エンジンもトルクフルで油温上昇も回避できるように
2000年に基本を確立して以来、600台以上が世に送り出されたACサンクチュアリーのコンプリートカスタム、RCM(当初Real Complete Machine、現在はRadical Construction Manufacture)。空冷Z系がその9割近くを占めていて、このMk.ⅡにはRCM-633というシリアルナンバー(個体番号。通算製作番号にもなる)が付いている。
現代の前後17インチタイヤに合わせ、その性能を引き出すディメンションや剛性を持たせるフレーム加工を行う。そしてそれに最適化される剛性や数値を作り出すステムやスイングアームをセット。そして最高グレードパーツによる足まわりという全体の構成。これらと、しっかりした組みによって車両としてのレベルも高い位置に揃えられる。それはもちろん、エンジンにも及ぶ。この車両はその参考になる1台でもある。
「オーナーさん持ち込みの車両がベースでした。18インチのノスタルジック路線で手が入っていたものを、レーシング寄りの17インチにしたいとオーダーいただいて、フレームから手を入れていきました」とサンクチュアリー・中村さん。
「エンジンもオーバーホールしてあったと聞きましたが、確認のため開けてみたところ、ヘッドまわりはじめ手を入れた方がいいと分かり、この機会にフルに手を入れ直しました。
バルブ入れ替えにバルブガイド打ち替え、バルブシートカットにハイカム化、ツインプラグヘッド化。ピストンはφ75mmとボアを大きくして1165cc仕様にしています」とフルメニューの内容が施された。オイルパンは削り出し品に変更されるが、その中央部が少し突き出ているのも目を惹く。
「深底オイルパンです。エンジンオイルの泡立ちを抑える当社のZ用トロコイドオイルポンプと、バンクしてもエアを噛まずにオイルが吸える深底オイルパンのコンビネーションキットで、オイルクーラーコアにもエアが入っていかず冷却効率が高まります。このメリットをお話したところ、迷わず選んでいただいたものです。
先ほどの1165cc仕様はトルクフルで、ゴーストップが多くても楽に乗れますから、深底オイルパンとの組み合わせで夏の渋滞時にも油温上昇からの性能低下も極力抑えられると思います」
精密加工と組みで得た性能。それを維持する手法も組み合わせることで、楽しみの幅はまだ広がるということだ。完成域にあると思われるコンプリートメニューだが、まだまだ進化を続けている。
Detailed Description詳細説明
スカルプチャーSPステムKIT Type1でフォークオフセットを60→35mmとして軽快なハンドリングに。メーターは純正ベースでヨシムラ・プログレス2マルチテンプメーターを追加、左右マスターはブレンボ・レーシングにした上でレバーはZETA RCMコンセプトフライトレバーに換装される。
Mk.Ⅱの純正カラーのイメージや純正ラインを生かしながらライン近くに入るグラデーションやツートーンのイメージも採り入れたオリジナリティあるペイントも目を惹くところ。
シートはライダーの着座部分を絞り込み足つき性を向上した専用のFRP製ベースを持ったデイトナRCMコンセプトシートを装着する。
ステップおよび油圧駆動化したクラッチのレリーズをマウントするフロントスプロケットカバーはナイトロレーシング。クラッチラインはアレーグリだ。
エンジンはDiNx KZ用鍛造ピストンφ75mmで1165cc仕様に。精密ボーリング&ホーニングほか本文のようなフルメニューにSMB(サンクチュアリー・メカニックブランド)・トロコイドオイルポンプ+深底オイルパンコンビネーションKITでオイルのエア噛みも抑制される。
キャブレターはTMR-MJNφ38mmのデュアルスタックファンネル仕様でファンネルはボディカラーに合わせたブラック&レッドをチョイスした。
排気系はナイトロレーシング・ウエルドクラフトチタン3D EXマフラーにナイトロレーシング・ストレイトチタンV-Ⅲサイレンサー ヒートポリッシュをセットする。
ノーブレストE×MパッケージでオーリンズRWUフロントフォークをセット、フロントブレーキはブレンボGP4-RXキャリパーにサンスター・ワークスエキスパンドディスクのRCM仕様を組み合わせる。
リヤサスはオーリンズ・ブラックライン(KA963)に、17インチ最適長も考慮したスカルプチャー・R.C.Mワイドスイングアームの組み合わせ。リヤブレーキはブレンボGP2-SSキャリパー+サンスター・プレミアムレーシングディスクだ。
ホイールはO・Zレーシングのアルミ鍛造、GASS RS-Aの3.50-17/6.00-17サイズでピレリ・ディアブロロッソⅣの120/70ZR17・190/50ZR17サイズタイヤを履かせる。ドライブチェーンはEK530RCM(BK;GD)を使う。