油冷車を長く楽しむために必須のリプレイスパーツを次々とラインナップ中・エムテック

京都のエムテックは、「自分が油冷車が好きだから」という松本代表が主宰する、油冷バイク群のフォローに厚いショップ。鈴鹿8耐などレース・フィールドで得た豊富なノウハウを基に、車検・整備からカスタム&チューニングに当たる一方、油冷車を長く快適に維持し続けるためのリプレイスパーツ開発にも注力する。そんな同店で“油冷車の今”を聞いてみた。

若い頃に憧れた油冷GSX-Rを楽しみ続けてほしい

京都のm-tech(エムテック)を訪問すると、目に飛び込んでくるのはいかにも上質そうな中古車群。まずは油冷GSX-Rの中古車動向を聞いた。

▲自らもGSX-R750RKや100万台記念車のL3Zを所有する、GSX-Rファンの松本圭司代表。「油冷750は乗らなくなって朽ちた個体も多いですが、粉を吹いたアルミフレームは鉄フレームのように綺麗に再生できない。この先も油冷GSX-Rを長く楽しむためには気遣いを」とも。

「最近、特に多くなったなと思うのが、初期型750を探しているお客さま。主に50歳代の方たちですが、お話を聞いて感じるのはやはり750が『若い頃に憧れたバイク』だから。当時は免許制度もあって、ナナハンは遠い存在でした。今は大型二輪免許も比較的簡単に取れて、この先あと何台バイクを持てるか、という中で入手したい人が増えたということでしょうか。特に初期型は油冷のルーツモデルでスポーツイメージも濃い。そこに魅力を感じるのかも。ただ、タマ数は1100に比べて圧倒的に少ない。ウチでもあと数台手配できるかも、という程度」とは同店・松本代表。

▲販売する中古GSX-Rに“ASK”のブライスタグが付くのは、顧客のリクエスト次第で乗り出し価格が変わるから。ディスコンから30年が経った油冷GSX-R、m-techでは車両はあくまでベース車と考える。

参考にm-techでの価格相場は1100なら150万円から。750は200万円を超える。

「これはベース車両に弊社での基本メンテナンス料を加えた価格です。各部チェックはもちろん、劣化したゴムパーツや油冷車の弱点と言われるヘッドカバーガスケットは新品に。ついでにタペットまわりも調整する。タイヤも劣化していたらベーシックなラジアルタイヤに交換……そんな作業も含んでの価格。車両のプライスタグを“ASK”とするのは、お客さまの要望がそれぞれに違うから。ここからは別料金となりますが、せっかくの機会だからと外装を始め、粉を吹いたエンジンやフォークアウターの塗り直しを希望する方もいる。手の掛からない上質車を集めていますが、展示車はあくまでベースです。油冷車はもうそんなバイクになりました。気になる車両があれば、まずは気軽に相談してほしいですね」(同)

▲経年劣化が進んだ純正ハーネス。外観に問題が見られなくても、配線が劣化しているのは当たり前と考えるべきだ。

一方で同店では、純正部品の廃番化に対応してリプレイスパーツの自社開発にも力入れている。

「早急に進めているのがハーネス製品のラインナップの充実です。’89限定車の750RK用は50セット限定で販売中で、今手を付けているのが現役車のタマ数が多い後期型1100(’89年以降車)用で市販化を目指しています。これが完成すれば前期型用もすぐに製品化できる。今後1年ぐらいのスパンで、バッテリーハーネスやヘッドライトまわりのサブハーネスも作っていきます」

「この先、トラブルが増えそうなのは充電系かな。ダイナモやレギュレーター。今ならバンディット系の流用が効きますが、エンジン外観が変わる。純正外観を大事にしたい油冷GSX-Rファンのために、今まさにリビルド作業メニューを考案中なんですよ」

 

油冷に乗り続けるためのリプレイスパーツをゾクゾク開発中!

ETCやドラレコに対応するハーネスはRK用

50本限定販売のGSX-R750RK用メインハーネス(4万6200円)。コードを高品質な細身のものに置換、ETCなど接続のためのカプラーも前後2カ所に増設してあるので利便性も向上。

 

乗るたびに目に入るメータースポンジのリフレッシュで愛着もさらに高まる


“メータースポンジ”も対応車種が増える。写真は750J〜MとRK対応品で9900円。形状は純正品よりメーターを包むツバが長めで、しっかり勘合できる。下写真のように加水分解でボロボロになったスポンジをリフレッシュすれば、メーターの不快ながたつきはもちろん、メーター本体の傷みも抑制できる。


使い続けるうちにツメ部が開いてアクスルシャフトの適正位置が出しにくくなる純正品(下写真)の代替用に開発した“初期型GSX-R用チェーンプラー”も初期型オーナーは注目したい。価格は9680円(L/Rセット)。左右ツメ部を板状に連結して強度を高めた、油冷車を知る同店ならではのアイテム。


上は750RK対応の“フロントフォークメタルセット”(1万1000円)、下は前期油冷GSX-R750(’85〜’87および’86GSX-R750R)に対応の“リアサスリンクベアリングセット”(6050円)。リンクベアリングはほかにGSX-R1100(G〜J)用もラインナップする(4950円)。どれも純正廃番品だが足まわりメンテに必須とリプレイス品を製作。


純正廃番となって維持が危惧された’86GSX-R750R(限定車)用の乾式クラッチキットも、“英国EBC製’86GSX-R750R(限定車)用乾式クラッチキット”がm-techで入手可能(6万6000円・為替次第で価格変更アリ)。乾クラゆえトラブルを恐れ、同車に手を出しそびれていた向きにも朗報となるだろう。


油冷GSX-Rならどの型式にも使えるようにと製作した“SUS製ハンドルバーエンド”は6600円。


目下、課題とするのは前期型のICレギュレーター(ドライバーの先のパーツ)がパンクした場合の対処法。ダイナモごと後期用にコンバートする手もあるが、エンジン外観が変わる(ただしこちらが簡単で安価な手法とも)。他車種流用をベースに、前期型のシェルに収める手法を検討中とか。

 

【協力】m-tech(エムテック) TEL075-932-6677 〒612-8486京都市伏見区羽束師古川町174-3 https://www.mc-m-tech.com/

※本企画はHeritage&Legends 2023年7月号に掲載された記事を再編集したものです。
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WRITER

Heritage&legends編集部

バイクライフを豊かにし、愛車との時間を楽しむため、バイクカスタム&メンテナンスのアイディアや情報を掲載する月刊誌・Heritage&legendsの編集部。編集部員はバイクのカスタムやメンテナンスに長年携わり知識豊富なメンバーが揃う。