エンジン内部にR-Shot#Mを加え操作系もアップデート
’24年後半にトレーディングガレージ ナカガワから改称したトリニティガレージ ナカガワ。このZRX1200Rは同店で10年ほど前に仕立てて、このほどエンジンオーバーホールのために入庫していた車両だ。ただそのO/Hに際して、製作時点からの環境や技術変化に応じた内容が込められている。
先に製作当時の内容を見ておくと、エンジンから車体に至るまで、ほぼすべてに手が入った走り系フルカスタムという1台で作られていた。レース経験もあるオーナーのためにミッションはZZR1200純正パーツを加工流用して5から6速化し、ピストンもZRXに同排気量ながらハイコンプのZZR1200純正を独自加工して使う。ヘッド面研やポート加工、クランクバランス等、TGナカガワの主力とも言えるエンジンチューニングも施して、製作時点で後輪出力170PS以上というハイパワーユニットに仕上げていた。同時にフレーム補強、着脱式の右ダウンチューブを変更、前後サスのチューニングなども行うことで、マシン全体として破綻のないパッケージとなっていた。
オーナーはこの仕様を気に入って乗ってきて、オーバーホールに至ったわけだ。今回の入庫では車体側はカウルのフレームマウント化とフロントブレーキ/クラッチのマスターシリンダー変更(ゲイルスピード・ラジアルへ)でアップデート。エンジンはスペックはそのままに、トリニティガレージ ナカガワ独自の表面処理加工「R-Shot#M」を内部パーツのほぼすべてに施した。
そのR-Shot#M、エンジンなら内部の摺動パーツすべてに施したく思うが、もし優先して何カ所かという条件が付いたらどこに施すのがいいのかを、ZRXシリーズベースで同店・中川さんに聞いてみた。
「まずピストンとピストンピン。ミッション一式(シャフトとギヤ)にシフトまわり(ドラム/フォーク)、それからクランクメタル。この5カ所は勧めたいです。出来るならバルブガイド、カムホルダー。先に挙げた5カ所は、純正廃番への対応でもあるんです。パーツが手に入りにくい、つまり簡単に交換しづらい環境になってますから、交換スパンを極力伸ばせるように。スムーズな動きも得られる上に表面も強くなっていれば、壊れる可能性も低くなりますし摩耗の度合いや速さも緩和できますからお勧めになるんです。
バルブガイドもパワーが変わる等はないんですけど、減らない、バルブステムとのガタがなくなってバルブやガイドの交換頻度が減らせます。ガイドを新作して打ち替え……という作業も省けて、コストが減らせます。カムホルダー(キャップ側)への処理もカム回転のスムーズ化が顕著です。対になるカム側はジャーナルラッピングします」
数こそ多く思えるが、これらを施せば4〜5万kmごとに訪れるオーバーホール時にもエンジンを開けてのパーツ状態の確認で済み、交換作業やパーツそのもののコストも減らせる。しかも乗り味もスムーズになるという追加の利点もある。この車両はそのメリットを生かして、10年のスパンの中での純正廃番の増加に対応し、よりスムーズになるというひとつ上のステージのメリットも得る。ピストンも測定したところ再使用可能範囲だったのでそこにR-Shot#Mを施し、数値も処理もで今後の安心感を得た。TGNエンジンを気に入り、さらに長く楽しもうという姿勢がさらに強化されたという例になったのだ。
Detailed Description詳細説明
フレームマウント化とともにカウルも純正から変更した。メーターもTGナカガワでワンオフ製作したパネルにスタックST700メーターやSP武川燃料計等を配したものに変更。ハンドルバーはEFFEX、左右マスターも今回ゲイルスピードVRCに換わり、操作性やタッチを高めるアップデートが行われた。
2001年型A1の純正カラー、ファイヤクラッカーレッド×エボニーのカラーもそのままながらきれいな状態の燃料タンクは純正で燃料コックはキャブレター変更に合わせて流量を確保するピンゲルに変更。
シートはTGNオリジナルコンプリートシートで内部にTGNオリジナルでマップ切り替えや製作・保存可能なHIR点火ユニットを収めている。
ステップはマーベリック。油圧クラッチキットはウイリー製で、ドライブチェーンにはRK 520XXWを装着。
エンジンはZRX1200Rに排気量/ボアが同じで高圧縮化(純正比で10.1:1/10.6:1)するZZR1200ピストンを加工して組み、ミッションもZZR1200用で5→6速化する。ヘッド面研やポート研磨、各部エッジ処理にクランクダイナミックバランス等で170PSを発揮する。今回のオーバーホールでは内部パーツのほぼすべてにTGナカガワオリジナル表面処理のR-Shot#Mを施した。ピストンは測定で使用範囲内だったのでこれにR-Shot#Mを施して組んでいる。より作動がスムーズ化し耐久性も高められるので引き続き長く乗られるはずだ。
キャブレターはFCRφ41mm。フレームは各部に補強が入り、キャブ後ろ側(写真で左側)のメインループ背面内側補強(三角形状の部分)もそのひとつ。
ウイリー製28mmオフセット(純正同数値)ステムでオーリンズ正立フォークをクランプ、フロントブレーキはブレンボ・レーシングCNC 4Pアキシャルキャリパー+サンスター・ワークスエキスパンドディスクの組み合わせだ。
リヤブレーキはブレンボCNC 2Pキャリパー+ガルファー・ウェーブディスク。排気系はノジマ製SCフルチタンを使う。
スイングアームはウイリーでオーリンズ・リヤショックは以前のフルアジャスタブルからグランド・ツイン/KA417に変更される。ホイールはMAGTAN JB3でリヤが純正より1サイズ広い3.50-17/6.00-17サイズを履く。