フラッグシップの速さと軽快さを明確に強化する
’84年の登場当時に世界最速を標榜したNinja、GPZ900R。その最速路線は後継各車にも受け継がれ、’93年のZZR1100/ZX-11・D型で完成に至る。堂々たるフラッグシップ。それでいながら街乗りにも使える軽快感を備えていたため、支持が厚かった。
K-2プロジェクトが手を入れたこのD型ZX-11は、その速さと軽快さの両方が明確に伸ばされているようだ。そのポイントを知れば、ニンジャ系モデルへの効果的な手の入れ方も見えてくるのではないだろうか。同店・北村さんに聞いた。
「この車両は、十数年前に当店で販売したものです。その販売車両を元に少しずつカスタムを進めていたのですが、動力系の調子が落ちてしまったんです。それでオーナーさんと解決方法をすり合わせする中で“エンジンをZZR1200のものに積み替えるのはどうでしょうか”と提案して“面白いですね”と、その方法に進んだんです。
そのエンジンは調子の良い個体で、積み替え後は点火系をダイレクトイグニッションにした上で、ZX-11の純正キャブの方を1200に合わせてセッティングし、排気系にノジマ・フルチタンを組み合わせました。
その後で足まわりに手を入れています。当時当店でも多かったオーリンズフロントフォークにリヤがfgショック+アドバンテージ・スイングアーム。ホイールはマルケジーニのM7RSでブレーキもゲイルスピードマスターにブレンボ・ラジアルマウントCNCキャリパー+サンスター・プレミアムレーシングディスクでしっかりとバランスを取りました。
カラーリングはオーナーさんが4輪のGT500に気に入ったモチーフの車両があるとのことで、それを元にYFデザインさんと私で合うデザインを打ち合わせしてフルペイントしています。外装はエーテック・カーボン主体で、それも合わせて全体に軽くなってます」
北村さんは丁寧に車両の履歴を教えてくれる。車両製作や整備の際にも使うパーツや作業の豊富なノウハウをこのように丁寧に行っているから、依頼するオーナー側も安心だ。この車両はハンドル高さ等も細かく調整され、納車後も定期的にメンテナンスを受けて好調だという。
ところでZZR1200エンジンへの換装という話が出たが、これはZZR1100/ZX-11に対してはK-2では割とよく使う手法で、実際にもそう難しくなく載るとのこと。過去にも同様の車両を紹介したが、これは意外に使えるようだ。
「お客さんにもメリットとデメリットのお話はして、了解をいただいたらやります。メリットはまず1052ccの1100純正から1164ccに排気量が上がることでトルクが上がることです。吹け上がりもいいしミッションも1200はクロス気味なので楽しく乗りやすくなるんです。1100を元にチューニングを行うという選択肢もありますが、1200換装は純正そのままのユニットを使うことで不安が少ないこと、また公認車検も取りやすいことも挙がります。
デメリットは、専用エンジンではないので搭載スペースの都合上、メンテナンスが少し大変になることですね。オイル漏れが起こってそれに対処するときにエンジンをいったんずらす必要が出ます。
それでもメリットは大きいので、デメリットのことを理解していただいて、トラブル歴がない良好なエンジンであればZZR1100/ZX-11へのZZR1200ユニット換装はお勧めできます」
多くのZZR/ZXシリーズを扱う中でのノウハウのひとつと言っていいだろうか。面白い手法と言えるし、実績もある。北村さんはZZR1100/ZX-11、ZZR1200とも年月が経ってきている(1100なら25~35年、1200も20~23年)から、ジェネレーターや水まわり=ラジエーターにウォーターポンプ、配管の劣化は対策して新品にできるものは換えてほしいとも言う。これも含めて、参考にしたいところだ。
Detailed Description詳細説明

ハンドルは純正のセパレートアップだが、マウント部下にスペーサーを入れてポジションを調整している。フロントマスター、クラッチマスターはともにゲイルスピードVRCだ。

外装はフロントカウルがバットウイング(丸善化成)でサイド/アンダーカウルがエーテック・カーボン。その上に施されるフルペイントはYFデザインによる。

シートは表皮と形状を変更し、ライディング時のホールド感を高め足着きも楽にしている。

アルミ削り出しのステップはアグラス製。ドライブチェーンはRK 50XXWを選択。

エンジンは後継機のZZR1200純正ユニットに換装。排気量が1052から1164ccになり、6速ミッションのレシオがクロス気味になる、純正そのまま+めっきシリンダー等でトルクがあり乗りやすくなったとのこと。クラッチレリーズはウイリー製に換装され、クラッチラインはアレーグリだ。

キャブレターはZX-11D純正のCVKD40(ZZR1200もCVKD40だが内部等が異なっている)を1200にセッティングを合わせて使っている。アルミペリメターのフレームはZX-11Dのノーマルのまま。

フロントフォークはオーリンズ正立(φ43mm)で、フロントブレーキはブレンボ・レーシングラジアル CNC 4Pキャリパー+サンスター・プレミアムレーシングディスクの組み合わせ。

リヤブレーキはブレンボ 2Pリアキャリパー+サンスター・プレミアムレーシングディスク。排気系はノジマエンジニアリング製4-1フルチタンを装着する。

リヤサスはアドバンテージのスタビ付きスイングアームにFGリヤショックを組み合わせている。前後ホイールはマルケジーニのアルミ鍛造、M7RSジェネシで3.50-17/5.50-17サイズを履く。