製作車両のトラブルを直して今後へのプラスも込める
純正同様の前後18インチ&ゴールドホイールをアルミ鍛造で置き換え、全体にスマートなイメージも追加したCB1100RC。各種車両を扱いつつもCB-F/Rに多くの作業メニューやパーツを用意するTTRモータースによるものだ。最近製作した車両とも言えるのだが、背景が少し異なっていた。TTR・林さんに聞いていこう。
「この車両は元々オーナーさんがノーマルで乗っていらしたんです。それが当店がTOTモンスタークラスにCB1100Rを走らせた(’15年)時に“同じ仕様の足まわりを作ってほしい”と依頼されて、その仕様で組んだものでした。それでしばらく乗っていらしたんですが、昨年シリンダーからのオイル漏れが見つかったんです。ではオーバーホールしましょうとなって、作業に必要なパーツも集めて。
フルオーバーホールでエンジンを下ろしますから、合わせてフレームも今後乗るためにと全バラした上で元の塗装も剥がした上で状態確認し、改めてパウダーコートで塗り直ししたんです」
もう足まわりを作ってからだけでも10年近く経っていたわけで、その時に内部不明だったエンジンのオーバーホールタイミングをこのオイル漏れ解決に合わせるのは当然。またこの10年の間にTTRが自店の作業メニューに加えた機能的な作業(塗装はその主なもので、放熱と耐傷性を高めるガンコートなどがある)をプラスすれば、以後長く乗る要素も強められる。以前にも林さんはエンジンが下りるタイミングでフレームを塗るのがいいと教えてくれたが、今回はその実例になったわけだ。
下ろしたエンジンはすべてバラしながら各部をチェックした。
「シリンダーからのオイル漏れでしたから、シリンダーヘッドのゆがみやシリンダースタッドボルト隙間の詰まり(一部ボルトにあるシリンダーとの隙間はオイル通路でもある)が原因に考えられるのですが、ヘッドは左右対称でゆがみなしでしたし、スタッドボルトのネジ山も大丈夫そうでした。
ただ、エンジンに開けて組み直した形跡が見られたんです。スタッドボルトがきちんと奥まで入っていなかった。クランクメタルも1100用でなくて750用が入っていました。これ(スタッドボルトの締めが緩かったこと)が原因と分かりましたので、改めて当店のRECS(キャブレター/エンジンパーツの清掃システム。一般的なブラスト等よりも短時間で作業でき、清掃に使う粒子が後残りしない)で清掃し、再組み立てしました。
ピストンは0.25mmオーバーサイズ品を組んで、吸排気バルブも入れ替えました。純正ではないんですけど、社外品で使えるものがあるのでそれを使っています。外観もガンコートで仕上げました」
リフレッシュされたエンジンが同じくリフレッシュされたフレームにドッキングされる。それだけでなく、ともに今後長く仕上がり状態を維持できる外観塗装も施されている。足まわりは冒頭のように既に構築されたものだが、これもメンテナンスをきっちり施すことでこれからも使える状態にあるし、必要に応じてオーバーホールするという手段も考えていい。
「今回エンジンは、ベースガスケットとヘッドガスケットをメタルにして組んでいるんです。純正だとペーパー(紙)で、組んだときは問題ないのですが、変なときにオイルが漏れてくる。1年くらいするとガスケット自体がつぶれてシリンダーの外にはみ出てくることも多いんです。
なのでこのタイミングでメタル(スチール)にしました。締め付けトルクもしっかりかかりますし、シリンダー/ケースとは金属同士の接触になるので放熱にもいいかなと思っています」
長く乗るにはトラブルを予見し、そこを先に対策しておくことも大事。それを細かく考えて投入してくれるのも、TTRの良さと言えそうだ。キャブレターもこの車両の足まわり製作時にTTRで確立していたCB1300SF純正の加工流用を行っているし、点火系にメタルギアワークス製を使い、排気系に安田商会製フルチタンを使うなど、いいパーツを積極活用するのもCB系の事情ををよく知るからとも言える。
1度完成して乗られていた車両をトラブルシュートのために状態チェックと原因追究をし、そこから改めて再構築を行った。よりいい状態になった上で、いつ作業をしたかの履歴も分かることになる。そうすれば以後の状態維持は楽になってくる。そしてそれが後のスープアップにもつながってくるということだ。
Detailed Description詳細説明

純正フロントフォークにマウントされるセパレートのハンドルやメーター類はCB1100RC純正で状態良く保たれている。ミラーのみ変更されたそうだ。

アルミの燃料タンクやカウル類もCB1100RC純正で、状態良く保たれている。

シートには純正シングルシートカバーを被せていて、そのカバー上にはオーナーがバランス良くステッカーを配した。

コンパクトなステップはウッドストック製。ドライブスプロケットカバーはジェイズ製でシフトスピンドルシャフトをベアリング支持することでシフト操作を的確にする。ドライブチェーンはDIDの520ZVMXにコンバートしている。

リヤブレーキマスターはゲイルスピード。なおフレームは前ページのようにパウダーコート塗装されるが、塗膜は厚くなく、ネジ山の再加工も行われて以後の問題(ネジが入らないなど)にも対処したそうだ。

エンジンはシリンダーからのオイル漏れの原因を突き止めた上で履歴を一新するべくオーバーホールを受け、0.25mmオーバーサイズの鋳造ピストンを組んだ。強化ジェネレーターKIT(エンジン右側)、デジタル進角KITはともにメタルギヤワークス製を組む。

キャブレターはCB1300SF用負圧式をセッティングしてエアフィルター仕様で搭載。これはTTRでのCB-Fへの定番で多くの車両で装着例がある。

スターターモーター上カバーはTTRモータース製カーボンカバーに置換した。

フロントフォークはCB1100RC純正φ39mmをリセッティングし、フロントブレーキはブレンボ・アキシャル4Pキャリパー+サンスターディスクを組み合わせて使う。

リヤブレーキはブレンボGP2-SS CNC 2Pリアキャリパー+サンスターディスク。排気系には安田商会製手曲げチタン4-1のダウンタイプを装着した。

リヤサスはアルミ製のジェイズ製スイングアーム 純正対応 CB-F/Rにアラゴスタ 3WAY Damping Adjuster ビギーバックタイプ ツインショックを組み合わせる。ホイールは2.75-18/4.00-18(RC純正は2.50-18/3.00-18)サイズのゲイルスピードType-Nで、RC純正に合わせたゴールドカラーを選択する。