが乗れるようになったから直そうとなって改めて起こしていったんです」
▲CB-Fにいろいろなアイデアを適用し、多くの車両の面倒を見てきた安田商会/安田昭男さん。FRP製燃料タンクや上の新作パーツほか、パーツも用意する。
安田商会・安田さんは言う。17インチ仕様も考えられたが、その着地点は少し違う方に進んだ。
「オーナーさんは50歳超えたこともあって、長く乗れる、あえてノーマルに近いイメージで作ろうとなりました。それでもし中古として販売しても次のオーナーも長く乗れる。そんな、10年以上先も古くなってない仕様やデザインで行けるようにしようとなりました」
ベースになるフレームにレーザー測定して修正と補強を行い、18インチでマグホイールをまず軸に据えると、今までオーナーの好みで使っていたというBITO R&D(JB)製マフラーに合わせてJBマグタンを選択。スイングアームもJBセミオーダー、ステップもJBという具合いにブランドを極力揃えた上で、ない部分は安田商会で選択してまとめる。
足まわりはリヤのオーリンズショック再使用にあたってスクーデリアオクムラでオーバーホールとチューニング、フロントも750FCの国内仕様に同じφ39mmのCB900FC用とした上でスクーデリアオクムラでカートリッジ化して「見た目通りの昔のでなく、今の動きのいいものにしてます」と安田さん。これは面白い試みだ。
合わせてステムにはジェイズのショートオフセット仕様(純正45mmから35mmくらいに、とのこと)したものを装着して18インチで軽快に走る状態を作る。ブレーキ系も元から使っていたブレンボキャリパー&サンスターディスクは不足なく、そのまま使えた。ただしマスターはラジアル化してと、アップグレードは行われる。
▲ルックスにも内容にも 長く乗るを細かく落とし 込んだ18インチエフとも言える安田商会のCB750F。各部の詳細はこちらのザ・グッドルッキンバイクページをチェック!
「あえて派手さは抑えてみました」と安田さんは言うが、その派手方向に向かいそうな予算や手法をきちんと内容の方に向けているのは好ましいし、飽きないという要素も込みで工夫したとも分かる。
これに組み合わさるエンジンは、ワイセコφ65mmピストンによる823cc仕様。過去にもオーバーホールしたことがあり、今回は悪くなっていたであろう箇所の補修と消耗品の交換を行い、在庫していたヨシムラST-1カムを組んだ。電気系も一新し、ここでもあえて純正風に見える小ぶりのアクティブ・オイルクーラーを選択と、前述のように派手さを抑えながら、その細かい手の入り具合がルックスににじみ出るような印象を得た。
安田さんは「17インチカスタム主体の中で、18インチで高級感を持たせるように作りました。足まわりはしなやかにして、サーキットは想定せず峠から街乗り、普通出会うようなところはしっかり走れる。それでポジションとセッティングは私に合わせました(笑)。オーナーさんにもすぐ合わせられるし、もし売りに出したいと言われたら自分が買って乗りたい、そんな仕立てです」
安田さん自身ももう30年近くCB750FCに乗り、いろんな仕様を試してきた。その中で気に入り、これなら長く乗れると考えた仕様の反映というわけだ。
定番の17インチ仕様にもひと工夫や新たな試みを
もう1台はFCインテグラを元にした17インチ仕様。ちょうど車検で入庫しフルメンテナンスを受けていたが、もう10年くらい前に作っていた車両だという。
エンジンは823cc仕様、これは750Fでの仮上限かつ元気ある仕様とのこと。これ以上のボア拡大はスリーブ打ち替えやケースボア拡大等の作業が必要になり、スリーブ厚もかなり薄くなる。
足まわりはXJR1200の加工流用で、安田商会では定番となっている。無理が少なくコンバートでき、製作後の乗り味もいい。その上で同店ではこのフロントフォークを使うためのオリジナルのステムキットも用意し、同じXJRでも細部の異なる1300用のスイングアームを使うノウハウもブログ等で見せてきた。その上で、この車両ではいくつかの変化もある。
▲既に10年前に17インチ化し長く 乗り続けてきた上で新しい試みも行うCB750F INTEGRA。各部の詳細はこちらのザ・グッドルッキンバイクページをチェック!
