
【SPECIAL MODEL IMPRESSION】大排気量レーサーレプリカのルーツモデル、 初期型GSX-R750試乗!・m-tech(エムテック)
大排気量レーサーレプリカのルーツモデル、初期型GSX-R750試乗!
現代の視点でも感心する圧倒的な軽さと小ささ
「やはり初代油冷は、いいなあ」
GSX-Rシリーズ全般に精通し、多種多様な復刻/オリジナルパーツも販売するエムテックから借用した、ほぼノーマルの’85年型GSX-R750を走らせて、しみじみとそう思った。このバイクの何が素晴らしいって、ナナハン初のレーサーレプリカ(デザインモチーフは’83年の世界耐久選手権を制したGS1000R)でありながら、街乗りやツーリングを快適にこなせる、オールラウンダーとしての資質を備えていることだ。
▲レーサーレプリカでありながら守備範囲が広いオールラウンダー。
具体的に書けば、ライディングポジションは意外に安楽だし(セパハンがトップブリッジ下にクランプされているけれど、シートが低いため、上半身の前傾はあまりキつくない)、細身の前後18インチタイヤのおかげで悪路を含めた環境変化に柔軟に対応できる。高回転域でシャープな吹け上がりが堪能できるだけではなく、低回転から十分なトルクを発揮してくれる油冷エンジンもいい。
振り返れば、当時のナナハンスポーツはいずれもオールラウンダーだったのだ。その中で初代GSX-R750の軽さと小ささは圧倒的で(乾燥重量は179kgで、軸間距離は1430mm。同時代のライバルは、ホンダVFR750F:199kg・1480mm、ヤマハFZ750:209kg・1485mm、カワサキGPX750R:195kg・1460mm)、誕生から約40年が経過した現在も、その美点はちっとも色褪せていない。
言ってみれば初代GSX-R750は、黎明期のレーサーレプリカならではの魅力が満喫できる一方で、年式が古いことのマイナス要素を感じづらいバイクなのである。だからこそ、昨今の中古車市場で大人気を獲得しているのだろう。
最低限のカスタムとしてタイヤとリヤサスを交換
まずは車両の印象を記してみたが、現在の中古車市場に流通している初代GSX-R750を入手して、誰もが乗り味に感心できるのかというと、もちろんそれはなかなか難しい。以下の文章ではエムテックの松本さんに聞いた、近年の油冷GSX-Rの中古車事情と試乗車の概要を紹介しよう。
「これから油冷GSX-Rを入手するなら、重整備が必要という意識を持つべきだと思いますよ。今回の試乗車は前オーナーが大切に乗ってきたので、タイヤとリヤショック以外は入庫時のままですが、ヘタった純正リヤアショックで峠道を走ったときに出るような露骨なプッシュアンダーはほとんど見られないですから」
ちなみに、松本さんが選択したタイヤはブリヂストンBT-46Vで、リヤショックはハイパープロだ。
▲現代ならではの技術で要所に改良を加えつつも素材の特長を維持する。
「世間では先代のBT-45Vと大差ないという人もいるようですが、46Vは非常にいいタイヤで、グリップ力も乗り心地もバイアスとは思えないレベルです。リヤショックに関しては、ハイパープロ独自のコンスタントライジングレートスプリングに惹かれた、というのが採用した理由ですね」
その言葉を聞くと、意外な印象を持つ人もいるかもしれない。と言うのも松本さんには、全日本選手権や鈴鹿8耐などで長きに渡ってレースメカニックを務めた経験があり、そうした人はシングルレートのスプリングを好む傾向なのだ。
「確かに、レースの世界ではシングルレートが基本ですが、ストリートでスポーツとツーリングの両方を楽しむなら、全域でバネレートが変化するコンスタントライジングレートが最適でしょう。さらにコンスタントライジングレートには、2段や3段レートのように、ストロークの途中で折れ点を感じないという良さもあります」
タイヤとリヤショック以外に、松本さんはどんなカスタムを推奨しているのだろうか。
「今回の試乗車を例にとるなら、次はフロントブレーキのグレードアップや、シートのウレタン交換+レザー張り替え(同店ではノグチシートに依頼しているそうだ)などですが、一般的な中古車の場合は、車両の状況やオーナーさんの好みによりけりです。キャブレターやマフラー、ライポジ関連パーツなどの交換、エンジンO/Hを優先することもありますよ。
いずれにしても初代GSX-R750は、ノーマルが非常に魅力的で、当店がカスタムする場合は本来の素性を活かすことを大前提としていますから、タイヤの前後17インチ化や大幅なパワーアップを望むというなら、’88年型以降を選んだ方がいいでしょうね」
前期型のGSX-R用として4種のハイパープロ製品をアクティブと共同開発!
前後18インチを履く前期型の油冷GSX-R750(F・G・H・RR)/1100(G・H・J)用に、エムテックはアクティブと共にハイパープロのリヤショックを開発。写真上の最高峰モデルは22万円で、油圧式プリロードアジャスターを省略した下の1100用は18万7000円。750用にはエマルジョンタイプ:14万800円もある。スプリングの色は黒と紫の2タイプから選べる。
エムテックの販売予定車にしてベース車
今回試乗した’85年型GSX-R750は販売予定車にしてベース車で、現状はm-techにとって見ればパーフェクトな仕上げを済ませた状態というわけではない。けれど’80年代後半以降に登場した大排気量レーサーレプリカと一線を画す、初代油冷ならではのフィーリングは十分に堪能できたのだ。
’83年型GS1000Rの意匠を再現した外装類。ヘッドパイプから伸びるカウルステーとメーターをマウントするスポンジパネルは、’80〜’90年代レーサーレプリカの定番だった。計器の文字盤はホワイトだ。
ステップは近年のスーパースポーツ的にも見えるが、シート高はかなり低めの765mm。ただし、ウレタン厚は十二分だ。試乗車はグラブバーを撤去した上で、純正アクセサリーのシングルシートカバーを装着する。
油冷並列4気筒は輸出仕様:100PS、日本仕様:77PSを発揮するが、開発陣は130PS以上のチューンアップを想定して開発を行っていたという。フラットバルブ式キャブレターはミクニVM294-1式集合マフラーは、当時の大型車の世界では画期的な装備だった。
φ41mm正立式フォークは、底部に圧側ダンパー調整用の別室を設置するもの。Eフルフローター式のリヤサスは現在のボトムリンクに近い構成だ。ブレーキはF:φ300mmディスク+対向式4Pキャリパー・R:φ220mmディスク+対向式2Pキャリパーを装備。タイヤサイズはF:110/80-18/R:140/70-18だ。
【協力】m-tech TEL075-932-6677 〒612-8486 京都府京都市伏見区羽束師古川町174-3 https://www.mc-m-tech.com
※本企画はHeritage&Legends 2025年2月号に掲載された記事を再編集したものです。
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