【SPECIAL MACHINE IMPRESSION】
K-FACTORY ZRX1200DAEG
スーパーチャージドで全域トルク増しはボアストロークともに拡大した感覚だ!

バイク+スーパーチャージャーはゲテモノなのか!? 恐る恐る乗り始めた二輪ジャーナリストの丸山 浩。しかし走り始めた瞬間から、その思いは飛んだという。カワサキ純正スーパーチャージャーのように従順に、そしてパワフルに、現行モデルと肩を並べるマシンへと進化させていたのだ。特有の吸排気音を奏でながら過給器チューンドマシンを楽しませる、ケイファクトリーDAEGを丸山氏がたっぷりと試乗、そのレポートをお届けする。

車格はそのままに排気量を上げたような自然さがいい

「よく調教したな!」

今回、ケイファクトリーのスーパーチャージドZRX1200DAEGに乗って、私・丸山 浩はそう思った。

排気量以上のパワーが得られる過給とバイクの組み合わせは魅力大だが、とても難しい。1980年代前半、車両メーカーがターボエンジンをどうにかモノにしようとトライしていた。’81年のホンダCX500ターボとスズキXN85を皮切りに、’82年にはヤマハXJ650T、’84年にはカワサキ750ターボ……。国産4社ともターボ車を生産したが、当時の技術では暴れん坊な出力特性をなだめきれず、高出力に耐えるために車重が重くなって、狙いからは少し外れるなどデメリットが多く、その後存続はできなかった。

だが、過給器付きバイクには夢がある。カワサキが2015年にスーパーチャージドエンジン搭載のニンジャH2を発売した時は、バイク界は大いに盛り上がったものだ。

このように車両メーカーが本腰を入れて過給エンジンを採用してきた今、アフターマーケットメーカーには何ができるか?  ケイファクトリーのスーパーチャージドDAEGは、その回答だろう。

最高出力は、圧巻の170ps! ノーマルより軽く60psも高まっている。54%ものパワーアップを果たしているわけだが、聞くと200psまではテストしたそうだ。

耐久性などの問題でテストに留めたそうだが、100psアップとは凄まじい……。改めて過給器の可能性を感じさせられる。

だが、乗り味は至って“普通”。もちろん170psになったなりのパワー感はみなぎっており、3速まではフロントがポンポンと浮く。しかもレッドゾーン付近の高回転域も含め、全域でモリモリとパワーが出ているので、とても楽しい。

それでも扱いにくさはまったくない。パワーアップしても低回転域のトルクは損なわれていないので、さほど回転数を上げなくてもしっかりと加速する。街乗りやワインディングロードなど、繊細なスロットルワークを駆使する場面でも違和感なく走れるのだ。

トルクの谷や、急なドカンとしたツキがないので、コーナーの立ち上がりでも過給を意識せずにスロットルを開けられる。

ノーマルDAEGエンジンのどこかの領域を突出させたと言うより全域でパワーが高められているから、「ZRX1600DAEG」に乗っているような印象だ。素直に排気量が上乗せされたかのようなフィーリングは、アフターメーカーの作品と言うより、メーカー量産車の完成度に近い仕上がりの良さである。

これは、排気圧の高まりに応じて加速度を増すターボに比べて、エンジン回転数に比例してパワーが上がっていくスーパーチャージャーの大きなメリットだ。バイクは特にスロットルワークにシビアなので、ケイファクトリーのスーパーチャージャーという選択は大正解と言える。

一方でちょっと上品過ぎるかな、と思うところすらある。過給の醍醐味とも言える排圧を逃がす音は、カワサキ・ニンジャH2の方が派手目に演出している。スーパーチャージドDAEGはかなりおとなし目で、低回転域ではバシュッという音がさらに抑えられている。

唯一惜しいのは、車体右側に突き出したプーリー類だ。ヒザの当たりが痛いので、ニーグリップがほとんどできない……。カスタム感がアピールできる部分ではあるけれど、スポーツライディングを好む私としては気になるポイントだった。

それにしても、「よく調教したな!」と改めて思う。スーパーチャージャーを付けるだけならともかく、それをここまで違和感なく、そして扱いやすく仕立てるのは並大抵のことではない。セットアップに2年をかけたと言うが、この仕上がりの良さはアフターメーカーの域を超えた努力の賜物だろう。


K-FACTORY ZRX1200DAEG


ケイファクトリーのZRX1200DAEGの車体に、今回の試乗の軸となったスーパーチャージャーKIT装着とセッティングをMSセーリングが担当。2年の歳月をかけて、従順に扱えるスーパーチャージドDAEGを完成させていた。


カーボンモノコックボディを持つマジカルレーシングのNK-1ミラーは歪みのない透明度の高い視野を確保。車体色に合うスーパーコートのスクリーンも同社製だ。


ステアリングまわりはケイファクトリー製レバーガードや細身のリザーブタンクステーなどでセンスよくまとめられる。


マジカルレーシング製カーボンハンドルバーの高さはノーマルからは大きくは変えられていない。


ケイファクトリー製フェンダーレスキットは、ちょっと悪っぽさを表現。


専用ラジエーターの下には、主にタービンローターの冷却を行う追加オイルクーラーを装着する。


エンジン右サイドは、クランク回転軸から駆動力を取り出し、外側に張り出したベルトによってスーパーチャージャーのタービンを回転させて過給するキットを装着している。このローターギヤの比率で過給圧を調整出来る。200ps仕様まで上げてテストもされたが、街乗りを含む現時点では170ps仕様に落ち着いている。エンジン前に見えるアルミタンクはオイルクーラー用キャッチタンク。過給に対する燃料補正はRAPID-BIKE EVOで行う。


エンジン左側に張り出しているのはK&N製エアフィルター。本来のエアクリーナーBOX容量が取れないために、極太ワンオフパイピングによってここから吸気する。


フロントフォーク/リヤショックはオーリンズを装着する。


ホイールはマジカルレーシングが扱うBST製カーボンホイールのうち5本傾斜スポークのブラックダイヤモンドで3.50-17/6.00-17サイズ。


ケイファクトリー製マフラー+エンジン左右の過給用補機類が、ただ者ではない感覚を演出する。


タンク、シートはノーマルだが、このような足まわりの強化とケイファクトリー製バックステップによって強烈なパワーをしっかり受け止めてくれ、ワインディングでも前後輪の接地感が強く、安心してライディング出来るように仕上げられていた。

【協力】
・ケイファクトリー TEL072-924-3967 〒581-0815大阪府八尾市宮町5-7-3 https://www.k-factory.com
・MSセーリング TEL047-379-6034 〒272-0023千葉県市川市南八幡2-22-2 https://www.ms-sailing.com

※本企画はHeritage&Legends 2021年4月号に掲載された記事を再編集したものです。
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WRITER

Heritage&legends編集部

バイクライフを豊かにし、愛車との時間を楽しむため、バイクカスタム&メンテナンスのアイディアや情報を掲載する月刊誌・Heritage&legendsの編集部。編集部員はバイクのカスタムやメンテナンスに長年携わり知識豊富なメンバーが揃う。