「スイングアームは加工していて、短くするとどうなるかを試しています。全体はちょっとコンパクトでテールアップして見えるようになってますが、足着きは変わらない。ショックのレイダウン分で上がるはずが変わらないんです。
ショックは角度を試しています。ショックが立っていると低速時に動いてなくて突き上げがあるし、トラクションがかかりにくい。純正ではタンデムや荷物を積んだときに初めて動く、性能が出るので、立っていることは意味がある。
でもショックはタンデムステップ近くでなくお尻の下近くから押したいんですね。新しく作り直したレイダウンキットでその位置とショックの角度の定番を探してます。純正サスの角度できちんと動かせる」
定番で不安はなくても、より良い定番に進化させることができる。製作して10年を乗り切っている車両でポジもネガも見えている(しかも長く乗れている車両だ)から次のステージが見えているということだろう。安田さんはほかにも、ヤマハのパフォーマンスダンパーをあえて見えるように/ノーマル車にさりげなく見せないようにというふたつのマウント方法を試してみたり、先述の純正φ39mmフォークにカスタムであって実用性も備えるステムを考えたりしている。
750F用のピストンも現状の823cc(φ65mm)と、要加工のφ67・5mmの間のφ66mmへの構想を立てる。これらは要望があって数がまとまればの話になるから、希望があれば問い合わせを。ほかにもミッションや各ギヤ、シフトフォークの構想と、これからもっと長くCB-Fに乗るためのパーツにも考えを及ばせている。
安田さんのCB-F履歴から 次々出てくるアイデア。実験からもいい結果を引き出し、新しい定番になれば多くのFが延命でき、気軽に楽しめるようになるだろう。
不安を減らしながらきちんと走る 17インチ仕様を作る新作パーツ
CB-Fらしさを生かしたまま17インチ化し、そこで起こりがちなネガを抑える。そんな点に配慮しながらデータを集め、作られた安田商会の新作パーツ。なるほどと思える仕様にぜひ注目を。
新作のCB-Fワイドスイングアーム用レイダウンキット(4万1800円)。フレーム側を加工せずにショックをレイダウンするとともに、アッパーマウントの径がCB-F純正のφ16㎜だけでなく他社のφ14㎜も使えるようにしてショック長の選択肢を増やす。取付幅も広げて5.50~6.00幅のリヤホイールにも合う。純正ショックマウントに取り付けてフレーム前側は補助支えし、ショックマウント部同士は左右をつなげてねじれ等にも対応する。ブラックでシルバーはオプション。
安田商会の人気商品のひとつ、オリジナルステムキット。CB-Fを前後17インチにするときに使いやすい、XJR1200用φ43㎜フロントフォークをマウントできるもので、オフセットは純正45㎜に対して32㎜。CB-F純正メーターのマウントステー、またCB-F純正ヘッドライトステーが使えつつヘッドライトが少しだけ前に出るアダプターも付属する。価格は19万5800円(今後変わる可能性もあり)。
安田商会によるCB750Fの17インチカスタム例。どちらも上の安田商会オリジナルステムキットとXJR1200純正φ43㎜フォーク/アルミスイングアームを使って仕立てられている。上車両はCB750Fエンジンノーマルのオイル漏れを直して組み直し、下車両はもう20年前にCB1100Fエンジンを1123㏄化した上で乗り続けられている
【協力】安田商会 TEL0587-36-9555 〒492-8447愛知県稲沢市野崎町北出6-1 https://www.tebasakirider.com
※本企画はHeritage&Legends 2025年7月号に掲載された記事を再編集したものです。
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