乗りやすさを主眼に手を入れ続け気が付けば四半世紀
周囲のバイク仲間が今どきのバイクを愛車にする中で、旧車になってしまった車両に乗り続けるというケース。この項を読んでいる方にも多いかと思うが、ここに登場する“忍者が一番”さんもそんなひとり。この車両は彼の愛車だが、そこにはなぜGPZ900Rニンジャに乗り続けるのかの理由も込められていそうだ。まずは話を聞いてみよう。
「世間にはよくある話かもしれませんが、学生時代にトップガン(1986年公開の映画TOP GUN)を見てニンジャ(GPZ900R)にひと目惚れしたんです。
そう、当初はニンジャが、ではなくマーベリックが乗っていた“あのバイク”に憧れた。社会人になってしばらくして大型自動二輪免許を取得し、2001年にバイク屋さんに探してもらってこの’99年型A12、国内仕様のラストモデルを2年落ちで中古で購入しました。距離4000kmで価格は54万円。今では考えられない値段ですよね。
それでも当時、妻からはなぜ大型バイクが必要なのかと聞かれて、“子供に夢を与えたい”と、今考えても訳の分からない理由で押し通したそうです。あまり覚えてはいませんが(笑)」
ニンジャに乗っての印象は、ノーマルのままでは曲がらない、止まらない、だった。それなら、と懇意にしているバイクショップでパーツを換えていけば、その効果が手に取るように分かり楽しくなる。以来、愛車のカスタムを楽しむようになった。それまでは2年と経たず乗り換えてきたバイク遍歴も、このニンジャに乗り換えてからはひと筋。もう四半世紀弱が経った。
「ニンジャ自体が飽きないバイクであること、一方でこれに代わるバイクが見当たらないことが、長く乗り続けてきた理由でしょうか。’21年の夏に事故に遭って大きく破損したときも、乗り換えなんて頭に浮かばない。“どうしたら早く修復できてまた乗れるかな”ってことばかリ考えていたぐらいなんです(笑)」
そんな中でのこだわりは、純正カラーを維持し続けることと、サイドカウルにある純正リフレクターを活かしたかったこと。社外マフラーを付けたことでサイド/アンダーカウルが装着できなくなるところを、切断加工してリフレクターまわりが残せるようにした。
その他の部分はどうだろう。購入後早い段階でPVMホイール(現在はJB MAGTAN)とウイリー製リンクと車高調整機構付きリンクロッドの組み合わせで前後17インチ化し、フロントブレーキはA12純正同様の6ピストンを持つベルリンガー製キャリパーと同ディスクの組み合わせで強化した。フォークスプリングとリヤショックはオーリンズで、そのフォーク下端に装着したCUU-PARTS製マスダンパーも余計な振動が減ってお気に入りパーツという。四半世紀のカスタムの中で、使い続けられる先のベルリンガーなど懐かしいパーツ群も、その味を深めて見える。エンジンについても気になる。
「残念ながら僕のエンジンはノーマルのままなんですよ。ただ、手にしてずいぶん時間が経ちましたし、距離も(撮影時点で)4万5000kmにまで伸びました。純正部品の廃番も進んでいるそうですから、オーバーホールのタイミングを見計らってはいます。仮にピストンやシリンダー交換が必要になったとしても極力、純正の908ccに近い排気量に収めたいですね。もちろん、系列エンジンへの積み替えも考えていません。この“デカヘッド”(GPZ900R純正のシリンダーヘッドは後継モデルのそれより前後長があり、区別も含めてこう呼ばれる)が好きなんです」
仲間とのツーリングの様子や近況をHeritage&Legends本誌の読者コーナー、バイキング・リターンズに投稿し、ニンジャの“リアル”を見せてくれた忍者が一番さん。今後もその楽しいニンジャライフを投稿してくれるはずだ。
Detailed Description詳細説明

スクリーンとヘッドライトはMCジェンマ、バックミラーはマジカルレーシングのレーサーレプリカミラー・タイプ3ヘッドをマウントする。

トップブリッジはNプロジェクトでメーターはヨシムラ・デジタルデュアルメーターやドラレコを追加した。

クラッチマスターは握りこみの軽さがお気に入りというベルリンガー製CR14-4Rマスターを使い続けている。フロントマスターもベルリンガーBR14-4Rだ。

セパレートハンドル仕様としているために空いているハンドルマウントの間には、かつて販売されたオーヴァーのサウンドアジャスターの音量調整レバーを配し、暖気時の音量低減用に活用している。

シングルシートはレオパルド製で、シートはやまちゃんのバイクシート工房で張り替えと低反発ジェル埋め込みを行った。

純正カラーにこだわりつつ、社外マフラー装着で純正カウル装着が難しくなったことに対し、サイドカウルをカット加工しアンダーカウルはTG-NAKAGAWA製を加工して取り付けた。ダウンチューブはオークションで購入したプライベートブランドを装着。

4万5000kmを走破したエンジンとミッションはノーマル状態だが、クラッチはTSSのスリッパータイプに換装される。ラジエーターはサンダーボルト製3層タイプを使い、その下にオイルクーラーをセットする。サブフレームはイエローコーン、ステップはアグラス製を選択。純正サイドカウルはカット&加工してサイドリフレクターを残すようにしている。

キャブレターはヨシムラTMR-MJNΦ36mmをデュアルスタックファンネル+フィルター仕様で組む。その前方に見えるヘッドバイパスラインkit STDタイプはトリニティガレージNakagawaの製品だ。

マフラーはマーベラスエンジニアリングのコニカルゴルディ/サムアップテールパイプ+BEETナサートEvoタイプIIサイレンサーの組み合わせ。

オーヴァーレーシング製サウンドアジャスター(生産終了品)をテールパイプとサイレンサー間に挟み、暖気時の騒音低減に使う(ハンドルマウント部の説明も参照)。

純正φ41mmフロントフォークにはオーリンズ・フロントフォークスプリングを組む。ボトムケース前側に見えるのがおもりで振動を軽減するCUU-PARTS製GPZ900R フロントフォークマスダンパーシステム。フロントブレーキはベルリンガー6ピストンキャリパーと同ディスクの組み合わせだ。

ホイールはMAGTAN JB3で3.50-17/5.50-17サイズ。リヤショックはオーリンズの17インチNinja用、KA203。車勢を整えるウイリー製Ninja用17インチ対応リンクと同じくNinja用車高調整機構付きリンクロッドを組む。