細かな部分にもぜひ注目したい内容が多数という車両
Z1-R由来の角型ボディ。その燃料タンク容量を13から20リットルに増量し、Z1000Mk.Ⅱの19/18インチの車体&エンジンに組み合わせたZ1R-Ⅱ。それを前後17インチのコンプリートカスタム、RCMとして仕立てたのがこの車両だ。手がけたのは滋賀県にあるサンクチュアリーKOUGA。車両のポイントを同店代表の立入さんに聞いてみた。
「オーナーさんは雑誌を見て“RCMがほしい”と連絡をくださって、その時たまたまベース車がショップにあったので、それを元に進めました。17インチ仕様にするに当たって必要な内容はきちんと織り込んでますけど、特殊なことはないですよ」
φ43mmフロントフォークとZの17インチに適したスイングアーム長というスイングアームはXJR1300流用、エンジンは完成後にきちんと走れるようにフルリビルド、フレームもリヤサスレイダウン用加工などを行っているとのこと。その中にもフロントフォークの内部改修やエンジンへのサンクチュアリーKOUGA・Evoシステム(スプロケットシャフト支持位置を増やしてシャフト〜ミッションにかかる負担を軽減するとともに、オフセットタイプでない通常のスプロケットが使える)を組むなど、純正流用なども活用し、トータルのコストを抑えつつも、長く快適に乗るための要素は十分に入っている。
さらに注目したいのは、KOUGA独自と言える細部の作り込みだ。メーターは純正ハウジングのまま電流計をデジタル化。かしめ式で一般には非分解のメーターリングも、自店で治具も製作したというリングキット(Z系やゼファー750、Z400FX用あり)で他のパートと同様にリフレッシュ。
スイングアーム左上に付くチェーンスライダーも、一般的な樹脂板では使用にともなって削れた部分の樹脂がチェーンプレートの軌道上に尖って固まり、チェーンプレート間=シールリングが入る部分を攻撃してシールが破損してしまうため、市販車同様の凸型レールをあらかじめ作った。この中央部(凸部)上をチェーンのローラーが転がるようにすることで、問題を解決した。スイングアーム下側のローラーも位置可変式にするなど、参考になる部分はじつに多数だ。
「理にかなったバイクを極力シンプルに作りたいんです」という立入さんのテーマ。この車両はそのテーマを反映した1台でもあった。
Detailed Description詳細説明
特徴的な角型のビキニカウルや20リットル容量の燃料タンクほか外装はZ1R-Ⅱ純正。左右マスターはニッシン・ラジアルポンプを使う。
ステアリングステムは17インチ/φ43mm適合のスカルプチャー・ブランドでメーターは純正をベースにリフレッシュ。右上の電流計は裏面を加工した上でデジタル表示化し、速度計.エンジン回転計のメーターリングは純正ではめっき仕上げだが、ここではKOUGAオリジナルのシートリング(黒仕上げ)を自店でかしめて、コクピット部の統一感も高める。
マフラーはKERKERスチール4-1集合。再生を行った上で、テール部の角度を上げるようにサイレンサー部を再溶接して仕上げている。
エンジンはφ70×66mm(1015cc)の純正から0.5mmオーバーサイズのピストンを使ってフルリビルド(1030cc)し、長く乗れる仕様に。ミッションも純正だがサンクチュアリーKOUGAオリジナルの「Evoシステム」を組む。ロングアウトプットシャフトとその支持用ベアリングを加えていれ、駆動系の負担を軽減すると同時にスプロケットも通常タイプが使えるようなパーツ。こうしたアイテムにも注目したい。
キャブレターはTMR-MJNφ38mmをショートファンネル仕様でフィッティング。写真中央に見えるのはオイルクーラーのラインだ。
フロントフォークはφ[純正値:36→]43mmのXJR1300純正で、内部設定を変更しボトムケースもブラック仕上げした。フォークシールはSKF製を使う。フロントブレーキはブレンボAxial 4Pキャリパーのアナダイズドチタン仕様にサンスター・ワークスエキスパンドディスク。
リヤブレーキはブレンボCNC 2Pキャリパーのアナダイズドチタン仕様をアクティブ製サポートでマウントし、サンスター・ワークスエキスパンドディスクを組み合わせる。
スイングアームはXJR1300でリヤショックはナイトロン・ツインをレイダウンマウント。元のアッパーマウント部はボスを追加して荷掛けフックとして活用している。スイングアーム前側のチェーン下に見えるプレートがコウガオリジナルのスライダーで、下側のローラーも位置調整式になっている。ホイールはアルミ鍛造のゲイルスピードTYPE-Rで3.50-17/5.50-17サイズを履く。