アップデートできる箇所は現代流に作る
「このカタナは、あえて今、’90年代のカスタムブームの頃の雰囲気を出してみようって手を入れていったものなんですよ」
こう、レッドモーター・中村さんが言うGSX1100S。中村さん自身、当時はヤマハRZ250のカンチレバー式リヤサスをリンク式にコンバートするカスタムで大いに注目されブームの中心に近い位置にいたから、当時の雰囲気を割とストレートに解釈して臨んだようだ。ブレンボ・アキシャルキャリパーにゴールドカラーのインナーを持つホールタイプディスク。そして何より、あの頃の車両を象徴するようなアルミの合わせホイールがその雰囲気を強調してくれる。このPM=パフォーマンスマシン製“シケイン”ホイールは当時よく“ミッチェルホイール”と呼ばれていたから、ああそうだ、と思う人も多いはずだ。
「エンジンはカタナの定番で1135cc化してあって、ポートも加工してハイカム化もしていますから、速さもあると思います。そんな中にも、当時そのままでなくて今作ったバイク感を持たせたいなと、塗装も凝りました」
よく見てみると、燃料タンクにはヘアラインが入っていて、それはフロントカウルやサイドカバーにも施されている。カタナネームから来るメタル感を塗装で表現しているのだが、シャープ感があって、参考にしたくなる部分。
「全体的には元のオーナーさんの趣味を反映した感じですね。元というのは、車両の大筋ができてからこのカタナを現オーナーさんに譲ったから。と言っても現オーナーは元オーナーの弟さんなんですけどね」(笑)という中村さん。
どちらもレッドモーター&中村さんとの付き合いは長いし、中村さんが仕様をしっかり把握しているから、今後変更したいとなっても対処しやすいメリットもある。
「ふたりともドラッグレースの楽しみもよく知っている方ですし、もしそっちに使おうとなっても、カタナなら(GSX1150)EFのプロストックバイク用ヘッドを使えばもっと速くなりますよ」
GSX1150EF自体がカタナ系4バルブの進化型で1135cc。しかも使い方やメンテナンスも、ドラッグレースの国内第一人者的存在のレッドモーターなら心配なし。そう言えば冒頭のブーム、’90年代の終盤(1998年)には中村さんは後に7度取るうちの最初の全日本選手権ドラッグレース・プロストックバイククラスのタイトルを獲得した。そんな一面も、思い出されてくれた。
Detailed Description詳細説明
フロントウインカーはブーム当時の定番的な貼り付け式に変更。ミラーはノーマルで、カウルはノーマルにヘアライン塗装を施している。
ワンボディのメーターやセパレートのハンドル、50mmオフセットのステムなどはノーマル。ハイスロ装着に合わせてスイッチ類は変更。
燃料タンクなどの外装はシルバーで塗装した上でヘアラインを入れてクリアで仕上げる凝ったもので、カタナらしい金属感を表現した。
シートはツートーンからブラックモノトーンに表皮を変更、内部も新調した。メタル調仕上げの外装=刃と柄という対比にも見える。
ファンネル&ネット仕様でFCRφ37mmキャブレターをフィッティング。奥に見えるイエローのプラグコードもカスタムブーム感がある。
エンジンは[1074→]1135ccへのスープアップやハイカムの組み込み、ポート加工などを行う。レッドモーター・中村さんはカタナ・クランクケースのプロストックバイクエンジン(2バルブ/4バルブとも)も長く扱っていて、この系列エンジンのノウハウも豊富に持つ。
φ37mmフロントフォークはカタナのノーマル。フロントブレーキキャリパーはブレンボ・キャストでディスクも変更し大径化している。
上置きキャリパーのリヤブレーキやアルミ角型のスイングアームはカタナノーマル。マフラーはヨシムラ・キャタライズドサイクロンだ。
リヤショックはクアンタムでドライブチェーンはEK530ZVX。前後ホイールはパフォーマンスマシン(Performance Machine)製シケイン(Chicane)。リムとスポークを一体成形したアルミ製左右ピースを合わせたスパン(spun)ホイールで、ブーム当時絶大な人気だった。