パーツ総合メーカー・アクティブのデモバイクに見るZ900RSカスタムのヒント!
まず見せたのはスポーツネイキッドの王道カスタム
──’17年末のZ900RSデビューを受けて、アクティブが翌’18年の東京モーターサイクルショーに展示したのが最初の車両。まずは当時の様子を聞いてみよう。
▲企画広報部の松田弘樹さん(写真右)と開発部の福田哲史さん(左)。「Z900RSがZ1やGPZ900Rで謳われたマジック9の思想を継承したと聞いて、いいトコ突くなあと思った」と松田さん。福田さんも若い頃からのカスタムフリークなのだ。
松田:Z900RSが売れるかの判断はできませんでしたが、やはり注目モデル。弊社はマフラーもホイールもサスも、そして小さなパーツまで揃えていて、トータルでカスタムを提案できるのが強みです。’19年仕様ではまず、そんな長所を最大限に活かした王道カスタムを提案してみたんですよ。
福田:Z900RSはスポーツネイキッド。やはりワインディングを楽しめるバイクにしたい。ハイパープロ製品を使っての前後サスのセットアップはもちろん、シート座面を20㎜上げてみたり、乗りながらいろいろ試した時期でした。
松田:当時よく売れたのは、『φ28・6アルミテーパーハンドル・スーパーロータイプ』とオリジナル『ビキニカウル』。後者はCafeの発売前だったこともあるでしょう。あとは弊社定番のフェンダーレスキット。これは今も絶好調で、他車種用に比べZ900RSはダントツの売れ行きです。
2019 DEMO.MODEL
カスタムのスタートはラインナップパーツを駆使してのストリートスポーツとしてのブラッシュアップ!
▲ビキニカウルやサブフレームなど開発中だった、2018年東京MCショー直後の状態。フロントにハイパープロ製スプリング、リヤショックも同ブランド。EXはアクラポヴィッチのS/Oチタン。ホイールはゲイルスピードTYPE-NでSTDと同寸。前後で約2Kgの軽量化を達成した。ブレーキまわりはフロントマスターにゲイルスピード・エラボレートVRE、リヤキャリパーもフル3D切削の同エラボレート・ラジアル。本文通りスーパーローハンドルも人気だったという、スポーツカスタムの王道仕様だ。
福田:そんな初代仕様に、ステアリングステムやスイングアームといった大物パーツを導入したのが’20年仕様です。印象に残るのはステアリングステムの初期試作の剛性が高すぎて困ったこと。気持ちよく曲がるバイクにしたくて、アンダーブラケットの剛性を落とそうと、走ってはリューターで削ったりステムボルトの締め付けトルクを変えてみたり。それにバランスさせるためにサスのセッティングやスイングアームの仕様も、色々と検討しました。ステムやスイングアームは市販に漕ぎ着けましたが、苦労も多かったんですよ。
松田:この車両にあえてSWモテックを提案したのは、カワサキのビッグバイクユーザーって長距離を走る人が多いじゃないですか。でも、Z900RSに大げさなキャリアやサイドバッグのステーは似合わない。SWモテックはバイクは何も付けない〝素〟の姿がカッコイイって自ら言い、バッグを外した車体側ブラケットも目立たない工夫をしている。これなら受け入れてもらえるのでは、と考えたんです。
2020 DEMO.MODEL
足まわりに大物パーツを導入してスポーツ路線をさらに強化する一方、使い方に合わせた提案も!
▲プレスフォーミング・スイングアーム、そしてフォークオフセットを34㎜(純正値)/31.5㎜から選べるコンバーチブルステムキットなど新作投入でスポーツ性を高めた'20年仕様。POM樹脂+アルミブロックハイブリッドのエンジンカバースライダーやゲイルスピード・エラボレートフットコントロールキットも装着。ホイールはゲイルスピードTYPE-E(3.50-17 /5.50-17)だ。SWモテックのトップ/サイドケース装着は長距離派に向けツーリングコンフォートを意識して提案したものだった。
ヘビーカスタム派を満足させるパーツも続々
──進化が続くアクティブ。左ページの’23年仕様はそれまでの純正継承のネオクラシック路線から、’80年代カワサキワークスカラーを纏うなどで往時感を意識して見える。その狙いは?
