油冷GSX-Rエンジン・リフレッシュはこの先も楽しむなら最期のチャンスかも?!・カスタムファクトリー刀鍛冶
純正廃番が続く油冷系オーナーは早めの対応を
刀鍛冶によるTOT参戦用レーサーはエントリー車名こそGSX1100Sだが、エンジンは油冷GSX-R1100後期型と1200系パーツのハイブリッドによる1227cc。フレームはカタナをベースに、ディメンションにはGSX-R1000K5のそれを落とし込むマシン。160ps前後のパワーで、TOTでのベストタイムは’21年SATSUKI-STAGEで記録した、59秒112……。現在最速の油冷車と言っていい。
▲カスタムファクトリー刀鍛冶はTOTのハーキュリーズクラスに参戦し、カタナフレームに油冷エンジンを搭載したマシンを走らせる。
そんな同店には自ずと油冷系GSX-Rが集まってくる。現状を石井光久代表に聞こう。
「おかげさまで油冷GSX-Rのエンジンオーバーホールやチューニングの相談は数多くいただきますが、直近の悩みはメーカーのスズキから出る純正部品の価格高騰、そして相次ぐ廃番です。
筆頭は750/1100ともにカムチェーンのテンショナーガイドが出なくなったこと。廃番直後ということもあるのか、海外製のアフターパーツもない。今、受けているエンジンまわりの仕事では予めお客さんにその旨を伝えて、ガイドの状態が良ければそのまま使うし、無理なら手元にある中古品からましなモノを選ぶ。でも、それにも限界があります。油冷エンジンのチェーンガイドはクランクケースを割らないと交換できない構造で、『良いモノが手に入ったから』と安易に交換も出来ないし、頭の痛いとこです」(石井さん)。
▲カスタムファクトリー刀鍛冶のオーナー石井光久代表。店名からスズキ車オーナーの来訪が多いが、カスタム&レーサー製作のほか、車種問わずのワンオフパーツ製作にも対応する。
「対策としては後継1200のサイレントチェーンを使う手もありますが、クランクも1200系にする必要がある。いっそ、1200に積み替えてしまえば? とも思うけれど、GSX-R1100は後期型油冷で143ps、1200系は最終型でやっと100ps。『やっぱり1100でなければ』とお客さんがこだわるのも無理はない。
でも、そんな1200系だって、いつまで純正部品が出るか分かりません。脅かすつもりもありませんが、エンジンを見直すなら早い方がいいと思いますよ。去年なら普通に受けたエンジン作業も今はできないと断ることが、ウチでは実際に起きていますから。
▲カスタムファクトリー刀鍛冶の店舗は大阪・富田林市内、国道202号と309号交差点そば。
ウチも漫然と座して……というわけにはいきませんから、まずは頻繁に使うガスケットをメタルに変えて作ることを考えています。こちらはまだ入手できますが、いかんせん価格が高くて。販売をお休みしているオリジナルの6速クロスミッションキットも、10人もお客さんが集まれば、以前と同じぐらいの価格で出せるんじゃないかな。
あと、もし純正バルブが出なくなれば、対応品を作る準備もできていますし、ウチのレーサー用をベースにしたオイルバイパスラインキットも作って、油冷エンジンのコンディション維持に使ってもらいたいんです」(同)。
いずれにせよ、次の廃番パーツが何かはいちショップでは分からないから、戦々恐々というのが正直なところ、とも語ってくれた。専門ショップですら、すでに切迫した領域に入ってしまった油冷1100系エンジン。手を打つならやはり早めが良さそうだ。
刀鍛冶では油冷機ファンのために生み出したオリジナルパーツをラインナップ!
同店のカスタムで真っ先に浮かぶのがGS1000Rタイプボディキット。こちらは同じ油冷機のGS1200SS対応品だ。FRPとカーボンの両素材から選べ、価格は35万2000〜49万5000円。
本文で石井代表が言及していた6速クロスミッションキット。’89-’92GSX-R1100用として製作したが’86-’88の1100や油冷系1200にも対応可能。価格は要相談。
刀鍛冶監修のTSSスリッパークラッチキットは’90〜GSX-R1100、油冷1200に対応する。レースパーツだがエンジンや駆動伝達系を保護にも有効なアイテムだ。価格は12万6500円。
公道やレースなどでの万一の転倒時にエンジンをガードするスライダー。400/1100/1200の油冷車に使える。2万2000円。
高性能オイルキャッチタンクも400/1100/1200の油冷系エンジン全般に使える。3万800円(アルマイト無)〜3万3000円(セラコート黒)。レースはもちろん、直キャブカスタムの必需品だ。
【協力】カスタムファクトリー刀鍛冶 TEL0721-55-2614 〒584-0085大阪府富田林市新家1-2-18 http://www.katanakaji.com/
※本企画はHeritage&Legends 2022年10月号に掲載された記事を再編集したものです。
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