あからさまにダメではないけれど、以前からコシのなさが気になっていた、ヤマハTZR250のシート。この問題を解決したら、車体のフィーリングがもっと鮮明になるのではないだろうか? そう感じた僕は、東京・墨田区のサゴウ工芸を訪れ、シート改善に着手することにしたのだ。写真右の杉井さんはウレタンの加工とレザーの張り込み、左の下山田さんはレザーの製作を担当。おふたりの作業はものすごく迅速で、今回も作業に要したのは2時間半だった。
バイクで最も重要なパーツは?という問いに対する答えは各人各様にして状況次第だが、今の僕は、「やっぱりシートは重要だなあ」と、しみじみ感じている。
そもそもの話をするなら、ヤマハTZR250のシートはウレタンがすっかり衰えていたのだ。もちろん、今から30年以上前のパーツだからそれは当然のことだけれど、体重移動や加速時に伝わってくるグニャッとした感触が、以前からどうにも気になっていた。
というわけで、今回はシートの改善を行うべく、サゴウ工芸を訪れたレポートを。作業の詳細はこり後展開する写真と解説を見ていただくとして、改善したシートと共にツクバサーキットに出かけてみると……。
うーむ。どうしてもっと早く、この作業を行わなかったのだろう。カチッとした硬さと滑りづらい表皮を得たシートによって、僕のTZRは明らかに車体のフィーリングが向上した。具体的には、すべての操作に対する反応がダイレクトになり、今までよりリヤのトラクションが明確になったのである。
そしてそのフィーリングに気を良くして走っていたら、自己ベストに近い1分7秒台を何度かマーク。もちろんこのタイムは、サゴウ工芸で改善したシートだけではなく、前回紹介したPEOのゼロポイントシャフトとの相乗効果だろう。いずれにしても、この好調を維持したまま、2018年5月19日のTOT本番を迎えたいものである。
作業に入る前に、杉井さんは現状をじっくり確認。前部の座面を削って、表皮の上に薄いウレタンを貼った現状を見た杉井さんの感想は「これじゃ、乗り味が悪くて当然ですよ」だった……。
劣化が進んだノーマルのウレタンをベースから剥がした後は、硬度が高いチップ材を接着剤で貼り付け、以後はウレタンカッター/サンダーを用いて、理想の形に近づけていく。おおむねカタチが整ったところで、車両に装着して感触を確認、さらに修正を重ねていくことになる。
ウレタン形状が決まったら、次はレザーに取りかかかる。新聞紙で簡易的な型紙を作った下山田さんは、その型紙に合わせてハサミでレザーを切り出し、ミシンを使って瞬く間に縫製を完了してしまった。
完成後のシート。この写真だと、座面がやや前上がりに見えるものの、乗車中の印象はフラットで、前後左右に動きやすい。表皮は近年のサゴウ工芸で人気の高い、ノンスリップタイプをチョイスした。この表皮のおかげで、旋回中の安定感が増した気がする。