トータルの“ローシャシーモディファイ”で快適さ向上
オーストリアのKTMが2008年に発売した1190 RC8は、75度挟角の1148cc水冷Vツインエンジンをクロモリ鋼管トレリスフレームに積み、スーパーバイクレース参戦も視野に入れた本格スーパースポーツだった。1194cc化したRC8Rを経て’16年まで生産されたが、スリムな車体にV2エンジンの組み合わせは独自の楽しさがあった。
一方でKTMの古くからのディーラーとして、また同じピエラー・モビリティAGのグループ会社であるハスクバーナとWPサスペンションの国内正規販売店の顔も持つのが、インパラ。同社代表の山鹿延也さんはそのKTMグループ車向けを中心に活動する、知る人ぞ知るサスペンション・スペシャリストだ。
近年では、KTMやハスクバーナ向けに前後サスのモディファイによる「ローシャシー」化、さらにはシート加工を組み合わせての「ローダウンメニュー」で、小柄なライダーも両車を楽しめるモディファイメニューを提案している。その特長は、ライダー個々の体型に合わせてサス内部のパーツを組み替え足着き性を良くしつつ、キャスター角や前後重量バランス、乗車時の沈み込み量など純正の数値を崩さない作り。短いバネ長のスプリングの交換だけ、あるいはショックの減衰調整だけで足着き改善するのと違い、ハンドリングは純正同等、もしくは遙かに乗りやすく仕上げる。
このKTM・RC8はそんな山鹿さんが製作したインパラのデモバイクだ。サスのモディファイはフロントフォークの10mmショート加工とインナーチューブへのチタンコート程度。純正の雰囲気を壊さない、山鹿さんのこだわりでパッと見では変更点が分からない、『究極の玄人好み』と表現していい1台だ。その中に秘められた注目は、削り出しトップブリッジにハンドルバー、ミラーエクステンションなどをパッケージ化した、RC8/R専用『削り出しバーハンドルKIT』。合わせて装着される『形状変更シート加工』は、バーハンによりアップライト化したライディングポジションでも乗車時の座面が最適にフィットするようシート前部分を10mm上げた形状で作成し、さらにトップとサイドの形状を変更することで足着きも向上させる。またオーナーが望めば、先のローシャシー・モディファイでさらなる足着き改善もできる。
「国産車も今ではシート高が気になるモデルが多いでしょ。純正オプション設定のローシートだけでは乗り心地や走る楽しさへの解決にはなりません。今の当社の、WP KOBE EASTの業態は僕の理想とする形の道半ば。体制が整えば、国産車のライダーに向けてのローシャシー・モディファイにも対応したい」と山鹿さん。
このRC8、そして山鹿さんの仕事を目にして「自分の国産SSも」、と考えるライダーは少なくないはず。期待して待とう。もちろんKTMのRC8/Rを今改めてストリートで楽しみたいというなら、この車両、そして使用各パーツは大いに参考になってくれるはずだ。
Detailed Description詳細説明
RC8向けのKTM KOBE EASTオリジナルパーツ。『削り出しバーハンドルKIT』(24万6000円)。中核となるトップブリッジはオフセットの異なる〜'10年用と、'11年〜用の、2モデルがある。ともに純正のメーターやステアリングダンパーがそのまま使える。この写真のようにトップブリッジ単体の販売も可能だ(7万7000円)。
内部スポンジベースに衝撃吸収材のT-NETを挿入し表皮にはエクセーヌを使ってオレンジWステッチ仕上げした『オリジナル形状変更シート加工』は8万3600円。
『バーハンドルKIT』に組み込まれる、ミラー基部のエクステンション(黒いパーツ)はハンドル高さが変わることで左右レバーのミラーが干渉するのを防ぐアイテムだ。
この車両の純正ミラーボディにはカーボンプロテックが施される。
水冷DOHC4バルブ75度V型2気筒のKTM・LC8エンジン搭載車に共通して使える、レバー操作を軽くする『クラッチレリーズピストン』は3万9800円。
前後ホイールはマグネシウム合金鍛造製。KTM KOBE EASTがビトーR&Dに特注したMAGTAN JB4だ。
KTM KOBE EAST特注MAGTAN JB4のサイズはRC8/R純正に準じたフロント3.50-17/リヤ6.00-17で、リヤ用はRC8/Rの狭幅のスイングアームに収めるため、ハブまわりの製作に腐心したという。現在も製作可能だ。
フロント、リヤともに体重60〜75kgに合わせたレートのKTM KOBE EASTオリジナルスプリングに変更している。