REST-MOD(レストア&モディファイ)のテーマも進化
’24年春、東京モーターサイクルショーに初出展したm-tech。そのブースに飾られたのがこの初期型GSX-R750(F)だ。この車両、ブレーキパーツやリヤショック、タイヤこそ置き換わっているものの、それは今走ることも考えた仕様としてのこと。それ以外の大半の部分に、m-techの考える油冷モデルへの向き合い方、そしてこれから手を入れて乗るための指針というべき部分が反映されている。
「製作テーマは“REST-MOD(レストア&モディファイ)”。ショーバイクですから1点の曇りも許されない。今、m-techが持つオリジナルパーツと技術を駆使して仕上げた車両なんです」と同店代表の松本さん。圧巻はそのフレームで、傷んだクリアを全剥離した上で、手作業によってヘアラインを再現し、改めてセラコート・クリアで仕上げられている。この作業だけで50時間はかかったという力作で、仕事としてはとても受けられないとも松本さん。
フロントフォークアウターチューブも同様にクリア全剥離後に再研磨して腐食も取り除き、セラコート処理。DECA PISTONデカールもm-techの復刻品で、メーターステーや各部ボルトなど細かなパーツも再めっきして復元する。燃料タンクはさび取りを念入りに行い、燃料漏れ対策のための国産オリジナル品のタンクキャップリペアパッキンセットを組み込んだ。
エンジンはワイセコφ71mm鍛造ピストンと純正パーツによってフルオーバーホールし、純正VM29キャブもフル清掃。メータースポンジやスロットルケーブルはm-techのオリジナル・リバースエンジニアリング製品を使い、メインハーネスも同様(ここでは開発途中のものを装着。現在市販中)。外装もフルリペイントして完成した。売ってほしいという声がけもあるとのことだったが、値付けするなら車両代も含めて700万円〜といった作業内容という。
他の’80年代名車の例に漏れず、好コンディションの油冷GSX-Rを入手するのは年を追う毎に難しくなっている──。松本さんは取材のたびにそう繰り返してくれる。最近はルーツモデルであるGSX-R750の人気が高まっているが、ただでさえ国内の残存車両は少なく、今後はさらなる価格高騰も予想されるという。
「値段(この車両ではなく、市場の車両のもの)を聞いて驚かれる方も多いですが、その年式、そして良好な状態の中古車であることを考えれば当たり前でしょう。本気で油冷GSX-Rを入手して、これから楽しもうというなら、ユーザー側にも覚悟が必要な時代になりました。ただ油冷機は頑丈ですから、一度きっちりと手を入れておけば、この先も10年20年と長く楽しめる車両でもあるんです」とも松本さん。このGSX-R750はその“きっちりと手を入れる”の最上の見本になっている。なおm-techではここで使われるハイパープロリヤショックやメータースポンジなど、油冷GSX-Rの維持に必要なパーツを続々開発・販売中。ぜひそちらにも注目し、今後のために使ってほしい。
Detailed Description詳細説明
再塗装されたカウル類上のロゴ類もペイントによる再現。再生にひと手間加え、かつ再組み立てによって新車をしのぐ仕上がりになっている。
メータースポンジやスロットルケーブルはすでに販売中のm-techオリジナルに置換した。張り替えられたメインハーネスも車両製作当時、市販前提の開発途上品だった。トップブリッジは黒塗装。メーター裏のステー類まで再めっきして仕上げてある。
燃料タンクは内部のサビ取りまで実施して、ガソリン漏れ対策のための国産オリジナル品のタンクキャップリペアパッキンセットを組み込んでリペイント仕上げ。
シングルシートカウルも純正品をリペイントし、シート表皮も張り替え済み。
VM29キャブはウェットブラスト処理で清掃した純正品だ。アルミのMR-BOXフレームは手作業でのヘアライン仕上げ+セラコート・クリア施工で見事に蘇らせた。
エンジンはワイセコφ71mm鍛造ピストンを使ってオーバーホール。ピストン以外のパーツはすべて純正部品が組み込まれている。
マフラーは本体が塗装剥離後に磨き上げセラコート・ブラックで、カバー部も取り外して手磨きした上でセラコート・クリアで仕上げた。
点火ユニットはウオタニSP2。リヤショックにはオリジナルセッティングのハイパープロ・フルアジャアスタブル HPA付を組み込む。
フロントに対向4P×2、リヤに対向2P×1で計10個のブレーキキャリパーピストンを持つことを示す純正の「DECA PISTON」ステッカーはm-techによるリプロ品で、販売中だ。
φ41mmフロントフォークのアウターチューブもセラコート・クリア仕上げ。フロントブレーキはブレンボ製キャスト4Pキャリパーとブレンボディスクの組み合わせで、このためm-techで「キャリパーサポート GSX-R750/1100 初期型」を用意(販売中)。
アルミ角型スイングアームおよび対向2ピストンキャリパーのリヤブレーキは純正。スイングアームエンドのチェーンプラー(L/Rセット)はm-techの強化対策品に換えられている。サイレンサー上に見えるノブはリヤショックのアジャスターだ。
2.50-18/3.50-18サイズの前後ホイールは純正をレストア。タイヤはブリジストンBT-46を履く。前後ホイールおよびピボットのシャフトもm-techのクロモリ製に置換済みと、細かい部分のアップデートも分かる。