松田:’20年仕様まではスポーツを意識する故に’90年代レプリカ寄りのパーツを装着してきました。例えばプレスフォーミング・スイングアームはまさに最新SSのそれ。カスタム感が強く出ることに支持もいただきましたが、一方でもう少しオールドネイキッド的なカスタムパーツもほしいという声も聞きました。オーナーの方の多くが40〜50歳代で、’90年代のカスタムブーム時のようなパーツに興味を持たれる方も多いように感じる。それなら、と開発を始めたのが口の字断面スイングアームであり、ゲイルスピードのタイプJです。
福田:’23年仕様を東京MCショーに展示して、食い入るようにご覧いただいたのはまさに40~50歳代の方々。お話を伺いご自身のZ900RSの写真をスマホで見せていただくと、ゴリゴリにカスタムしてる(笑)。逆に若い方たちのZ900RSは’19年仕様に近いライトカスタム。ユーザーが二極化しているのを肌で感じました。
2023 DEMO.MODEL
80’sカワサキワークスカラーを纏わせて前作までのレプリカ寄りからストリートカスタムへの原点回帰
▲'23年仕様ではストリートカスタムの表現として、80'sカワサキワークスカラーを採用(#7の'82KR500はカワサキワールド収蔵車)。口の字断面パイプは95×36㎜で後端のエンドピースは中空3D切削によるもの。往年のホイールデザインの要素を採り入れた、ゲイルスピードTYPE-Jのサイズは3.50-17/6.00-17。前後でZ900RS純正比2.47㎏の軽量化を達成した。ともに今秋発売予定。なお、ZEPHYR1100、ZRX1200DAEG用口の字断面スイングアームも'24年発売を目標に現在開発中だ。
福田:口の字断面スイングアームはプレスフォーミングに対し、決して性能が劣るわけではありません。スイングアーム・メイン部の直線を長く取り(※編注:直線部を長く取ることで旋回性を上げているという)〝気持ちよく曲がる〟というテーマを実現しています。弊社テクニカルアドバイザーの光島(光島 稔さん。元TSRのチーフデザイナー。GPシーンなどで活躍)と相談しながら、Z900RSのキャラクターに最適化したしなりとなる剛性を得るために採用したのが、目の字や日の字ではなく口の字断面素材だったのです。
福田:一方のゲイルスピード・タイプJは’80年代カワサキの純正ホイールや当時のレーシングホイールを意識しています。でもアルミ鍛造+切削加工で仕上げているなど、投下した技術は最新です。
──’23年仕様で話題となった口の字断面スイングアームやゲイルスピード・タイプJは発売まで秒読みだ。そのリリースが待ち遠しい。
■Z900RS向け注目パーツ1.
絶妙な剛性を得るために何度も試作を繰り返し完成した『コンバーチブルステムキット』
本文中で福田さんが開発の苦労を語った、オフセット可変式のステアリングステムキット。“気持ちよく曲がる”ための最適剛性を得るため、指し示す通りアンダーブラケットはステムシャフト側が薄くフォーククランプに向けてテーパー形状を採る。付属のセパハンはタンクへの当たりを回避する高さで手前にも引ける。ほかにトップブリッジ+セパハンの“セパレートハンドルキット”も用意。純正ハンドルが遠く感じる人にお勧めだ。
Z900RS向け注目パーツ2.
人気ド定番パーツ『サブフレームキット』も機能とカッコ良さをアップデイト
’20年仕様までは’90年代カスタムの定番だったアクティブ製を継承したデザインを採ったサブフレームだが、この’23年からはTYPE-2にアップデイト。高強度化のためにサイズを見直しリブを追加したパイプ形状による機能性と、バフ掛けされた美しい表面によるドレスアップ性を両立。“押し出しの強さ”はやはりストリートカスタムの必須条件、と松田さん。
Z900RS向け注目パーツ3.
ロングライドを楽しむなら『パフォーマンスダンパー』にも注目したい!
ヤマハのパフォーマンスダンパーは車体の共振を抑えて乗り心地とハンドリングを向上するアイテムで、ヤマハ車以外向けをアクティブがステーを開発、セット販売する。Z900RS向けは最初に設定した車種のひとつ。Z900RSユーザーに認められれば“本物”になる、という視点もあった。その甲斐あって引き合いも多く、「ロングツーリング時の手先の痺れに効く」と好評という。
【協力】アクティブ TEL0561-72-7011 〒470-0117愛知県日進市藤塚七丁目55番 http://www.acv.co.jp/
※本企画はHeritage&Legends 2023年9月号に掲載された記事を再編集したものです。
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