レジェンドGSレーサーにGSX-R油冷エンジンをドッキング!
1980年代の日本製バイクに手を入れる。レストアでもカスタムでも、重要なのはパーツの供給だ。純正品でもリプロパーツやカスタムパーツでも、消耗品を初めとして使えるパーツがなければ始まらない。’90年代に日本で起こったカスタムブームはそんな旧車へのパーツ供給をある意味当然のものにしたし、そのおかげでメーカー側が旧車パーツの再販売を行うほどにもなって、多くの旧車が元気に走れている。
この動きは日本だけかと思えば、ヨーロッパにも好き者は多かった。さまざまな日本製旧車に興味を持ち、同じように手を入れるライダーも顕在するようになる。いきおい、旧車を維持するパーツへの要求も高まる。そこに力を入れたのが、イギリス=GB(グレートブリテン)スズキだった。
“ビンテージパーツプログラム”を展開し、GS1000やRG500Γ、GT/RG250E系など’70~’90年代人気車両の純正部品の一部を供給しオンラインでも買えるようにし、そうした車両に愛着を持って長く接してほしいとした。そのプロモーションの一環として「チーム・クラシックスズキ」が設立されたのが’15年末のことだった。
その活動に先駆けて作られたのが、今回紹介する’80年代初頭のスズキファクトリーTTF-1レーサー、XR69=GS1000Rだった。当時の世界グランプリ・チームスズキのスポンサー、HB(ハーベー)タバコの黄色を加えた黄色×青で塗られて’83年の鈴鹿8耐で完勝したマシンと言えば、思い当たる人も多いだろう。それをチーム・クラシックスズキでレプリカ製作したというわけだ。
エンジンは当時のGS1000RのようにGS1000をベースとした2バルブのGS系エンジンではなく、後継で4バルブ+油冷のGSX-R1100(’87年型G)を使う。フレームも同じダブルクレードルタイプながら鋼管で新作された。前後17インチホイールを履き、リヤも2本サスでなく後期型で使われたフルフロータータイプとするなど、ある意味で日本的な旧車の現代版カスタム的な要素も多く含んでいる。
完成後はマン島クラシックTT F1、同スーパーバイクレース等にも出走し、’13年/’15年にはマイケル・ダンロップが乗った。単にレプリカに終わらない、新しい発展のベースという意味でも、耳目を集める1台となったのだ。
Detailed Description詳細説明
エンジンは油冷4バルブを積んだが、当初現地イギリスでも「XR69に油冷とは……」的物議も起こったという。チタンコンロッドなどの組み込みやカムプロファイル変更などのチューニングも行われ、出力はGSX-R1100Gの130psから35psアップの165psとなった。
ハンドルはセパレート、左右マスターシリンダーはブレンボ製ラジアルポンプ。燃料タンクはアルミで、オーリンズ製ステアリングダンパーも備える。
白×青のカラーリングは往年のスズキワークスそのもので、テールカウルの造形もGS1000RやWGP500マシンのRGB500、RGΓをなぞる。
溶接ビードも美しいフレームは新作の鋼管フルダブルクレードルタイプ。車両重量は170kg。ちなみにGSX-R1100Gはアルミフレームで乾燥重量197kgだった。
カーボンプレートによるヒートガードで覆われるキャブレターはヨシムラTMR-MJNのデュアルスタックファンネル仕様が装着されている。
ドライブチェーンはDIDの530サイズ。スイングアームは新作し、サス型式は当時のスズキのモノショック、フルフロータータイプと発表されている。
フロントブレーキキャリパーはブレンボ製の対向4Pで、ブレーキラインはステンレスメッシュ+ステンレスバンジョー。ダイマグホイールは前後17インチサイズを履く。